[完結]兄弟で飛ばされました

猫谷 一禾

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光の先の世界

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 ザワザワと人の気配と話し声が聞こえてくる。
夜が明けて、辺りはすっかり明るくなり太陽が空高く世界を照らしている。

(次こそは、次の気合い入れたらここを出る)

よし、よし、、、と鼻息荒く握りこぶしをギュッと握りしめ立ち上がろうとするが思うようには行かない。さっきは足が痺れてるからあと少し待とう、とかちょっと人少ないからもう少し待とう、とか言い訳を自分に向かって言い、動けずにいた。

(ゆ、優柔不断じゃないぞ…慎重派なんだ…ましてやビビりな訳では無いぞ……くそっ………あ、ちょっと覗いてみよう。そうそう、立ち上がる前に覗いてみよう)

ソロリとまたしても顔を出して覗いてみる。先程からこれをやっても誰にも気づかれていないのをいい事に少しずつ大胆に覗いてみる。

ぱちり

人と目が合ってしまった。

(ひぃっっっ!!!)

素早い動きで引っ込む。ドキドキとうるさい心臓を片手で押さえる。まさか気づかれていないだろうと、何故か慎重派の望が楽天的に考え再度覗く。石畳に両手を着いた低い位置から覗いたはずが目の前には人の顔があった。

「ひゅっ……」

声にならず、喉から変な音が出た。

「□□○●□▷◆▼◎◇□□▶◁□□??」

空いた口が塞がらなかった。
目の前の人から話しかけられたらしい。
頭にターバンのようなものを巻いて、少し眉間にシワを寄せたおじさんがしゃがみ込んでいた。鎖骨が除くほどの襟が広いTシャツみたいな服の上にペラリとしたベストを着て、下は太めのチノパンだろうか、しゃがんでいるのでよく見えない。

(やべぇ……やべぇ……な、何言ってんのか…全然分かんねぇ……こ、こここ言葉通じないとか……想像すらしてなかった……)

「あ、あのーー……」

「!!?◇▷▽◆□□○■▲▽□□●◇ッッ!!!」

(や、やばい…な、なんか口調が強い気が…)

ジロジロといかにも不審者を見る目つきで見られている。

「わ、わー…え、えーーと……」

「!!○■◇□□●◆▽▼▲□●ッ!!!?」

(お、怒ってるよ!これ怒ってるよね!?)

「に、逃げよっ」

がばりと体の向きを変え、とにかく足を動かす。カランカランと下駄の音を響かせて浴衣の前をはだけさせて足を動かす。前へ前へと

「こ、怖っ……嘘だろ…言葉が分かんないなんて」

チラリと後ろを確認してみる。まさか後を追って来ているはずが無いと念の為の確認だ。

「△□●■■◆○□□●□~~!!!!」

「うそぉーーー!!!」

振り返ったちょうどその時、叫びながら先程目が合ったおじさんが追いかけてきていた。しかも人を増やして。

「嘘嘘嘘!なんで!怖い怖い!!」

下駄で走った事などほぼ無い望は、つんのめりそうになる。

「だぁっくそっ!邪魔だ!」

走りながら下駄を脱いで手に持つ。ペタペタペタっと裸足で走る。目の前は路地の終わりのようでガヤガヤと音が大きく聞こえてくる。ダダっと明るく大きな通りに飛び出る。ザワっと一際大きく音が揺れ、行き交う人が望の方を見た。足がすくみ、周りを見渡してしまう。まるでRPGの世界のような服装の周り。ふた昔前くらいの南の国で見たような格好だ。それに比べ望は浴衣姿。かっと羞恥が襲う。

「◇■□□▲○◆▽□□~!!!」

「うわっっ!!」

勢いよく肩を捕まれ、前に倒される。手首を握られた後に捻られた。犯人を捕らえたかのような体勢にさせられた。

(つ、捕まった!!)

上から体重を掛けられ、どうやら膝で背中に乗られているようだ。

「ぐえっ……痛い……」

望が思わず零した言葉に周りが反応した。嫌な感じでザワザワとしている。

「□□▲▽◆◆○■■◇□□!」

望を押さえているおじさん2人が周りに何か言っている。意味がわからないとはこんなにも怖いことなのか。

(ヤバいって……なんだよこれ……)

走ったのと恐怖でドクドクとうるさい。瞳をキョロキョロとして周りの様子を伺う。皆、眉をひそめ良くないものを見ている雰囲気を出して、口に手を当てている人もいる。

(くっ……そ……。なんで俺がこんな目に……)

ジワリと目に涙の膜が出来てくる。
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