7 / 24
シンジの作戦
しおりを挟む
不意に現れた、山口蓮斗は、正義のヒーローよろしく、シンジの前に立ちはだかった。
何も知らないくせに――。
「ゆらを泣かすヤツは俺が許さねぇ」
「なんだと」
カっと頭に血が上る。
なぜなら、蓮斗が原因で何度かゆらと喧嘩になった事があるからだ。喧嘩というよりはシンジが勝手にいじけていたに過ぎないのだが。
とにかく、この男が嫌いだった。きっとゆらに気があるのだ。小さい頃からずっと一緒だったという幼馴染エピソードは、度々シンジに疎外感を与えていた。
それに、ゆらにはしばらくの間、不登校になってもらわないと困る。
助けるヤツが現れたとなると、序盤にしてシンジの計画は失敗となってしまう。
「てめぇ、しゃしゃって来んな!」
そう言って、蓮斗の胸倉を掴んだ。
シンジは去年、フルコンタクトの空手道場で、黒帯を取得した。これが試合だったらもう振り上げた拳はとっくに振り切っている所だ。
しかし、喧嘩で拳をふるう事は許されない。その掟がシンジを少し冷静にさせる。
振り上げた拳から力を抜き、胸倉を掴んだ拳で、力任せに押した。
蓮斗は野球部で体格もいい。
少しよろけただけで、すぐに態勢を整えた。
そして、シンジの机に手をかける。
移動させるつもりなのだ。
「やめろ! きさま! しゃしゃって来んな!!」
シンジは、蓮斗を押しのけて、机の上に座り、肩に前蹴りをヒットさせた。咄嗟に出てしまった。
蓮斗の大柄な体はバランスを崩し、ゆらの机にぶつかって大げさな音を立てた。
――しまった。
と思ったが後の祭りだ。
「てめぇー」
蓮斗も負けずに拳を振り上げる。
それをよけて、再び前蹴りで反撃する。蓮斗は再び後方に吹っ飛んで、後頭部を床に打ち付けた。
「蓮斗! 大丈夫?」
頭をおさえてうずくまる蓮斗にゆらが駆け寄った。
腕っぷしなら負けない。丸腰の相手に金属バットで挑むような物だ。
ゆらを守るためにも、シンジは負けるわけにはいかなかった。この席に、ゆらを座らせるわけにはいかないのだ。
今朝の夢は前半と後半に分かれていた。
夏服と雨。そして授業中。この席でゆらは殺されたのだ。
それが、今日なのか。或いは別の雨の日なのか、なんの授業だったのか、不明瞭な情報がシンジを不安にさせ、イラつかせる。
とにかく、この席で、ゆらに授業を受けさせるわけにはいかない。
教壇から一番遠くて、入口から一番近いこの席に座っていたばっかりに、ゆらは犠牲になってしまうというわけだ。
「シンジの馬鹿! どうしちゃったのよ」
ゆらは蓮斗をかばいながらそう言って、涙で濡れた顔でシンジを睨んだ。
ゆらのこんな顔を見たのは初めてで、胸が苦しくなった。
何も知らないくせに――。
「ゆらを泣かすヤツは俺が許さねぇ」
「なんだと」
カっと頭に血が上る。
なぜなら、蓮斗が原因で何度かゆらと喧嘩になった事があるからだ。喧嘩というよりはシンジが勝手にいじけていたに過ぎないのだが。
とにかく、この男が嫌いだった。きっとゆらに気があるのだ。小さい頃からずっと一緒だったという幼馴染エピソードは、度々シンジに疎外感を与えていた。
それに、ゆらにはしばらくの間、不登校になってもらわないと困る。
助けるヤツが現れたとなると、序盤にしてシンジの計画は失敗となってしまう。
「てめぇ、しゃしゃって来んな!」
そう言って、蓮斗の胸倉を掴んだ。
シンジは去年、フルコンタクトの空手道場で、黒帯を取得した。これが試合だったらもう振り上げた拳はとっくに振り切っている所だ。
しかし、喧嘩で拳をふるう事は許されない。その掟がシンジを少し冷静にさせる。
振り上げた拳から力を抜き、胸倉を掴んだ拳で、力任せに押した。
蓮斗は野球部で体格もいい。
少しよろけただけで、すぐに態勢を整えた。
そして、シンジの机に手をかける。
移動させるつもりなのだ。
「やめろ! きさま! しゃしゃって来んな!!」
シンジは、蓮斗を押しのけて、机の上に座り、肩に前蹴りをヒットさせた。咄嗟に出てしまった。
蓮斗の大柄な体はバランスを崩し、ゆらの机にぶつかって大げさな音を立てた。
――しまった。
と思ったが後の祭りだ。
「てめぇー」
蓮斗も負けずに拳を振り上げる。
それをよけて、再び前蹴りで反撃する。蓮斗は再び後方に吹っ飛んで、後頭部を床に打ち付けた。
「蓮斗! 大丈夫?」
頭をおさえてうずくまる蓮斗にゆらが駆け寄った。
腕っぷしなら負けない。丸腰の相手に金属バットで挑むような物だ。
ゆらを守るためにも、シンジは負けるわけにはいかなかった。この席に、ゆらを座らせるわけにはいかないのだ。
今朝の夢は前半と後半に分かれていた。
夏服と雨。そして授業中。この席でゆらは殺されたのだ。
それが、今日なのか。或いは別の雨の日なのか、なんの授業だったのか、不明瞭な情報がシンジを不安にさせ、イラつかせる。
とにかく、この席で、ゆらに授業を受けさせるわけにはいかない。
教壇から一番遠くて、入口から一番近いこの席に座っていたばっかりに、ゆらは犠牲になってしまうというわけだ。
「シンジの馬鹿! どうしちゃったのよ」
ゆらは蓮斗をかばいながらそう言って、涙で濡れた顔でシンジを睨んだ。
ゆらのこんな顔を見たのは初めてで、胸が苦しくなった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる