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第二章 騎士学園編
100「決勝トーナメント一回戦(10)」
しおりを挟む【祝・100話】
おはこんばんちわ!
mitsuzoです。
「自重知らず⋯⋯」が、遂に100話を迎えました。
100話まで長いようであっという間でした。
これからも頑張って『週3更新』で進んで行きたいと思います。
引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。
********************
「皆さま、お待たせしました! 次の一回戦最後の試合は、大会史上初めてとなる『学園長推薦シード』に選ばれたカイト・シュタイナー選手と、名門ハルカラニ家のリリアナ・ハルカラニ選手の対戦となります!」
「「「「「ウォォォォォーーーーーーーーーーっ!!!!!!」」」」」
舞台にカイトとリリアナが揃って登場。観客も「待っていました!」とばかりに大きな歓声を上げ、二人を出迎える。そして、この試合は観客だけでなく、一回生以外の生徒たちもまた注目していた。
「エリナ様。あれが、カイト・シュタイナーです」
「ふむ、特に強者の気配は感じられないな。本当に彼がガス・ジャガーを倒したり、超級魔法が使えるというのか?」
「そう⋯⋯ですね。こうして初めて生でカイト・シュタイナーを見ましたが⋯⋯⋯⋯普通ですね」
三回生序列1位にして生徒会長のエリナ・クインズベルと、序列2位の副会長のセリーヌ・ジュリアーノ。
「いよいよですわね、マリアンヌ。カイト・シュタイナーの試合⋯⋯」
「ええ、そうですわね、フロレンシアお姉様」
「まさか、リリアナがカイト・シュタイナーと対戦することになるとは驚きですが、これはこれでちょうどいいですわね」
「リリアナは実力的には一回生の中でもトップクラスであることは間違いないですから、カイト・シュタイナーの実力を確かめるにはちょうど良いかと。それに、我々、ハルカラニ家の相伝魔法もありますし⋯⋯」
「まあ、相伝魔法を使わせるだけの実力がそもそもカイト・シュタイナーにあるかどうか⋯⋯まずは、そこからですわ」
「はい、お姉様」
ハルカラニ家三姉妹。長女フロレンシア・ハルカラニ、次女マリアンヌ・ハルカラニ。
「バーバラ様、いかがでしょう?! 私としては正直、ただの生徒にしか見えません! 覇気もないですし、本当にただの一般生徒にしか⋯⋯」
「そうですか。イーナにはそう見えていますか」
「⋯⋯え?」
「フフ。つまり、イーナはこのカイト・シュタイナーの実力はただの普通生徒レベルで、あの噂のような実力は到底無いと言いたいのですね?」
「はい! 正直、二回生『序列1位』のバーバラ・タンゼント様が気にかける生徒ではないと思います!」
「なるほど。つまりイーナは、そんな大したことない生徒に『大会初の推薦シード』を与えた学園長の目は節穴だと言いたいのですね?」
「⋯⋯あ」
イーナがバーバラの指摘にハッとした顔を見せる。
「まあ、おそらくこの会場にいるほとんどの者たちは、カイト・シュタイナーに対し、イーナと同じ印象を持ったでしょうね⋯⋯くくく」
バーバラが一度、笑みをこぼす。
「いいですか、イーナ。この話の大事なポイントは『見た目、実力が大したことない』という点です」
「は?」
「ハンニバル・シーザー学園長⋯⋯クラリオン王国騎士団元団長であり、且つクラリオン王国騎士団『最強時代の騎士団長』。『悪虐』という二つ名で恐れられていたそんな彼が『特別と認めるほどの男』⋯⋯それがカイト・シュタイナーです。そんな彼を見て『大したことない』と感じるということは、それは彼の強さを検知できていないということ。つまり⋯⋯⋯⋯それだけ圧倒的な実力差があることを意味します」
「っ!?」
「フフ⋯⋯まったく、とんだ化け物ですよ、彼」
「なっ!? バ、バーバラ様が⋯⋯化け物と⋯⋯?」
「⋯⋯初めてですよ。学生でここまでの強者に出会ったのは。ええ、ええ、楽しみです。本当に、本当に⋯⋯楽しみです」
ニチャァ。
二回生序列1位のバーバラ・タンゼントと、その従者イーナ・マキアート。
また、それ以外の上級生の実力者たちもカイト・シュタイナーの実力を確かめるべく、会場に集まっていた。一回生のクラス編成トーナメントごときに上級生がわざわざ足を運ぶというのは異例中の異例であり、まして序列上位の上級生が見に来るなど初めてのことだった。
********************
「遂に出てきましたわね、カイト・シュタイナー」
「よ、よろしくお願いします」
いつもの『カマトトキャラ』で対応するカイト。
「あなたって本当に強いんですの?」
「え?」
「正直、私はあなたを疑っておりますわ。実際、こうして対峙してみても⋯⋯⋯⋯あなたからはまったく脅威を感じませんもの」
「あ、いや~、タハハ⋯⋯」
「タハハ、じゃないですわ。はぁ、ガス・ジャガーを倒したときはすごいと思いましたのに⋯⋯とんだ買い被りでしたわ」
カイトが情けない苦笑いを浮かべると、大きなため息を吐いて落胆するリリアナ。すると、そんなリリアナからカイトに提案してくる。
「いいですか、カイト・シュタイナー。学園長があなたを過大評価して『学園長推薦シード』としたようですが、あなたがその評価に釣り合わない実力だとわかった以上、私はあなたに棄権することを提案いたします」
「棄権⋯⋯ですか?」
「ええ。試合が始まってしまえば私はあなたを倒さなければいけません。もちろん手加減はしますが、それでも、あなたに痛い思いをさせてしまいます。私、そういうの嫌いなんです。実力差がある者に対し、拳を振るうなんて⋯⋯」
「⋯⋯リリアナ様」
「だから、カイト・シュタイナー、棄権しなさい。恥はかくかもしれませんが痛い思いをしなくて済みます。大丈夫、私があなたの味方になって擁護しますから、安心して棄権なさい」
「優しいんですね、リリアナ様」
「名門ハルカラニ家の者ですよ、私は。これくらいの配慮、当然です!」
リリアナが両手を腰に当ててドヤーとする。
「ははは。俺、あんたのこと気に入ったよ」
「⋯⋯俺?」
「⋯⋯失礼。ご配慮ありがとうございます。ですが、僕は棄権しません。リリアナ様、ぜひ、お手合わせをお願いします」
「⋯⋯そうですか。それがあなたの答えですか、カイト・シュタイナー⋯⋯。わかりました。あなたのその気概に免じて、この勝負受けてたちましょう!」
リリアナがカイトに握手を求め、それに応じるカイト。そんな二人のやり取りを眺める同級生や上級生、そして観客が心の中で呟く。
(((((見せてもらおうか、カイト・シュタイナー。その実力とやらを⋯⋯?)))))
「それでは! 一回戦最終の第六試合。試合開始ぃぃーーー--っ!!!!」
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