「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

mitsuzoエンターテインメンツ

文字の大きさ
99 / 145
第二章 騎士学園編

099「決勝トーナメント一回戦(9)」

しおりを挟む


「⋯⋯闇属性初級魔法『隠密コバート』!」

 モクモクモクモク⋯⋯。

 舞台では、サラがドレイクの隙をついて正面に立ったところで『隠密コバート』を展開。サラの体から『黒い霧』が広がっていき、サラを隠していく。サラの必勝パターンに入った。

 ちなみに、この『隠密コバート』はサラの姿が完全に隠れているように見えるのは対戦相手のドレイクだけであり、黒い霧が晴れれば観客からはサラの姿は視認できる。

「あの子に『隠密コバート』が発動させたら、もう⋯⋯」
「うん、そうだね」

 俺やレコ含め、誰もがサラの闇属性魔法『隠密コバート』を展開した時点で、サラの姿を捉えきれなくなったドレイクの負けが確定したと思っていた。

「これで終わり⋯⋯にゃ!」

 サラがドレイクの背後から近づき、両手で握り締めた拳を後頭部目がけて振り下ろす。一撃でドレイクを失神させるつもりで放った強烈な一撃。しかし、その攻撃が⋯⋯⋯⋯ドレイクに届くことはなかった。

 ガシッ!

「にゃっ!?」

 なんと、ドレイクはまるで見えている・・・・・・・・かのようにサラの一撃を完全に止めた。そして、

「これで決まりだ! 破拳・一ノ型『直烈破ちょくれつは』っ!!!!」

 ドゴッ!!!!

「か⋯⋯は⋯⋯っ!? な、なぜ⋯⋯どうやって、私の攻撃を躱し⋯⋯た⋯⋯」

 サラもまた、ドレイクが躱すとは全く思っていなかった為、無防備な状態でドレイクの『破拳』をまともに食らい、そのまま膝から崩れ、倒れた。

「ワーン、ツー⋯⋯」

 レフリーがカウントを取る中、ドレイクが口を開く。

「嘘っ!? ドレイク君は見えていたっていうの?!」

 レコが驚きの声を上げる。それは他の皆も同じだった。

「おそらく、予測⋯⋯ドレイクの奴はある程度、攻撃を予測しつつ、さらに相手の気配や動きに集中してただけじゃないかな?」
「予測⋯⋯」
「うん。でも、かなりリスクはあったと思うけどね」

 そう。ドレイクは決してサラの『隠密コバート』が見えていたわけではなく、動きと気配に集中させつつ、攻撃が入る箇所を予測して防いだだけだった。

「でも⋯⋯」
「ん?」
「これでサラが立ち上がるようなら『隠密コバート』はもっと慎重な使い方をするかと思う。そうなると、ドレイクはかなり不利だろうね」

 実際、ドレイクはこの攻撃を必殺のつもりで放っていた。理由はこれで立たれると、これからのサラの闇属性魔法を絡めた攻撃を防ぐのは困難になるからだ。

「確かに、そうね。『隠密コバート』を無効化したわけではないもの。でも、ドレイクの攻撃、破拳・一ノ型『直烈破ちょくれつは』をあそこまでまともに食らったら立てないんじゃ⋯⋯」
「そうでもないようだよ」
「え?」

 ぐぐぐ⋯⋯。

「⋯⋯ふぅ」
「立った! 立ったー! サラ選手、あのドレイク選手の強烈な破拳を食らって立ち上がったー! 信じられません!」
「「「「「ワァァァァァァァァーーー!!!!!」」」」」

 サラはヨロヨロとしつつも、しっかりと踏ん張って立ち上がった。

「ちっ! 俺の破拳あれをまともに食らって立つか」
「フ⋯⋯なめんにゃよ、人間。あの程度の威力、私たち獣人には大したことないにゃ。にゃははは」
「⋯⋯化け物め」
「顔が青いぞ、人間?」

 サラはズイズイとゆっくりとドレイクに迫る。ドレイクは冷や汗を滲ませながら後方へと下がる。

「どうやら、君、私の『隠密コバート』を見破っていたわけではないようだね」
「さあ、どうかな」
「別にいいよ、答えなくても。ちょっと私も油断しすぎていたにゃ。反省しているにゃ。だから⋯⋯」

 そう言って、サラがドレイクへと迫っていた歩みを止める。

「闇属性⋯⋯中級魔法⋯⋯」
「っ!? 今、『闇属性中級魔法』と⋯⋯まさかっ!?」

 レコがサラの言葉に反応する。

「闇属性中級魔法『森羅迷彩カモフラージュ』!」
「何っ!?」
「え⋯⋯っ!?」
「「「「「き、ききき、消えたぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」」」」」

 突如、サラの体が周囲に溶け込むように⋯⋯⋯⋯完全に消えた。それは対象者のドレイクだけでなく、周囲も含めて完全に姿が消えていた。

「フ⋯⋯まったく。闇属性の下級魔法でさえ対処に困るというのに、中級魔法も使えるなど⋯⋯もはや手に負えんな」
「これで⋯⋯終わりにゃ」

 トン。

「か⋯⋯っ!?」

 ドサ。

 サラは姿を消した状態で、ドレイクのうなじ部分に手刀を当て、意識を刈り取った。

「勝負あり! サラ・ウィンバード選手の勝利っ!!!!」
「「「「「ワァァァァァァァーーーーーー!!!!!!!」」」」」


********************


「か、完全に消えていたよ、カイト?」
「ええ、そのようですね」
「何よあれー! 信じらんない! インチキー!!!!」

 レコが俺の首襟をつかまえてガックンガックン振り回しながら、金切り声を出す。

「レ、レコ⋯⋯ギブ、ギブ。俺、次、試合ある⋯⋯か⋯⋯ら」
「あ、ごめん、カイト」

 レコが珍しく俺をすぐに解放してくれた。

「そりゃー、次に試合があるならこれくらい当然よ」

 いや、どうせなら通常からこのくらいすぐに解放して欲しいものである。

「じゃ、いってきます」
「はい、いってらっしゃい」

 そう言うと、カイトはいつも通りのテンションで舞台裏へと向かっていった。

——いよいよ、カイトの試合が始まる。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...