姉は女王様

朝霧麗羅

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水入らずの晩酌

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「気持ち良かったわ。今までの疲れがいっぺんに取れたみたい」上機嫌で姉は言った。
「今までの疲れはそんなに大変だったのですか?初美お姉様」
「馬鹿だね。私が疲れたのは全部お前のせいだよ」
「申し訳ありません。お姉様」私は姉に叱られ、慌てて詫びを入れた。
「いいよ、お前のためなら、私はどんな苦労も平気だから」姉は女王機嫌だった。

 食事の準備が出来た。
 後はこちらでするからと言って、姉は旅館の人には下がってもらった。
「満男。お前には世の中のしきたりを教えておかないとね」
 そう言って彼女は私にビール瓶を手渡した。
「目上の人にお酌する際の礼儀を知っておきなさい」そう言うと彼女は瓶は両手で持つようにとか、ラベルは上に来るようにしなさいとか、私に細かく教えた。
 私は姉がアルコール類を飲むのを始めて見た。
 実のところ、彼女は付き合いでたまに外で酒を飲む、いわゆる機会飲酒のタイプであり、私が彼女が酒を飲むことを知らなかったのは当然である。
 私に注がせたビールを姉は美味しそうに飲んだ。
 立て続けに私は3杯注がされた。
 どうやら彼女はお酒に強いらしかった。
 姉にウーロン茶を注いでもらう時はもちろん私は両手でコップを持つように指導された。
「もうお前はお姉ちゃんにお酒を注がなくていいよ。今夜は私はあなたの主人というより姉に徹するからね。安心してくつろぐんだよ」
「ありがとうございます。初美お姉様」
「だから言ったでしょ。今夜はお姉ちゃんなんだからね」
 私は懐かしい姉の記憶を思い出した」
「初美お姉ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。さあ、こっちへおいで」
 そう言うと、姉は私を抱っこして膝の上に乗せた。
 昔ながらのきびしくも優しい姉に抱かれ、私は少し恥ずかしく、そして夢見心地だった。
 中学時代の夏休みにそうしてくれたように、彼女は自分で念入りに咀嚼した料理を私に口移しで食べさせた。
 もちろん異様な臭いと感触の食べ物だったが、私はうれしかった。
 天にも昇る心地だった。
 口移しでご飯を食べさせてもらうということは、私は姉とキスをすることになるが、今回はビールの匂いと味が混じり、私は不思議な感覚を覚えた。
 16歳にしてお酒を飲んだのだと私は思った。
 ちょっぴり大人の味がした。

 ビールを日本酒に変えてからも、姉の勢いは止まらなかった。
 冷酒をぐいぐい飲みながら、姉はいつになく楽しそうだった。
 いつも容赦なく私を叱りお仕置きし自由に操る姉だが、世間的な努力や戦いにおいて相当の力を費やしているのだろう、こんな時でないと初美姉がくつろげる時はないのかもしれない、と子ども心に私は思った。

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