暗黒騎士物語

根崎タケル

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第13章 白鳥の騎士団

第9話 蛇の使者

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 暗い秘密の場所。
 それは2の首の研究室でもある。
 研究室には多くの弟子がいたが勇者達によって殺されるか捕縛されてしまった。
 そのため今は2の首だけがこの場所を使っている。

「作り出した暗黒騎士が消えたか……。かなりの強さだったはずなのだがな」

 2の首は報告を受けて首を振る。
 先程2の首が作った作品が消されたのだ。 
 その事に驚く。
 暗黒騎士は2の首が作った作品で、かなりの強さのはずだった。
 この研究室は2の首が所有する研究室の1つで夢を研究していた。
 研究室には多くの棺が並べられている。
 その棺の中にはそれぞれ人が横たわっている。
 死んではいない、眠らされているだけだ。
 眠らされている人の性別と年齢は違っている。
 死んではいないが全員が衰弱している。
 なぜなら、夢を具現化するために精神力を吸いとっているからだ。
 やがて、死んでしまうだろうが構わない。
 いなくなれば補充すれば良いだけである。

「申し訳ございません。2の首様。貴方の作り出した作品を消費してしまいました。」

 2の首は振り返る。
 そこには仮面を付けた者がいる。
 1の首の使いの者である。
 正体は蛇の女王を崇める者だろう。
 彼らは多くの人を殺し女王に捧げる事を喜びとする。
 実験のために多くの人を犠牲する2の首とは利害が一致するのか、協力関係にある。 
 2の首はこの者に夢で作られた魔物と戦士を貸し出したのである。
 夢で作られた魔物は臭いもなく倒されても証拠を残さないから、都合が良いらしく、使用する蛇の者達は喜んでいるようだ。。  

「かまわんよ。使わねば性能と成果が試せんからな」

 そう言って2の首は1の首の使者から渡された報告書に目を通す。
 研究成果の行動を細かく記してある。
 次の実験に仕えるだろう。

「そうですか、また何かありましたらよろしくお願いします」
「わかっている。しかし、見返りは貰うぞ、資金と研究の素材が必要だ。今回の件で多くの素材を消費したからな」

 夢の生物は面白い研究であるが、具現化するために必要な人間の数と精神を強化するための素材があまりにも多く必要でありすぎた。
 弱い夢のゴブリンを1匹作るだけで数十人の精神力と魔晶石マジックジェムをかなり消費したのである。
 夢の暗黒騎士はその数倍も必要だった。
 精神を吸い取られ廃人になった者は3の首に渡した。
 今頃アンデッドに作り替えられているに違いない。
 新たな研究を行うためにも資金は必要であり、また希少な素材を調達してくれる者も必要であった。
 それを用意してくれる蛇の教団は2の首にとってありがたい存在である。
 
「わかっております。ただ、少し気になる事が……」
「どうした?」
「件の暗黒騎士を倒した者達ですが、ここに連れて来られた者を探しているようです。いずれここに来るかもしれません」
「何だと!? ここは秘密にしている。簡単には判明しないはずだが……」

 2の首は思わず大きな声を出すと1の首の使者を睨む。
 この場所は秘密にしている。
 簡単には判明しないはずである。
 そして、この場所を知っているのは2の首と1の首の手下だけのはずだった。
 1の首とは利害が一致するから付き合っているだけだ。
 それ以上の利益があれば2の首を売る事等平気でするだろう。
 例え裏切っていなくても、彼らから秘密が漏れた可能性が高い。 

「我々を疑いですか? ですが、星を見る者であれば見つけられないとは限らないでしょう。かの者達の仲間にはその力を持つ者がいるようです」

 使者は笑って言う。
 その言葉に2の首は自身の髭を触る。

 占星術。

 星を見て、過去と未来を見て、また隠された秘密を探り出す魔術である。
 錬金術と心霊術の研究を主に行う2の首はあまりその魔術については詳しくない。
 だが、それでもどのようなものかは知っている。
 大賢者の弟子だった時に星見の賢者ヤーガとは出会った事があるのだ。
 その魔術は素晴らしかった事を覚えている。
 腕の良い占星術師か同じ力を持つ者ならば、この場所を発見する事も出来るだろう。

「なるほど、占星術か……。確かにあれに長けた者ならば、発見される事もあるか……。ならば、ここを去るしかないな、さてどこに行くかのう?」

 争いを避ける為にこの場を去るしかない。
 2の首はこの場を去る事にする。
 だが、破壊されずに残っている研究室はここ以外になく、行き場に困る。

「それでしたら、我らの元に来ませんか? 研究所も用意しますよ。それに丁度良く遠くからあの方も来られるようですしね。ぜひともお会いしてください」

 使者は笑う。

「あの方?」

 2の首は首を傾げる。
 遠くからと言っているので、あの方とは1の首の事ではない。
 つまりはかなりの上位者が来るという事だ。
 その言葉が少し気になると同時に会う事に何か危険なものを感じる。

「尊き御方ですよ。我らにとってね」
 
 使者は嬉しそうに笑う。
 その笑いに2の首は不気味な何かを感じるのだった。




 蛇の王子ダハークはバンドール平野へとやって来る。
 この地はエリオスの女神レーナの影響が強い場所だ。
 敵対する神がこの地に来ていると知れればエリオスの神々が黙っていないだろう。
 だから、ダハークは隠れて事の地に来ることになった。
 ダハークはそれが不満であった。
 元々隠れて行動するような真似はダハークが好む事ではない。
 乗騎であるムシュフシュも置いてくるしかなかった。

「お待ちしておりました。御子様」

 仮面を付けた者が頭を下げ出迎える。
 配下から1の首と呼ばれている者である。
 下等な者ではあるが、母親から寵愛を受けているようであった。
 エリオスの神々を亡ぼすために活動していて、様々な情報を送っている。
 この面会の場所はとある人間の国の宮殿だ。
 この国の女王は若返りの秘術と引き換えに蛇の女王に忠誠を誓ったのである。
 ダハークの周りに半裸の人間の女達が酒と食事を運んで来る。
 ダハークはそれを受け取りながら用意された椅子に座る。
 
「ふん、この俺様がここまで来たのだ。その凶獣の血を引く者はどこだ? 何をしている?」

 ダハークは興味なさそうに聞く。
 凶獣フェリオンの血を引く者が目覚めた。
 その報告を聞いた蛇の女王ディアドナはその者が自身に役立つか見極める為に息子のダハークを派遣したのである。
 暴虐なダハークも母親には逆らえない。
 そのためダハークは渋々この地に来たのである。
 その凶獣の血を引く者が役に立ちそうなら、仲間に引き込むように指示されている。
 見定める事が目的なので出来るだけエリオスの神々と戦う事も禁じられてしまった。
 そのためダハークは隠れて来る必要があった。
 隠れて動く事が嫌いなダハークは苛立ちを隠せない。
 そのため、目の前の者に対して怒りの声を発してしまう。
 
「はい、今は隠れて行動しているようです。宜しければここに連れてきますが?」
「いらん! まずはそいつの実力が知りたいだけだ。何とかしろ」

 ダハークは手を振って答える。

「それでしたら、丁度良くエリオスの神アルフォスの血を引く者が近くにいます。その者と戦わせましょう」
「何アルフォスの血を引く者だと? そいつは気になるな」

 ダハークは身を乗り出して聞く。
 ダハークは過去にエリオスの神アルフォスに敗れた。
 その時の記憶は今も残っている。
 その血を引く者を殺してやりたいと思うのも当然であった。

「御子様が戦われますか? それでは別の手を考えましょうか?」
「うむ。それは……」

 ダハークは頭に手を置いて考える。

「いや、やめておこう……。今回は凶獣の血を引く者を見るのが役目だからな……」

 ダハークは残念そうに言う。
 アルフォスの血を引く者は気になるが、今回の目的は凶獣の血を引く者を見定める事が目的だ。
 母親の命令に背く事はできない。
 
 (ふん、凶獣の血を引く者が何だ。隠れて行動するような奴が強いとは思えん。使えそうにないなら、このダハークが殺してやる)

 怒りの炎を抑えながらダハークは槍を肩に担ぐのだった。
 
 
 
 



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