「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

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第二章 騎士学園編

094「決勝トーナメント一回戦(4)」

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「どんどん行くぞ、ザック・カーマイン! 土属性初級魔法『砂塵ダスト』!」

 ザザァァァァァ!!!!

「くっ!?」

 ザックは一瞬避けようと考えた。しかし、それは避けることを想定して攻撃を仕掛けてくるというウキョウのであると判断したザックはそのまま『砂塵ダスト』を逃げずに正面から受けた。

「なんだ、逃げないのか? さすがだな」

 ザックは『砂塵ダスト』をまともに浴びたおかげで、ほとんど視界が塞がれていた。

「⋯⋯フン、それくらいわかるさ。このくらいの目眩し、問題ない。しかし、こんなこすいマネをするなんてちょっと失望したよ」

 ザックはウキョウの声がする方向で位置を特定しようと積極的に話しかける。

「フッ、逆さ。ザック⋯⋯君の下級貴族にしては豊富な魔力量で跳ね上がったこの身体強化ビルドを、ここまで見事に制御し扱っていることに対してのね」
「そりゃ、どうも」
「それにしても、さっきとは打って変わって積極的に俺に話しかけるね、ザック君? もしかして、僕の位置を声で特定しようとしているのかな?」
「⋯⋯まあ、そんなところだ」
「はっはっは! いやー素直だね、ザック君。でも、そんなのは⋯⋯⋯⋯関係ないよ?」

 ゴッ!

「が⋯⋯は⋯⋯っ!?」

 突然、背後からザックの背中に強烈な拳が入り、その影響でザックは一時的な呼吸困難に陥り、倒れそうになるが、

 ガンっ!

「ぐは⋯⋯っ!?」

 ウキョウはザックをすぐに地面に倒させないよう、顎に蹴りを放ち顔を上げさせると、

「龍拳・二位階『子龍四爪撃しりゅうよんそうげき』っ!」

 ゴッ! ガッ! ドゴッ! ガッ!

 顔や鳩尾みぞおちといった急所へ正確に拳や肘で凄まじい威力の四連撃を浴びせた。

 そして、その四連撃の凄まじい威力から発せられた風圧が、ザックを覆っていた『砂塵ダスト』を上へと勢いよく巻き上げ、視界がクリアになる。そして、

⋯⋯ドシャ。

 視界が開いた舞台に、白目を剥いて倒れるザックの姿があった。

「勝負あり! 勝者、ウキョウ・ヤガミ選手!」
「「「「「ワァァァァァ!!!!!!」」」」」

 ザックに急いで治癒班のスタッフが駆け込み、治癒魔法を施す。そして、気絶していたザックがゆっくりと立ち上がった。

「まいったよ。あんた強いな⋯⋯」
「へっ! そりゃこっちのセリフだぜ! 本来なら最初の右拳の初撃で勝負を決めるつもりだったんだからな、こっちは!」
「けっ! 何言ってやがる!」
「いやいやいや! こう見えて、俺はヤマト皇国地元じゃ結構強いんだぞ? ていうか、王太子であるリュウメイの護衛なんだぞ?」
「あ⋯⋯そ、そうか。それじゃあ、本当にあの初撃は倒すつもりで⋯⋯」
「当たり前だ。だが、それに対してお前はあれを躱すどころか、その勢いを利用して裏拳出してくるなんてビックリしたわ! ザック、お前体術凄いな!」
「え!? あ、ありがとう⋯⋯」
「はっはっは! いやー、同い年でここまで俺が本気を出す相手がいるなんて、やっぱ世界は広えーなー! 楽しかったぜ、ザック! ありがとう!」

 そう言って、ウキョウが右手を出してきた。

「⋯⋯完敗だよ、ウキョウ・ヤガミ」

 ガシッ!

 二人が舞台で力強く握手を交わすと、観客からも大きな拍手が送られた。

——こうして、ザックは初戦敗退し、ウキョウ・ヤガミが準々決勝へと進んだ。


********************


「さて、では続いて第三試合を行います!」
「「「「「ワァァァ!!!!!!」」」」」

 先ほどの試合の興奮が冷めやらぬ中、すぐに第三試合のアナウンスが響く。

 ザ⋯⋯!

 ザ⋯⋯!

 司会のフェリシアの指示よりも早く、二人・・が舞台の開始位置へと立つ。

「さあ、続いて第三試合は注目の一戦っ! 一回生実力ナンバーワン! 優勝候補筆頭! そして、ジャガー財閥の血統者⋯⋯⋯⋯ガス・ジャガー選手!」
「「「「「ワァァァァァァァァーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」

 観客から大歓声が上がる中、ガスはゆっくりと拳を突き上げる。

「対するは! 類稀なる武闘術センスに、豊富な魔力量を身体強化ビルドに全振りし、武闘術にさらなる磨きをかけ相手を圧倒する天才武闘少女⋯⋯⋯⋯クラリオン王国第二王女、レイア・クラリオン選手!」
「「「「「グワァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」

 グラグラグラ⋯⋯。

 先ほどのガスへの大歓声のさらに上をいく異様な超歓声が会場全体を揺らした。

「ガス⋯⋯久方ぶりだな。二年振りか?」

 レイアがガスに声をかける。

「ああ、そうだな。⋯⋯あんたには早く借り・・を返したかったんだ。こんなに早く、しかもこんな形で相まみえることができてよかったよ」
「ほう? 覚えているのか?」
「当たり前だ。あれだけ何もできず・・・・・に負けたんだからな」
「二年前、あれだけ何もできず負けたにも関わらず、よくも、そんな生意気な口・・・・・が叩けるもんだな。もしかして、あの時より強くなったとでも言うのか? それとも⋯⋯⋯⋯よほどのバカか?」
「へっ! それは自分で確かめてみな、姫様!」
「ああ、そのつもりだ」
「それでは、第三試合⋯⋯⋯⋯はじめぇぇぇーーーー!!!!」

 ゴーーーーン!
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