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新たな事実
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ウキウキのガマズに連れられて、望は蔵書館にやって来た。見上げる程高くそびえ立つ重々しい扉を開けたその先は、またしても見上げる程高い本棚がズラリと並んだ部屋だった。
扉から入って左手に階段が見えて、視線を階段に沿っていくとその先にも本棚が見えた。
「うわー…確かに、凄い量…ちょっとした体育館みたいですね」
「そうでしょう、そうでしょう。しかも本日はこの水晶を持っていれば普段は結界で入れない奥にも入れるのです!正に治癒者様様です!」
「あーはは…良かったですね」
ガマズはガラスの手のひらサイズの球体を掌の上に乗せて鼻息荒く説明した。
(おぉ…水晶、何かそれっぽい)
「先ずはざっと見渡して、そして奥に行ってしまいましょう!!」
「もうめっちゃガマズさんの目的だけじゃないですか…良いですよ良いですよ、俺をダシにここに来たかったんですもんね。奥に行きましょう」
望はヤレヤレと首を振りガマズの背を押してやった。
「治癒者様、それは半分くらい違いますよ。貴方様をダシになんてっ」
「半分ってさ……」
後ろに回った望にガマズは振り返りながら慌てる。
「実は、私は使い様と治癒者様がいらっしゃった召喚後から不思議に思っている事があるのです。疑問に思った事があるとジッとしていられないタチでして…」
グイグイとガマズの背を押しながら答える望。
「疑問……ですか……」
「はい!大きな声では言えないのですが……この王城、強いては城下の街までの雰囲気です!」
「俺は外出ないから……」
(軟禁状態だからね……)
「治癒者様も感じておられるのでは無いですか?不遜な雰囲気を。この王城内での」
「えーーまさか……俺に対しての?」
「その通りです!おかしいと思いませんか!?今でこそ治癒者様ですが、何と言ったって使い様の弟君ですよ??大体にして位の高い方は横柄なものです………貴族然とした態度なのです」
(この人学者のくせに言葉のチョイスが…失言が多いな…政治家みたいだ……)
「はぁ……」
「んんっつまり、治癒者様の態度は別に避難される事は無いはずです。しかもですよ?治癒者様の態度は何というか…可愛らしい、若者らしい態度です。それなのに、揃いも揃っていい大人がコソコソと悪く言うのです。期待値が高すぎてって事もある事はあるかもしれませんが…それにしたって……」
そうこう言っているうちに結界で立ち入り禁止になっている奥まった場所まで来た。目の前に厚いガラスがあるような感覚で、この先には進めないなと分かる雰囲気だ。
「ここですか?結界ってやつ」
「はい!この水晶に魔力を流します。すると輝き出すので、この結界に触れさせると……」
ボヤーっと淡く光っていた水晶の光が徐々に強くなり、ガマズが厚いガラスのような結界に触れさせると、触れた箇所から穴が空いた様に向こう側がクッキリと見え始め、人1人通れるほどの穴が広がった。
「これで通れます。いよいよですね、行きましょう!」
「おぉ…本当にそれっぽい」
「あぁ……治癒者様……ご覧下さい……そして、体感しましょう……この古い紙独特の匂い!インクの香り!最高だぁ……何から手をつけましょうか……」
結界の抜けた先、普段何者も立ち入らない空間にウットリとしながらグルリと辺りを見渡すガマズ。
望も一目見て歴史を感じさせる書物がズラリと並んでいる光景に圧倒された。
「これは……凄いですね。俺なんかが見ていいんですかね…たいして価値とか分からないですよ」
「問題ありません!治癒者様なんですから!歴史に名を連ねるお方なんですよ!貴方様はっ」
「はぁ…そうでしたね」
どうしたって他人事のような気がしてならない望は気のない返事になってしまう。
ガマズはヨダレを垂らさんばかりの勢いでギョロギョロと書物を見ては恐る恐る手に取る、を繰り返していた。
「さっきの話、なんですけど…その、ガマズさんは…さっきみたいな言い方をしたってことは、俺の事……別に敵みたく思ってないって事ですか?」
「え?…………そうです。そう……敵…ですか……。なるほど……不思議な事なんですよ、本当に。私以外は皆が本当に治癒者様の事を良く思っていないんですよ…何故だか。失礼、悪く取らないで下さい」
「いや、いいですよ…俺が聞いたんだし。え、でもガマズさん以外全員って事なんですか?」
「そうなんです!」
急にガマズが望に向かって勢いよく振り返った。
「普通に考えておかしいでしょ!?魔物や何か、極悪人て訳でも無いのに皆が皆、全員ですよ?有り得ますか??」
「そー…ですね…確かに、それは変かも、しれないですね」
「そこでですね…………」
ガマズが誰もいないにも関わらずキョロキョロと辺りを見回し、声を抑えて話し出した。
「私はこの水晶とは別に、いつも持っている私専用の水晶を常に肌身離さず持っている癖がありましてね…いや、恨み妬みは怖いですからね。何か魔法を掛けられないようにと、直接攻撃とかでは無く暗示などの魔法を弾く水晶を持っているんですよ」
「はい」
「そんな私は治癒者様の事を悪く思っていません」
「……え?」
「加えて、一時この城を離れていたアウロン様も治癒者様の事を悪く言っていません。いや好いています」
「お、おぉ…はい………で、つまり?」
「つまりですね…この王城、もしかしたらこの城下の街までも何らかの暗示魔法が掛けられているのでは…と疑っています」
扉から入って左手に階段が見えて、視線を階段に沿っていくとその先にも本棚が見えた。
「うわー…確かに、凄い量…ちょっとした体育館みたいですね」
「そうでしょう、そうでしょう。しかも本日はこの水晶を持っていれば普段は結界で入れない奥にも入れるのです!正に治癒者様様です!」
「あーはは…良かったですね」
ガマズはガラスの手のひらサイズの球体を掌の上に乗せて鼻息荒く説明した。
(おぉ…水晶、何かそれっぽい)
「先ずはざっと見渡して、そして奥に行ってしまいましょう!!」
「もうめっちゃガマズさんの目的だけじゃないですか…良いですよ良いですよ、俺をダシにここに来たかったんですもんね。奥に行きましょう」
望はヤレヤレと首を振りガマズの背を押してやった。
「治癒者様、それは半分くらい違いますよ。貴方様をダシになんてっ」
「半分ってさ……」
後ろに回った望にガマズは振り返りながら慌てる。
「実は、私は使い様と治癒者様がいらっしゃった召喚後から不思議に思っている事があるのです。疑問に思った事があるとジッとしていられないタチでして…」
グイグイとガマズの背を押しながら答える望。
「疑問……ですか……」
「はい!大きな声では言えないのですが……この王城、強いては城下の街までの雰囲気です!」
「俺は外出ないから……」
(軟禁状態だからね……)
「治癒者様も感じておられるのでは無いですか?不遜な雰囲気を。この王城内での」
「えーーまさか……俺に対しての?」
「その通りです!おかしいと思いませんか!?今でこそ治癒者様ですが、何と言ったって使い様の弟君ですよ??大体にして位の高い方は横柄なものです………貴族然とした態度なのです」
(この人学者のくせに言葉のチョイスが…失言が多いな…政治家みたいだ……)
「はぁ……」
「んんっつまり、治癒者様の態度は別に避難される事は無いはずです。しかもですよ?治癒者様の態度は何というか…可愛らしい、若者らしい態度です。それなのに、揃いも揃っていい大人がコソコソと悪く言うのです。期待値が高すぎてって事もある事はあるかもしれませんが…それにしたって……」
そうこう言っているうちに結界で立ち入り禁止になっている奥まった場所まで来た。目の前に厚いガラスがあるような感覚で、この先には進めないなと分かる雰囲気だ。
「ここですか?結界ってやつ」
「はい!この水晶に魔力を流します。すると輝き出すので、この結界に触れさせると……」
ボヤーっと淡く光っていた水晶の光が徐々に強くなり、ガマズが厚いガラスのような結界に触れさせると、触れた箇所から穴が空いた様に向こう側がクッキリと見え始め、人1人通れるほどの穴が広がった。
「これで通れます。いよいよですね、行きましょう!」
「おぉ…本当にそれっぽい」
「あぁ……治癒者様……ご覧下さい……そして、体感しましょう……この古い紙独特の匂い!インクの香り!最高だぁ……何から手をつけましょうか……」
結界の抜けた先、普段何者も立ち入らない空間にウットリとしながらグルリと辺りを見渡すガマズ。
望も一目見て歴史を感じさせる書物がズラリと並んでいる光景に圧倒された。
「これは……凄いですね。俺なんかが見ていいんですかね…たいして価値とか分からないですよ」
「問題ありません!治癒者様なんですから!歴史に名を連ねるお方なんですよ!貴方様はっ」
「はぁ…そうでしたね」
どうしたって他人事のような気がしてならない望は気のない返事になってしまう。
ガマズはヨダレを垂らさんばかりの勢いでギョロギョロと書物を見ては恐る恐る手に取る、を繰り返していた。
「さっきの話、なんですけど…その、ガマズさんは…さっきみたいな言い方をしたってことは、俺の事……別に敵みたく思ってないって事ですか?」
「え?…………そうです。そう……敵…ですか……。なるほど……不思議な事なんですよ、本当に。私以外は皆が本当に治癒者様の事を良く思っていないんですよ…何故だか。失礼、悪く取らないで下さい」
「いや、いいですよ…俺が聞いたんだし。え、でもガマズさん以外全員って事なんですか?」
「そうなんです!」
急にガマズが望に向かって勢いよく振り返った。
「普通に考えておかしいでしょ!?魔物や何か、極悪人て訳でも無いのに皆が皆、全員ですよ?有り得ますか??」
「そー…ですね…確かに、それは変かも、しれないですね」
「そこでですね…………」
ガマズが誰もいないにも関わらずキョロキョロと辺りを見回し、声を抑えて話し出した。
「私はこの水晶とは別に、いつも持っている私専用の水晶を常に肌身離さず持っている癖がありましてね…いや、恨み妬みは怖いですからね。何か魔法を掛けられないようにと、直接攻撃とかでは無く暗示などの魔法を弾く水晶を持っているんですよ」
「はい」
「そんな私は治癒者様の事を悪く思っていません」
「……え?」
「加えて、一時この城を離れていたアウロン様も治癒者様の事を悪く言っていません。いや好いています」
「お、おぉ…はい………で、つまり?」
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