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過去は変えられる
フラッシュバックの中で復讐を誓う
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それにしてもタイムリープとは突然でランダムだ。
こちらの都合なんてお構いなしにやって来る物なのか?
少しだけ片付けた僕の部屋の片隅で、保坂さんは今も半信半疑に怯えている。
『僕が君を守るから』とは言った物の――。
よくよく冷静になって考えたら、こんなに不都合なタイミングはない。
これではまるで、僕が花嫁を奪った間男だ。
損害賠償請求なんてされた日には形勢逆転、本末転倒。
「確認なんだけど、入籍ってもう済んでる?」
彼女は、はっと顔を上げて少し考えてからこう言った。
「まだよ。入籍は結婚式の後。二人で役所に行ったのを覚えてる」
「そうか」
ならセーフ?
いや、アウトだろ。
結婚式の途中なのだから。
「お茶でも淹れよう」
そう言って立ち上がると、彼女も立ち上がった。
「私、戻るわ」
「え? どうして?」
「私、死のうとしてたの。いえ、死んだのよ。伊藤の顔なんて二度と見たくない。義母の顔も。やっと縁が切れると思って死んだのに、突然目の前に彼の顔があったの」
「お色直しで再入場するタイミングに戻ったわけか」
「やっとお別れできると思ったのに、彼、こう言ったのよ。幸せになろうねって」
「人生で一番ハイになる瞬間だからね」
「今朝、彼は私になんて言ったと思う?」
「10年後、君が死んだ日だね? なんて言ったんだろう?」
「どけ! ドブの匂いがする」
「……酷いな」
「それだけじゃないわ。そんな辛気臭い顔をおふくろに見せるのかって」
「え? どういう事?」
「私、毎日痛みと闘いながら農作業したわ。苦しい顔をすると彼も義母もため息を吐くから、できるだけ笑顔でいる努力をしてきた。
けど、今朝は絶えられなかった。痛くて辛くて。
優しい言葉の一つもかけてもらいたかった。
それなのに、そんな顔をおふくろに見せるなって……。
彼が大事だったのは、私よりお母さんなのよ。
彼は私と結婚したかったんじゃない!!
お母さんが気に入った娘を! お母さんに! 献上したかっただけなのよ!!」
「保坂さん……」
そして彼女は大声を上げて泣いた。
「10年もーーーー、そんな事に気付かず、あの家族に尽くしてきたかとおもっだら、くやしくて、悲じぐで……」
床に突っ伏して、拳を打ち付けながら、しゃくりあげて泣いた。
「どうせ……癌で死ぬなら。毎日こんな痛みと屈辱に耐えながらの暮らしなんて……もう……もう終わらせたかった」
泣きじゃくる彼女の背中を僕はひたすらさすった。
「それなのにーーーー、それなのにーーーーー!!!」
目の前に、伊藤がいたってわけだ。
一頻り泣いた彼女は、ようやく、落ち着きを取り戻したようで、ころ合いを見計らって僕は訊いた。
「式場に戻ってどうするつもり?」
「わからない。だけどこのままじゃ気が収まらない。逃げるなんてイヤ! 闘うわ」
「もちろん、君は闘わないといけない。僕にいい考えがあるよ」
「え?」
僕はクローゼットからメイクボックスを取り出した。
学生の時に揃えたフルセット。
ボックスの中から、クレンジングオイルを取り出す。
ティッシュに馴染ませて、彼女のむき出しになっている肩や腕を拭った。
「君は、もしかしたら忘れてるかもしれないけど」
僕はすぐに気づいていた。
彼女の体が、ファンデーションで覆われている事に。
「は!」
みるみる露わになる体中のあざ。
それを見た彼女は、また悲しそうに顔を歪めた。
「思い出した?」
両手で顔を覆って、嗚咽しながらうなづく。
記憶がフラッシュバックしてるんだ。
今にも壊れてしまいそうに、彼女は呼吸を乱し、全身でしゃくりあげながら、泣き声をあげた。
「結婚式の前日……、初めて買ったスマホで、泉君のSNSを見つけて……それを見ていた私の顔が気に入らないって……」
「伊藤に、暴力を受けた?」
彼女はしゃくりあげながらうなづいた。
「愛しているからこそお前が他の男を見るのがつらいんだ、って。俺の気持ちを考えてるならそんな事はできないはずじゃないか、って……何度も何度も……」
それで、ずっと僕をブロックしていたのか。
僕はそんな彼女を、両手で包み込んだ。
「復讐しよう。未来を変えるんだ」
中身が30歳の君は、あの頃よりずっと強く、現実的で、賢くなっているはずだ。
僕もね。
二人なら、未来を変えられる。
ガラクタだった僕たちの今日にリベンジしよう。
こちらの都合なんてお構いなしにやって来る物なのか?
少しだけ片付けた僕の部屋の片隅で、保坂さんは今も半信半疑に怯えている。
『僕が君を守るから』とは言った物の――。
よくよく冷静になって考えたら、こんなに不都合なタイミングはない。
これではまるで、僕が花嫁を奪った間男だ。
損害賠償請求なんてされた日には形勢逆転、本末転倒。
「確認なんだけど、入籍ってもう済んでる?」
彼女は、はっと顔を上げて少し考えてからこう言った。
「まだよ。入籍は結婚式の後。二人で役所に行ったのを覚えてる」
「そうか」
ならセーフ?
いや、アウトだろ。
結婚式の途中なのだから。
「お茶でも淹れよう」
そう言って立ち上がると、彼女も立ち上がった。
「私、戻るわ」
「え? どうして?」
「私、死のうとしてたの。いえ、死んだのよ。伊藤の顔なんて二度と見たくない。義母の顔も。やっと縁が切れると思って死んだのに、突然目の前に彼の顔があったの」
「お色直しで再入場するタイミングに戻ったわけか」
「やっとお別れできると思ったのに、彼、こう言ったのよ。幸せになろうねって」
「人生で一番ハイになる瞬間だからね」
「今朝、彼は私になんて言ったと思う?」
「10年後、君が死んだ日だね? なんて言ったんだろう?」
「どけ! ドブの匂いがする」
「……酷いな」
「それだけじゃないわ。そんな辛気臭い顔をおふくろに見せるのかって」
「え? どういう事?」
「私、毎日痛みと闘いながら農作業したわ。苦しい顔をすると彼も義母もため息を吐くから、できるだけ笑顔でいる努力をしてきた。
けど、今朝は絶えられなかった。痛くて辛くて。
優しい言葉の一つもかけてもらいたかった。
それなのに、そんな顔をおふくろに見せるなって……。
彼が大事だったのは、私よりお母さんなのよ。
彼は私と結婚したかったんじゃない!!
お母さんが気に入った娘を! お母さんに! 献上したかっただけなのよ!!」
「保坂さん……」
そして彼女は大声を上げて泣いた。
「10年もーーーー、そんな事に気付かず、あの家族に尽くしてきたかとおもっだら、くやしくて、悲じぐで……」
床に突っ伏して、拳を打ち付けながら、しゃくりあげて泣いた。
「どうせ……癌で死ぬなら。毎日こんな痛みと屈辱に耐えながらの暮らしなんて……もう……もう終わらせたかった」
泣きじゃくる彼女の背中を僕はひたすらさすった。
「それなのにーーーー、それなのにーーーーー!!!」
目の前に、伊藤がいたってわけだ。
一頻り泣いた彼女は、ようやく、落ち着きを取り戻したようで、ころ合いを見計らって僕は訊いた。
「式場に戻ってどうするつもり?」
「わからない。だけどこのままじゃ気が収まらない。逃げるなんてイヤ! 闘うわ」
「もちろん、君は闘わないといけない。僕にいい考えがあるよ」
「え?」
僕はクローゼットからメイクボックスを取り出した。
学生の時に揃えたフルセット。
ボックスの中から、クレンジングオイルを取り出す。
ティッシュに馴染ませて、彼女のむき出しになっている肩や腕を拭った。
「君は、もしかしたら忘れてるかもしれないけど」
僕はすぐに気づいていた。
彼女の体が、ファンデーションで覆われている事に。
「は!」
みるみる露わになる体中のあざ。
それを見た彼女は、また悲しそうに顔を歪めた。
「思い出した?」
両手で顔を覆って、嗚咽しながらうなづく。
記憶がフラッシュバックしてるんだ。
今にも壊れてしまいそうに、彼女は呼吸を乱し、全身でしゃくりあげながら、泣き声をあげた。
「結婚式の前日……、初めて買ったスマホで、泉君のSNSを見つけて……それを見ていた私の顔が気に入らないって……」
「伊藤に、暴力を受けた?」
彼女はしゃくりあげながらうなづいた。
「愛しているからこそお前が他の男を見るのがつらいんだ、って。俺の気持ちを考えてるならそんな事はできないはずじゃないか、って……何度も何度も……」
それで、ずっと僕をブロックしていたのか。
僕はそんな彼女を、両手で包み込んだ。
「復讐しよう。未来を変えるんだ」
中身が30歳の君は、あの頃よりずっと強く、現実的で、賢くなっているはずだ。
僕もね。
二人なら、未来を変えられる。
ガラクタだった僕たちの今日にリベンジしよう。
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