[完結]兄弟で飛ばされました

猫谷 一禾

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新たな事実

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「何を…するのでしょうか?」

望は恐る恐る聞いた。

「ふぅ……身構えなくて大丈夫ですよ、私の魔力を望様に流します。まずそれで淀みなく魔力が流れるかどうか確認します」

「あ、そういうこと……何ですね」

明らかにホッとしたような様子の望。

「………まずは手を」

両手を差し出したアウロンの掌に、自分の手を重ねる望はちょっと照れ臭かった。

「それでは私の手に集中していただく為に目を閉じてください」

「はい、お願いします」

望が目を閉じると掌からホカホカと温かさが伝わってきた。それは手から伝わり瞬くうちに肩まで到着し、頭と胴体に枝割れるように広がりお腹、足へと伝わっていった。全身が程よくホカホカと温かくボンヤリとしてくる。

「ふむ………引っ掛かりや、澱みは感じられませんね。綺麗な望の魔力が感じられるな」

「んんー何か、このまま寝てもいいかも」

「では次に全身のチェックだ」

望はボンヤリしていたので気が付かなかった。アウロンがいつもの言葉遣いと変わっていることに。
ポツポツとボタンを外され、肩から上着を脱がされる。望がおや?と思った時には既に肌着を脱がされた後だった。

「へ?アウロンさん?」

「だから、今から全身のチェックをする」

「あ、アウロン……さん?」

いつもの雰囲気と違う様だとやっと気が付いた望だったが、遅かった。

「え?何?もう魔力流して問題無かったんですよね?」

「体の中を巡る魔力に関してはな、だが肌に何かの文字やループ、印などないか確認しないと」

「え?印??……肌に?」

だから服を脱がすのは至極当然とズボンにも手が掛かる。

「わっ……え、だい、大丈夫です!俺自分で鏡で見てきますし、えーとアウロンさん?」

「見逃しがあったら一大事だ」

(ひ、ひぇぇ~まさか、まだお怒り中なの?)

「前、お腹とか自分で見ます!だから背中、背中お願いします!」

「背中……」

クルリとアウロンに向かって背中を差し出す。
望はアタフタと腕やら腹などを見てみる。

「あー無い。無いですよー。腕も無いなぁ。腹もいつもと同じ、見たまんまだしぃ」

好きだ惚れたと言ってくる相手に素肌を晒すなど、恋愛経験のない望にとっては地獄の恥ずかしさだ。例え、立派な理由が有ったとしてもだ。

「望の背中は綺麗だな……ん?ここ」

アウロンの指が望の肩甲骨辺りをスーッと撫でた。

「ひっ!!」

「あぁ、これは黒子か……」

真っ赤になって固まってしまった望は背中を相手に差し出す危険性をやっと理解した。

(ヤバい、これヤバいやつじゃね?)

すると背中の真ん中辺りに生暖かい空気を感じた。

「近くで見ないと……」

(へ?へ?まさか、これって……息が当たってんの?アウロンさんの?俺の背中に??)

「あ、あ、あ、アウロンさん……ちょっと……ちょっ~~と……くすぐったい……です」

「命に関わるかもしれない。そんなくすぐったいなどと言っている場合ではない」

「え、えぇー……」

すり、すりすり……

(え!?撫でてない?肌、撫でてない!?)

「綺麗で、滑らかで…匂いも……」

「も、ももも目的、変わってませんよね?」

アウロンは無言で望の背中を撫で続けた。時折、手では無い感触がする時は生暖かい空気も感じる。アウロンの鼻先が当たっている時だ。
望はパニックになる一歩手前だった。背中を撫で回される経験など、もちろん皆無である。このままじっとしているのが良いのか、何か言って止めてもらった方が良いのか、はたして止めてもらえるのか分からなかった。

フニッ

「え………………」

「はぁ…望……望……」

(これ、これ、唇じゃ……)

遂に望は顔面蒼白になってしまった。

「アウロンさん!!ごめんなさいって!反省してます!!ちゃんと話聞きますからっ」

ガシッと素肌の両肩を掴まれた。肩にアウロンの髪が落ちてきて額を埋めてくる。

「本当に分かっているのですか?」

「アウロンさん……」

「もし、本当に危ない書物だったら…」

肩を掴んでいたアウロンの手が望の前に回ってきて後ろから抱き締められた。

(わぁっわぁっ……これ、ドキドキ聞こえるっ)

「望、すまない…ちょっと今回は、無理だ」

バッと顔を上げたアウロンは望の唇に自分の唇を重ねてきた。後ろから覆い被さるように口付けられたのだ。

「望、頼む…危ないことは……止めてくれ」

再度アウロンの唇は望の唇に押し当てられる。唇と唇が重なるとこんなにも柔らかさを感じるのか、と思ってしまった望は遅らせながら顔が熱くなる。

「んっ!んんっ!!」

どう動いて良いのか分からない望はモゾモゾと体を動かすだけになってしまっていた。

「愛おしいんだ。望が、どうしても手に入れたいんだ。この存在を」

切ない表情で熱く、熱く訴えてくるアウロン。
ぎゅうっとまた抱き締められて、望までよく分からない感情に支配され目に涙が集まってくる。

(どうしよう……これ、どうしたらいいんだよ…)

「望……この温もり…ずっと感じていたい。駄目か?望……俺では…駄目か?守りたいんだ、ずっと…この先もずっと…」

抱き締められているからこそ分かる、アウロンの肩が震えていた。望は何とか涙を零さないように目に力を入れた。今、自分が泣くのは違う気がした。
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