[完結]兄弟で飛ばされました

猫谷 一禾

文字の大きさ
9 / 80
光の先の世界

9

しおりを挟む
「望、魔法では無く魔術だそうだよ、」

「そんなのどうだっていいよっ!!そーゆー事言ってんじゃないって!」

樹と望が話していると魔術使いだと紹介された3人がコソコソと樹に話掛けている。

「□◁△■▽○◇●■……望、どうやらお前はキチンとループ…魔法陣みたいな中を通って来ていないみたいだ…だから言葉が分からないみたいなんだ」

「……知らないよ……そんな事……」

「……望?」

「ねぇ……兄ちゃん…こんなさ、訳の分からない所に来たらさ……普通は早く家に帰りたいって思うでしょ?……変だよ兄ちゃん。なんで…そんな落ち着いて……この世界がしっくり来る?何言ってんだよ……受け入れ過ぎでしょ……俺は……一刻も早く帰りたいっ」

「……望……」

「ねぇ…帰りたいでしょ?兄ちゃんも早く帰りたいよね!?」

「…………ごめん」

「……兄ちゃん……嘘でしょ?」

「ごめん望。俺はここに居る……そして…帰れないんだ……もう、元の世界には…」

「は?……え……帰れない?」

「あぁ……道は一方通行。こちらから、あちらには行けないんだそうだよ…だから最初俺は…望には二度と会えないと…そう、思っていたんだ…」

「……え……待って……ちょっと…待ってよ……え?帰れない?……え…それ、、、え?俺に会えないって……覚悟したって事?」

「あぁそうだ、ここには俺1人だけで来たと思ったから…」

「受け入れたの?……俺に会えないって?……帰れないって??」

「……………………ごめん」

「嘘でしょ……兄ちゃん……嘘だ……本当に、本物の兄ちゃん?俺に会えなくても良いって…そんな事……本当に思ったの……」

「違うよ望、会えなくで良いなんて…ただ、俺は…自分の使命を……運命を受け入れようと、そう…思ったんだよ」

「うるさいっ!!黙れよっ何言ってんだよ!!」

望が怒鳴ると周りの空気がザワついた。樹が弟だと言っていたが、乱暴な雰囲気にこの異世界の人達がピリついた。

「◇△●▽□□◆○△□□」

眉間に皺を寄せて護衛のヨツサエ・ムシュウリが樹に確認するように話しかけている。その様子を見るな否や望は更に声を荒らげた。

「うるっっさい!!訳分かんねぇ言葉で喋ってんじゃねーよ!!ふざけんなよっ!なんだよ異世界って笑えねぇよ!!運命?……はっ…何言ってんだ?兄ちゃんマジで頭どうかしたの?おかしいだろ、こんな事。認められるわけないじゃん!帰れない??俺の生活は?今までの俺の生活は?…友達は?学校は?俺の……俺の人生は?……捨てろってか?諦めろって??」

「望……」

「兄ちゃんはもぅ働いてるから…学生生活楽しんだよねっ!父さんと母さんが事故で死ぬ前だったから大学までしっかり行ってたしねっ!元の世界で楽しんでたよねっ!」

「望っ!!」

「っ!!…………くっ……」

「……確かに………直ぐには、色々と気持ちが追いつかないと思う…疲れているだろうし…少し…休みなさい」

樹が目を逸らしながら話した。

『はぁっ…』

今まで望の足の裏を綺麗にして傷に効く薬草を塗り、布を巻いていた望を連れて来た背の高い男がため息を吐いた。

「◆□○△△■○●□□」

樹に対してボソボソと話す。

「ふっ………▶△□◇◆◆○△□□…望、彼が部屋に連れて行ってくれるから……」

すっと望の肩に触れて樹はソファーから立ち上がり、一度望の方を振り返ってから

「怪我しているんだし……ゆっくりして」

そう言うと部屋を出て行ってしまった。
望は自分が失言をしたことはチャント分かっていた。じっと自分の膝を睨みつけている。

(あんなこと…言うつもりなんて無かった…酷いこと言った…俺………でも…兄ちゃんが、訳わかんないこと言うから………くそっ)

ポンポンと頭を叩かれた。望は顔を上げると目の前の男と目が合う。その男の顔は、しょうが無いなと言っているような表情だった。
既に当たり前のように抱き上げられて運ばれる。どうしても文句を言いたくなってしまう望だったが、自分ひとりだけがジタバタしている様で悔しくて、恥ずかしかったが黙って運ばれた。それに歩いたらズキズキしそうだったから、と自分を納得させた。


 やけに広い部屋に運ばれて、またソファーに下ろされる。気遣われている様に望の顔を覗き込み布を巻いた足裏を数回摩る。望はそんな事された事が無く、ドキマギしてしまう。
望を連れてきた背の高い男は部屋を見渡し望の足裏をポンポンと叩いた。

(……これ……部屋、歩けるか聞いてるのか?)

じっと男の顔を見て、望はふっと表情を弛めて頷く。2人は見つめ合う形になり男も軽く頷く。サッと立ち上がり広い部屋のソファーから少し離れたドアを開いて中を指さす。そして自分の服を摘んでまたドアの中を指さす。

(……使えって……こと…だよな?)

望は頷いておく。

「○◆□●△■□□……」

ぱしっと口を手のひらで押えて難しい顔をする男は困ったように頭に手をやり一息つく。そして頷いてから軽くお辞儀をして入ってきたドアまで歩くと手を胸に当ててお辞儀をして部屋から出ていった。

「え……出ていった……」

望はポツリと独り言を言ってボンヤリと男が出ていったドアを見た。部屋に1人残された望はひとまず部屋をぐるりと見渡して、先程指を刺されたドアの中が気になった。

(ドア開けっ放しだし…これ良いんだよな?)

ソロソロと足裏を気にしながら開いているドアに近づく。覗き込むとそこはお風呂場だった。

「あっ……そっか……俺、ドロドロ…」

納得して有難く使わせてもらう事にした。何はともあれ、知らない地で裸になるのは心もとない。しかし自分の汚れが気持ち悪く、気になっていたので浴衣を脱いでお風呂場に入った。普段見慣れたシャワーもあり驚くがどうやってお湯を出していいのか分からない。

(な、なんだよ…シャワーの使い方くらい教えてけよっ!初めて家に来た友達にもサラッと教えんだろ。つーか蛇口らしき物がないんすけど…え?これどーすんの?マジこの世界使えねーなぁ)
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...