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新たな事実
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「…………にほんご……ですか?……それは…治癒者様の世界の言葉…でしょうか……」
「そう、俺の国の言葉。めちゃ読める……しかも、これ…こんなとこに保管されてるような感じの文章じゃ無い」
「歴代のどなたかの使い様が書き記した物でしょうか?……何故ここにあるのでしょう……おかしいですね」
「え?貴重なものだからここに有るんじゃないんですか?」
「まさか!使い様関連の物は全て使い様専用の場に厳重に保管されていますよ!ちょっと頼めば見せてもらえるという事など、有り得ません!」
「じゃあ、なんでこれはここに有るんだよ」
「だから……おかしいんです…」
「だって、これ……これさ」
望はオロオロと視線を彷徨かせてから口を閉じてしまった。
「治癒者様、私には読めません。ここに来た目的のためにも内容を教えて頂けないでしょうか?」
「これ?……え、いいのかな…何か罪悪感が…」
「大丈夫です!」
根拠のない返事に少々怯む望だったが意を決して内容をガマズに伝えた。
「あのさ、何か見ちゃいけない気がするんだけど、俺一人の判断じゃあれだから……えーと…」
「治癒者様、お早く!まどろっこしいです」
「はいはい、えーと。つまり……なんて言うか……凄く悪い言い方の……」
「はい!何ですか!?」
「愚痴」
「ん?」
「だから、愚痴だって。人の日記盗み見してる感覚?ってのかな……その、言い回しが、口汚いって言うか……これ、書いた人……使い様?なのかな」
「例えば?」
「んーと……“とにかく奴ら全員死ね”……とか…“呪ってやる”……とか…後はー“ふざけんな、地獄に落ちやがれクソジジイ”…とかですね」
「お、おおお…それは、確かに口汚いと……歴代の使い様は今代の使い様同様、物腰柔らかい方というのが共同認識にあるのですよ。使い様という存在は神にも近しい、素晴らしい人格者である、と」
「まさに兄ちゃんだ」
「はい、なので治癒者様のお噂には少々驚いた事も事実ですが…私なんかは恐れ多くも親しみを感じてしまいました。同じ人間であるな~と」
「……良い意味だと思っておきます」
「あの…失礼ながら、今仰った言葉は……つまり…治癒者様に通じるというか…」
「俺が言いそうだよな、うん。自分でも分かる」
「どなたが書いたものか……」
「しかもさ、これ殴り書きって…分かります?」
「はい。言おうとしていることは分かります。斜めに乱雑に書かれていますね」
「そうなんですよ。相当ムカつきながら書いたっぽくて、恨みも深そうっていうか…あ、ちょっと待って……え?」
「何ですか?」
「ガマズさん、歴代の使い様の中に王城を追放された方っていますか?」
「使い様を追放!?そんな馬鹿なっ!」
「でも、ページをめくってみてここに“アイツら遂にやりやがる気だ、俺を城から放り出す気だ”って書いてあります。それから……“ここに残していく、この世界の奴らはクソだ。絶対に許さない。後悔させてやる“だって。うへー怖いな……」
望の隣でガマズがブルブルと震え出した。
「え?ガマズさん?ちょっと大丈夫ですか?」
「ち、ちちち治癒者様……は、大丈夫……なのですか?……わた、私は……足元から……這い上がる、ような……恐怖が……身体が……震えて……」
「え!?そんなに怖いですか?」
「ちが……その、しょ、書物から……何か」
「……これ?これから?」
望は日本語で書かれた小ぶりの本を手に取って表紙と裏表紙と何度か往復して見てみる。
「…えー……特に何とも無いですけど……何か出てますか?魔力的な何かとか?」
まだブルブルと震えるガマズに首を傾げながら望は試しに魔力を本に流してみた。
「あっ!治癒者様っ!!そんな無謀なことっ」
望が本に魔力を流した途端に持っている手から何かが入り込んで全身に広がった感覚がした。それは一瞬の出来事で温かいような冷たいような空気が全身を走った気がした。
「おわっ……何だ?これ」
「あ、あ、貴方という方は!!何をされているのですか!!」
(えーめっちゃ怒ってるじゃん)
「不用意に怪しげなものに、魔力を流すなんて!!死ぬ気ですかっ!」
「し、死ぬ?え?そんなこと?」
「アウロン様から教わりませんでしたか!?魔力を流すと言うことは、そのものと繋がるということだと!邪悪なものと繋がってしまったかもしれないのですよ!不浄な魔力が治癒者様に入り込んだりしたらどうするのですかっ!」
「あー言ってた……かも?」
望は何となくやった事で、言うなれば蛇口を捻って水を出す感覚だった。たかだかの自分何ぞが魔力を無機質な本にチラッと流したからといって何か起こるはずがないと思っていた。
よく分からない引き出しを取り敢えず引きてみる、そんな感じだった。
「何か!?変わったところは!?お身体は??」
「ガマズさん、震え止まりましたね」
「呑気に言ってる場合ではありません!これはアウロン様に要報告です!まさか治癒者様がこんなに無防備だとはっ!このガマズ、不覚です!治癒者様のことを甘くみすぎていました!成る程!!アウロン様も過保護になる訳です!!」
「随分な言われようっすね、俺。何とも無いですよ?大丈夫だったんじゃないですか?」
「キーーー!分かっていませんね!そうか、これが異世界から来た方の感覚かっ!魔力を恐ろしいと分かっていない!」
ガマズが地団駄を踏んで頭を掻きむしる。この世界の常識が異世界から来た望達にすぐ順応しろというのは土台無理な話なのだ。
「そう、俺の国の言葉。めちゃ読める……しかも、これ…こんなとこに保管されてるような感じの文章じゃ無い」
「歴代のどなたかの使い様が書き記した物でしょうか?……何故ここにあるのでしょう……おかしいですね」
「え?貴重なものだからここに有るんじゃないんですか?」
「まさか!使い様関連の物は全て使い様専用の場に厳重に保管されていますよ!ちょっと頼めば見せてもらえるという事など、有り得ません!」
「じゃあ、なんでこれはここに有るんだよ」
「だから……おかしいんです…」
「だって、これ……これさ」
望はオロオロと視線を彷徨かせてから口を閉じてしまった。
「治癒者様、私には読めません。ここに来た目的のためにも内容を教えて頂けないでしょうか?」
「これ?……え、いいのかな…何か罪悪感が…」
「大丈夫です!」
根拠のない返事に少々怯む望だったが意を決して内容をガマズに伝えた。
「あのさ、何か見ちゃいけない気がするんだけど、俺一人の判断じゃあれだから……えーと…」
「治癒者様、お早く!まどろっこしいです」
「はいはい、えーと。つまり……なんて言うか……凄く悪い言い方の……」
「はい!何ですか!?」
「愚痴」
「ん?」
「だから、愚痴だって。人の日記盗み見してる感覚?ってのかな……その、言い回しが、口汚いって言うか……これ、書いた人……使い様?なのかな」
「例えば?」
「んーと……“とにかく奴ら全員死ね”……とか…“呪ってやる”……とか…後はー“ふざけんな、地獄に落ちやがれクソジジイ”…とかですね」
「お、おおお…それは、確かに口汚いと……歴代の使い様は今代の使い様同様、物腰柔らかい方というのが共同認識にあるのですよ。使い様という存在は神にも近しい、素晴らしい人格者である、と」
「まさに兄ちゃんだ」
「はい、なので治癒者様のお噂には少々驚いた事も事実ですが…私なんかは恐れ多くも親しみを感じてしまいました。同じ人間であるな~と」
「……良い意味だと思っておきます」
「あの…失礼ながら、今仰った言葉は……つまり…治癒者様に通じるというか…」
「俺が言いそうだよな、うん。自分でも分かる」
「どなたが書いたものか……」
「しかもさ、これ殴り書きって…分かります?」
「はい。言おうとしていることは分かります。斜めに乱雑に書かれていますね」
「そうなんですよ。相当ムカつきながら書いたっぽくて、恨みも深そうっていうか…あ、ちょっと待って……え?」
「何ですか?」
「ガマズさん、歴代の使い様の中に王城を追放された方っていますか?」
「使い様を追放!?そんな馬鹿なっ!」
「でも、ページをめくってみてここに“アイツら遂にやりやがる気だ、俺を城から放り出す気だ”って書いてあります。それから……“ここに残していく、この世界の奴らはクソだ。絶対に許さない。後悔させてやる“だって。うへー怖いな……」
望の隣でガマズがブルブルと震え出した。
「え?ガマズさん?ちょっと大丈夫ですか?」
「ち、ちちち治癒者様……は、大丈夫……なのですか?……わた、私は……足元から……這い上がる、ような……恐怖が……身体が……震えて……」
「え!?そんなに怖いですか?」
「ちが……その、しょ、書物から……何か」
「……これ?これから?」
望は日本語で書かれた小ぶりの本を手に取って表紙と裏表紙と何度か往復して見てみる。
「…えー……特に何とも無いですけど……何か出てますか?魔力的な何かとか?」
まだブルブルと震えるガマズに首を傾げながら望は試しに魔力を本に流してみた。
「あっ!治癒者様っ!!そんな無謀なことっ」
望が本に魔力を流した途端に持っている手から何かが入り込んで全身に広がった感覚がした。それは一瞬の出来事で温かいような冷たいような空気が全身を走った気がした。
「おわっ……何だ?これ」
「あ、あ、貴方という方は!!何をされているのですか!!」
(えーめっちゃ怒ってるじゃん)
「不用意に怪しげなものに、魔力を流すなんて!!死ぬ気ですかっ!」
「し、死ぬ?え?そんなこと?」
「アウロン様から教わりませんでしたか!?魔力を流すと言うことは、そのものと繋がるということだと!邪悪なものと繋がってしまったかもしれないのですよ!不浄な魔力が治癒者様に入り込んだりしたらどうするのですかっ!」
「あー言ってた……かも?」
望は何となくやった事で、言うなれば蛇口を捻って水を出す感覚だった。たかだかの自分何ぞが魔力を無機質な本にチラッと流したからといって何か起こるはずがないと思っていた。
よく分からない引き出しを取り敢えず引きてみる、そんな感じだった。
「何か!?変わったところは!?お身体は??」
「ガマズさん、震え止まりましたね」
「呑気に言ってる場合ではありません!これはアウロン様に要報告です!まさか治癒者様がこんなに無防備だとはっ!このガマズ、不覚です!治癒者様のことを甘くみすぎていました!成る程!!アウロン様も過保護になる訳です!!」
「随分な言われようっすね、俺。何とも無いですよ?大丈夫だったんじゃないですか?」
「キーーー!分かっていませんね!そうか、これが異世界から来た方の感覚かっ!魔力を恐ろしいと分かっていない!」
ガマズが地団駄を踏んで頭を掻きむしる。この世界の常識が異世界から来た望達にすぐ順応しろというのは土台無理な話なのだ。
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