主人公は魔法が使えないのである。

ハルビィン・オリバー編

第２話 捨て子は“異端児”

魔素マナは人間の体内に存在する魔帯臓またいそう(魔官臓まかんそう)と呼ばれる臓器によって生産、また貯蔵され、そこから脳に繋がる魔神経ましんけいによってその人間の意思で使用することができる。その生産速度や貯蔵量は人それぞれで使えば使うぼど生産速度を速めたり、貯蔵量を増やしたりできるとされている。通常の人間は魔素マナを生まれつきっているのだが、かつてのかの有名な研究家かつ、冒険家であるグリム＝クランキスが予言したように魔素マナを持たない異端児は誕生した。
クリストファー＝プラッセのことである。
また、クランキスはこうも言っていた。「そいつは神から授かった魔力ではない何かを宿している」と。
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「マーシアさん、この子、魔素マナを一切持ってませんよ。もしかして、まさかもしかして、」

医者はとても慌てて早口で言った。

「分かってるから先生も落ち着いて。最近テレビでやたらとグリム＝クランキスの特集とかしてるからな。そりゃ焦るのは分かるが。相談したいことは、まず、この子に魔素マナを付けられないか。それが無理ならどこかに隠しておいた方がいいのかということです。」
「あぁ。マーシアさんも分かっとると思うが魔素マナを付けることは不可能。それ以外の問題は病院で聞かれても困るんだよ。」
「このことがバレたら世界中からプラッセの命をねらう輩が出てくるだろう。そんなときにプラッセは自分で戦えるのかい。魔素マナのないプラッセが相手の魔術師たちに戦えるのかい。」

マーシアもだんだん早口になっていく。

「それはやってみないと分からないです。しかし、グリム＝クランキスの言う『異端児』がこの子なら、魔力ではない何かを持っている可能性が高い。私の知人に道場の師範がいる。少し試してみるか。」

マーシアは黙ってうなずいた。