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光の先の世界
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望は信じられないものを見て聞いた。たった今、兄が目の前で訳の分からない言葉を喋ったのだ。
「え……え………えぇ?」
「ん?なんだ?今手当するからな。あぁ!いつまでも立ってちゃ駄目だろ…」
「え、いやいや……はぁ?」
こちらを向いた樹は普通に喋った。望は困惑しどうしだった。ため息がすぐ隣から聞こえ、またしても望は浮遊感に襲われた。
「うっお!!びっっ…くりしたぁ」
なんてことは無い、先程の男が呆れた雰囲気で望を抱き上げたのだ。これには樹も驚きを隠せず目を見開いている。
「◇●□□▲◁◇■●□□?」
「○◆◇▶◁▲●●◇□□◎▽▶□」
(喋ってる……兄ちゃんが…会話してる……)
あまりの衝撃でお姫様抱っこの姿はすんなり受けいれ、兄が聞きなれない例の訳の分からない言語を話していることにポカンとしてしまう。
「兄ちゃん……」
「ん?痛くないか?まだ俺は力が上手く使えなくて……悪いな望…」
もぅどこから突っ込んで良いのやら分からなくなる。
「何で……喋れんの?」
「え?何言ってるんだ望は…ははっ疲れたよな?少しゆっくり休まないと」
「いやいや、だから……何でこの人たちの言葉喋ってんの?なんで分かんの!?」
「望?」
よく分かっていない樹に望を抱き上げている男が話しかけた。
「■□○○◇▽◀□□」
「ッ!?■◇□□◀▽●□□□!?」
「△◆□○●●▽◀□□」
「…………望…まさか……言葉が分からないのか?」
「兄ちゃんは分かってんの?俺にはこの人たちが何言ってんのか全然分かんない…さっき、兄ちゃんがこの人と話してる言葉も…全然分かんなかった…どうなってんの?」
「……と、とりあえず…まずは怪我の手当が先だ」
「兄ちゃん」
「ことを急いては駄目だ…俺が聞くから…」
ソファーに逆戻りし今度こそ望はボンヤリと樹の顔を見ている間に足を丁寧に拭かれていた。樹は望の隣に座り後頭部に手を添える。じっと望の顔を見て心配げな表情で聞いてきた。
「何があったんだ?他にどこか痛いところとかあるか?手は?よく見せてみろ」
「うん……大丈夫だと思う…俺……とにかく訳わかんなくってさ……これ、浴衣だし…怪しい奴に見えたみたいで…ちょっと追っかけられたりとかして…んで……転んだ?みたいな…」
「望……心細かっただろ…ごめんな……」
樹がまた望をそっと抱きしめた。
本当は大丈夫な心境では無いのだが、これ以上樹に心配をかける訳にはいかず平気なふりをした。樹と会えて、泣いて、少し気分も落ち着いたので心配顔の兄を気遣えた。
「あの…所で兄ちゃん…何その格好?」
樹が生きていたと知ると今度は姿形に意識を持っていける。樹は浴衣姿ではなく、足首まであるゆったりとした服、ローブの様なものを着ていた。
「なんかさ…ゲームの魔法使いみたいな格好だね」
「あ……えと……うん……そうだね…。まずは望にこの人達を紹介してから話そうか」
(ん?……なんだ?……兄ちゃんの雰囲気が…妙じゃないか?……え…………なんかやなんだけど)
「えーと端から王の側近が1人エーズ・ミギル、魔術使いの3人がいて…高位魔術使いクラー・スンナ、魔術使いヒタム・ユー、見習いのゲンコラ・ヤイミュ、学者のタイカ・ウエンズ、最後が護衛のヨツサエ・ムシュウリ」
「お、おぉ……」
樹の後からゾロゾロとやって来た男達6人をスラスラと紹介された。
(や……肩書きの単語が……もはや厨二病…)
「はは…ちょっと、面食らうよな…流石に…」
樹も苦笑しながら頬を指先でポリポリとかく。
「◇□◀◁○●□□」
王の側近が1人エーズ・ミギルが樹に話かけた。
「●▽▶○□◆■○◇◇……望、ここが何処か…そこから話そうか…」
「う…………うん……」
「ここはね、所謂…異世界…何だそうだ……今まで俺と望が生活していた地球では無く…違う次元の世界…らしい」
「……………………は?」
「ここはドクダナ国、俺達は魔術使いに呼ばれてここに来たんだそうだ」
「え……毒?だな??」
「何故か…俺と望がバラバラにこちらに来てしまったのか分からないが……俺はこの王城の儀式の間の魔法陣…みたいな中に呼ばれたんだ……」
(え?マジ??扱い違くね?)
「俺はこの世界の黒く濁った魔の力を浄化する役目なんだ」
「いや、いやいや……いやいやいや…………ちょ、ちょっと待ってよ兄ちゃん……え?……何言ってんの?…は?え……魔術??……それ…本気?」
「あぁ……信じられないだろうが…俺は……選ばれたんだ…」
「は、はぁ!?……え、マジ何なの……ついてけないって……え、何流されちゃってんの?何すんなり言っちゃってんの!?」
「望……俺は………選ばれた、と分かるんだ」
「兄ちゃんっっ!!!」
「この地に呼ばれて……とても落ち着くんだよ…何だかしっくり来るんだ…」
「洗脳!?洗脳されてんの??マジ怖いから辞めてよ、兄ちゃん…」
望は必死に、兄にこちらを向いてほしくて樹の腕を掴んで騒いだ。兄の樹がいつも通りに戻って欲しくて、騒いだ。こちらを向いて話しているはずが、心が望を向いていないように感じたからだ。
(なんか、どっかに行っちゃうみたいじゃん)
「ねぇ、兄ちゃん?ここが……えーと異世界?何だってのは…不本意だけど……何となく理解が出来そうな…したくないけど…分かるような……うん……分かるよ。でもさ、魔術?嘘でしょ??…いや映画や漫画の中の話じゃないんだからさ…ね?」
望はどんどん不安になって来た。まず初めに樹がこの世界の人達と普通に会話をしている事が背筋に嫌なモゾモゾする感じを与えている。
「魔法とかあるよ~って言われてさ、はいそうですかーって簡単に信じられないってば…」
望は無理に笑って、縋るみたいに樹に言う。これ以上自分のキャパシティを、超えないで欲しい。ただでさえパニックなのだ、魔法やら何やら訳の分からない現実世界にない実感の無いものが、存在しているなどと言わないで欲しい。分からないものは、だいたい不安だ。分からないとは恐怖だった。
「え……え………えぇ?」
「ん?なんだ?今手当するからな。あぁ!いつまでも立ってちゃ駄目だろ…」
「え、いやいや……はぁ?」
こちらを向いた樹は普通に喋った。望は困惑しどうしだった。ため息がすぐ隣から聞こえ、またしても望は浮遊感に襲われた。
「うっお!!びっっ…くりしたぁ」
なんてことは無い、先程の男が呆れた雰囲気で望を抱き上げたのだ。これには樹も驚きを隠せず目を見開いている。
「◇●□□▲◁◇■●□□?」
「○◆◇▶◁▲●●◇□□◎▽▶□」
(喋ってる……兄ちゃんが…会話してる……)
あまりの衝撃でお姫様抱っこの姿はすんなり受けいれ、兄が聞きなれない例の訳の分からない言語を話していることにポカンとしてしまう。
「兄ちゃん……」
「ん?痛くないか?まだ俺は力が上手く使えなくて……悪いな望…」
もぅどこから突っ込んで良いのやら分からなくなる。
「何で……喋れんの?」
「え?何言ってるんだ望は…ははっ疲れたよな?少しゆっくり休まないと」
「いやいや、だから……何でこの人たちの言葉喋ってんの?なんで分かんの!?」
「望?」
よく分かっていない樹に望を抱き上げている男が話しかけた。
「■□○○◇▽◀□□」
「ッ!?■◇□□◀▽●□□□!?」
「△◆□○●●▽◀□□」
「…………望…まさか……言葉が分からないのか?」
「兄ちゃんは分かってんの?俺にはこの人たちが何言ってんのか全然分かんない…さっき、兄ちゃんがこの人と話してる言葉も…全然分かんなかった…どうなってんの?」
「……と、とりあえず…まずは怪我の手当が先だ」
「兄ちゃん」
「ことを急いては駄目だ…俺が聞くから…」
ソファーに逆戻りし今度こそ望はボンヤリと樹の顔を見ている間に足を丁寧に拭かれていた。樹は望の隣に座り後頭部に手を添える。じっと望の顔を見て心配げな表情で聞いてきた。
「何があったんだ?他にどこか痛いところとかあるか?手は?よく見せてみろ」
「うん……大丈夫だと思う…俺……とにかく訳わかんなくってさ……これ、浴衣だし…怪しい奴に見えたみたいで…ちょっと追っかけられたりとかして…んで……転んだ?みたいな…」
「望……心細かっただろ…ごめんな……」
樹がまた望をそっと抱きしめた。
本当は大丈夫な心境では無いのだが、これ以上樹に心配をかける訳にはいかず平気なふりをした。樹と会えて、泣いて、少し気分も落ち着いたので心配顔の兄を気遣えた。
「あの…所で兄ちゃん…何その格好?」
樹が生きていたと知ると今度は姿形に意識を持っていける。樹は浴衣姿ではなく、足首まであるゆったりとした服、ローブの様なものを着ていた。
「なんかさ…ゲームの魔法使いみたいな格好だね」
「あ……えと……うん……そうだね…。まずは望にこの人達を紹介してから話そうか」
(ん?……なんだ?……兄ちゃんの雰囲気が…妙じゃないか?……え…………なんかやなんだけど)
「えーと端から王の側近が1人エーズ・ミギル、魔術使いの3人がいて…高位魔術使いクラー・スンナ、魔術使いヒタム・ユー、見習いのゲンコラ・ヤイミュ、学者のタイカ・ウエンズ、最後が護衛のヨツサエ・ムシュウリ」
「お、おぉ……」
樹の後からゾロゾロとやって来た男達6人をスラスラと紹介された。
(や……肩書きの単語が……もはや厨二病…)
「はは…ちょっと、面食らうよな…流石に…」
樹も苦笑しながら頬を指先でポリポリとかく。
「◇□◀◁○●□□」
王の側近が1人エーズ・ミギルが樹に話かけた。
「●▽▶○□◆■○◇◇……望、ここが何処か…そこから話そうか…」
「う…………うん……」
「ここはね、所謂…異世界…何だそうだ……今まで俺と望が生活していた地球では無く…違う次元の世界…らしい」
「……………………は?」
「ここはドクダナ国、俺達は魔術使いに呼ばれてここに来たんだそうだ」
「え……毒?だな??」
「何故か…俺と望がバラバラにこちらに来てしまったのか分からないが……俺はこの王城の儀式の間の魔法陣…みたいな中に呼ばれたんだ……」
(え?マジ??扱い違くね?)
「俺はこの世界の黒く濁った魔の力を浄化する役目なんだ」
「いや、いやいや……いやいやいや…………ちょ、ちょっと待ってよ兄ちゃん……え?……何言ってんの?…は?え……魔術??……それ…本気?」
「あぁ……信じられないだろうが…俺は……選ばれたんだ…」
「は、はぁ!?……え、マジ何なの……ついてけないって……え、何流されちゃってんの?何すんなり言っちゃってんの!?」
「望……俺は………選ばれた、と分かるんだ」
「兄ちゃんっっ!!!」
「この地に呼ばれて……とても落ち着くんだよ…何だかしっくり来るんだ…」
「洗脳!?洗脳されてんの??マジ怖いから辞めてよ、兄ちゃん…」
望は必死に、兄にこちらを向いてほしくて樹の腕を掴んで騒いだ。兄の樹がいつも通りに戻って欲しくて、騒いだ。こちらを向いて話しているはずが、心が望を向いていないように感じたからだ。
(なんか、どっかに行っちゃうみたいじゃん)
「ねぇ、兄ちゃん?ここが……えーと異世界?何だってのは…不本意だけど……何となく理解が出来そうな…したくないけど…分かるような……うん……分かるよ。でもさ、魔術?嘘でしょ??…いや映画や漫画の中の話じゃないんだからさ…ね?」
望はどんどん不安になって来た。まず初めに樹がこの世界の人達と普通に会話をしている事が背筋に嫌なモゾモゾする感じを与えている。
「魔法とかあるよ~って言われてさ、はいそうですかーって簡単に信じられないってば…」
望は無理に笑って、縋るみたいに樹に言う。これ以上自分のキャパシティを、超えないで欲しい。ただでさえパニックなのだ、魔法やら何やら訳の分からない現実世界にない実感の無いものが、存在しているなどと言わないで欲しい。分からないものは、だいたい不安だ。分からないとは恐怖だった。
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