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プロローグ

新生活は、おきつねさんとともに?

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 ごく平凡なわたしが、「誰か」に人まちがいされた経験は、いままでにだって何度かある。
 人ごみの中、知らない人に背後から声をかけられ、振りかえると「あ、まちがいました! すみません」と謝られた……等々。

 だけど、だけど!
 まさか自分がタヌキにまちがえられるとは思ってもみなかった。

 今、真正面からわたしをみつめる青年は、わたしのことをタヌキが人間に化けているのだと……本気で信じている、らしい。

 昨日までのわたしなら「……いい大人が本当にタヌキが人間に化けると信じているなんて――」と、ドン引きしていたに決まっている。
 そう、いくらこの男性がたぐいまれな美貌の持ち主でも、絶対引いてたはず。

 ――でも。
 このイケメンは、人類とはちがう。「あやかし」と呼ばれる存在だ。
 ついさっき、わたしは彼が神通力と呼ぶ不思議な力を、実際に目撃してしまったのだ。近所の神社で、そして、この部屋でも!

 わたしはタヌキじゃない、普通の人間だ。

 けれども、この青年が「あやかし」だということは、その能力を直接みてしまった以上――。
 事実なのだと認めなきゃいけない。
 目のまえでくりひろげられた現象は、夢でもVRでもなかったんだから。

(アパートに引っ越してきた初日から、あやかしと遭遇なんて……。わたしの1人暮らし生活、どうなっちゃうの!?)
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