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地潜りの竜(4)
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パァン!
乾いた音が響き渡った。私はこの音を知っている。
入口の壁で身体を隠したリーベルトとアスリーが銃を構えていた。
パンッ、パン! 彼らは向かってくる構成員を狙撃して数を減らしていった。
「援護感謝する! 愚かなる盗人よ、己が影に囚われよ!!」
マシューが叫ぶと彼の周辺の影から、黒く長い手がにゅうっと生えて敵の構成員達の身体に巻き付いた。完全にホラーの図だ。
爽やかマシューさんは珍しい闇魔法の使い手らしい。
「ヒィッ!?」
自分の影から生えた手に動きを封じられた構成員達は、マシューの剣によってザックザック命を刈り取られていった。首領以外には容赦無いな。
そして。
「我が障害を薙ぎ払え! 気高き風よ!!!!」
ルパートの澄んだ声がコンサートホールに響き渡った。
起こった強風がルパート達に接近していた構成員達を、床に固定設置されていたイスごと持ち上げて遠くの壁まで運び、派手に叩き付けたのだった。
ガシャン、ドォン、バキッ!
周囲が一掃された。悲鳴すら上げられずに風に飛ばされた構成員達は、壁からずり落ちてそのまま戦線離脱した。めちゃくちゃ痛そう。
ルパートの魔法は何度か見たけど、今回のは凄い威力だったなぁ。
「アイツ絶対、キミにいい所を見せようといつもより張り切っている」
私の肩を抱くエリアスが忌々しそうに呟いた。だけど彼は肩から手を放し両手で大剣を握り、すぐに引き締まった顔に戻った。
同じタイミングでマシュー中隊長が後ろを振り返って私達へ号令をかけた。
「全員、突入──────!!!!」
待機していた王国兵団が鬨の声を上げて駆けた。入口の広さ限界まで一気に、大量の兵士が勇ましくコンサートホール内へ雪崩れ込んだ。
舞台近くのイスに潜むアンダー・ドラゴン構成員が矢を飛ばしてきたが、マキアとアルクナイトが火魔法で空中の矢を全て焼き払った。そして発射位置を掴んで走り込んだ兵士達の剣によって、犯罪組織の射手はその役割と命を終えた。
突入時にはまだアンダー・ドラゴンの方が人数的には多かったようだが、勢いづいたマシュー中隊の兵士、更には助っ人参加である冒険者ギルドメンバーの反則並みの強さによって、コンサートホール内の勢力図はあっという間に逆転した。
「白、もう気を張らず適当に休んでいろ。おまえの精神力は限界のはずだ。後の護りは俺が引き継いでやる」
「了解。後はお任せします」
中へ入ったアルクナイトは真っ先にキースの元へ駆け寄った。肩で息をしていたキースは意地を張らず、素直にアルクナイトの指示に従った。仲が悪いはずの二人であるのに、絆らしきものが見えるのは私の気のせいか。
「おまえはどうだ? まだ余力は残っているか?」
「当たり前だろ? これからだよ」
エリアスもまた、先行していたルパートへ声をかけた。この二人のやり取りはもはや親友同士のそれに見える。出会った当初はいがみ合って喧嘩ばかりしていたのが嘘みたいだ。
ピイーッと高い音が背後から鳴り響いた。二階からの襲撃に遭った合図だ。つい強張った顔で後ろを気にしてしまったが、
「大丈夫。エドガー先輩が援軍を寄こしてくれるから。俺達は目の前の敵に集中だよ」
マシューに注意されて私は視線を前方へ戻した。そうだ。それぞれが役割を果たさなければ。
「……舞台の左袖、苦戦していますね」
エンがコンサートホール全体を見渡して言った。確かに。他の箇所での戦闘はマシュー中隊が有利に進めてもうすぐ制圧しそうなのに、舞台の左側だけ攻めに勢いが無く押され気味だ。
「あそこに強い奴が居るんだろうな」
「俺、行きます」
クナイを構えたエン。
「ああ行こう。一緒にだ」
エリアスが応じてルパートも頷いた。
「マシュー中隊長、冒険者ギルドは苦戦している兵士の援護に向かいます」
「はいお願いします。俺も行きますけどね」
ホール中程に居た私達ギルドメンバーとマシューは、エンを先頭に舞台袖まで走った。
「中隊長すみません、我々ではこれ以上進めません!」
「ご苦労様。後は俺達に任せて」
舞台左袖で奮闘していた兵士達は隊長のマシューに道を譲った。
そこは天井吹き抜けで日光が射し込む明るい部屋だった。奥にはおそらく裏口であろう扉、右手には舞台へ繋がる低い階段が見える。その手前に斬られて倒れている五人の王国兵士。そしてまだ負傷が見えない八人のアンダー・ドラゴン構成員。
(ああ……)
私は奥歯を噛み合わせた。見知った顔が二人居た。エンの義兄弟であるユーリと、顔と腕に幾つもの傷痕を持つ男。残りの六人も腕に覚えのある幹部連中だろう。モヒカン構成員達とは面構えも雰囲気も違う。
「間違い有りません。あの古傷だらけの男が、アンダー・ドラゴン首領のレスターです」
私は仇敵を睨みながら皆に告げた。時間のループを知らない者達が「えっ」という顔をして私を見た。名指しされた首領レスターもそうだった。
「……俺の名前を知るおたくは誰だい? お嬢さん、何処かで会ったか? 手配書に載るヘマはしてないはずだがなぁ」
冷たく鋭いレスターの視線が私を射貫いた。背筋がブルったが踏ん張った。コイツには絶対に負けられない。
乾いた音が響き渡った。私はこの音を知っている。
入口の壁で身体を隠したリーベルトとアスリーが銃を構えていた。
パンッ、パン! 彼らは向かってくる構成員を狙撃して数を減らしていった。
「援護感謝する! 愚かなる盗人よ、己が影に囚われよ!!」
マシューが叫ぶと彼の周辺の影から、黒く長い手がにゅうっと生えて敵の構成員達の身体に巻き付いた。完全にホラーの図だ。
爽やかマシューさんは珍しい闇魔法の使い手らしい。
「ヒィッ!?」
自分の影から生えた手に動きを封じられた構成員達は、マシューの剣によってザックザック命を刈り取られていった。首領以外には容赦無いな。
そして。
「我が障害を薙ぎ払え! 気高き風よ!!!!」
ルパートの澄んだ声がコンサートホールに響き渡った。
起こった強風がルパート達に接近していた構成員達を、床に固定設置されていたイスごと持ち上げて遠くの壁まで運び、派手に叩き付けたのだった。
ガシャン、ドォン、バキッ!
周囲が一掃された。悲鳴すら上げられずに風に飛ばされた構成員達は、壁からずり落ちてそのまま戦線離脱した。めちゃくちゃ痛そう。
ルパートの魔法は何度か見たけど、今回のは凄い威力だったなぁ。
「アイツ絶対、キミにいい所を見せようといつもより張り切っている」
私の肩を抱くエリアスが忌々しそうに呟いた。だけど彼は肩から手を放し両手で大剣を握り、すぐに引き締まった顔に戻った。
同じタイミングでマシュー中隊長が後ろを振り返って私達へ号令をかけた。
「全員、突入──────!!!!」
待機していた王国兵団が鬨の声を上げて駆けた。入口の広さ限界まで一気に、大量の兵士が勇ましくコンサートホール内へ雪崩れ込んだ。
舞台近くのイスに潜むアンダー・ドラゴン構成員が矢を飛ばしてきたが、マキアとアルクナイトが火魔法で空中の矢を全て焼き払った。そして発射位置を掴んで走り込んだ兵士達の剣によって、犯罪組織の射手はその役割と命を終えた。
突入時にはまだアンダー・ドラゴンの方が人数的には多かったようだが、勢いづいたマシュー中隊の兵士、更には助っ人参加である冒険者ギルドメンバーの反則並みの強さによって、コンサートホール内の勢力図はあっという間に逆転した。
「白、もう気を張らず適当に休んでいろ。おまえの精神力は限界のはずだ。後の護りは俺が引き継いでやる」
「了解。後はお任せします」
中へ入ったアルクナイトは真っ先にキースの元へ駆け寄った。肩で息をしていたキースは意地を張らず、素直にアルクナイトの指示に従った。仲が悪いはずの二人であるのに、絆らしきものが見えるのは私の気のせいか。
「おまえはどうだ? まだ余力は残っているか?」
「当たり前だろ? これからだよ」
エリアスもまた、先行していたルパートへ声をかけた。この二人のやり取りはもはや親友同士のそれに見える。出会った当初はいがみ合って喧嘩ばかりしていたのが嘘みたいだ。
ピイーッと高い音が背後から鳴り響いた。二階からの襲撃に遭った合図だ。つい強張った顔で後ろを気にしてしまったが、
「大丈夫。エドガー先輩が援軍を寄こしてくれるから。俺達は目の前の敵に集中だよ」
マシューに注意されて私は視線を前方へ戻した。そうだ。それぞれが役割を果たさなければ。
「……舞台の左袖、苦戦していますね」
エンがコンサートホール全体を見渡して言った。確かに。他の箇所での戦闘はマシュー中隊が有利に進めてもうすぐ制圧しそうなのに、舞台の左側だけ攻めに勢いが無く押され気味だ。
「あそこに強い奴が居るんだろうな」
「俺、行きます」
クナイを構えたエン。
「ああ行こう。一緒にだ」
エリアスが応じてルパートも頷いた。
「マシュー中隊長、冒険者ギルドは苦戦している兵士の援護に向かいます」
「はいお願いします。俺も行きますけどね」
ホール中程に居た私達ギルドメンバーとマシューは、エンを先頭に舞台袖まで走った。
「中隊長すみません、我々ではこれ以上進めません!」
「ご苦労様。後は俺達に任せて」
舞台左袖で奮闘していた兵士達は隊長のマシューに道を譲った。
そこは天井吹き抜けで日光が射し込む明るい部屋だった。奥にはおそらく裏口であろう扉、右手には舞台へ繋がる低い階段が見える。その手前に斬られて倒れている五人の王国兵士。そしてまだ負傷が見えない八人のアンダー・ドラゴン構成員。
(ああ……)
私は奥歯を噛み合わせた。見知った顔が二人居た。エンの義兄弟であるユーリと、顔と腕に幾つもの傷痕を持つ男。残りの六人も腕に覚えのある幹部連中だろう。モヒカン構成員達とは面構えも雰囲気も違う。
「間違い有りません。あの古傷だらけの男が、アンダー・ドラゴン首領のレスターです」
私は仇敵を睨みながら皆に告げた。時間のループを知らない者達が「えっ」という顔をして私を見た。名指しされた首領レスターもそうだった。
「……俺の名前を知るおたくは誰だい? お嬢さん、何処かで会ったか? 手配書に載るヘマはしてないはずだがなぁ」
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