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命をかけて
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王都に向けて馬車の一行が駆け抜ける。馬車の周りには騎士が馬に乗り並行している。何時もより幾分か速く感じる。
「アウロンさん、王城はどうでしょうか…」
「そうですね…もしかしたら…楽観視できないかもしれないですね…身体は大丈夫ですか?」
「え!?だ、だだ大丈夫ですよ?治癒の力が戻りましたし、自分にも使えるの知ってるでしょ??」
馬車の中は望とアウロンとガマズが座っていた。望はアウロンの発言にガマズを気にしながら言った。
望たちは樹が出発してから半日経ってから街を出た。アウロンが乗り気ではなかったが、そこは望の樹を心配する気持ちをくんで出発するに至った。
「力がお戻りになったのですね……あの…これは……私が口を挟む事では…無いのでしょうが……その…あまりにも…おふたりの…その……甘い雰囲気と言いましょうか…」
「え!?な、なに!?ガマズさんなんか言ったぁ??」
「……いえ。何でもございません。その、例の黒い靄の影響は…本当に大丈夫なのですか?」
「あぁ、それは大丈夫。望様からは黒い靄は抜けている。完璧に」
満足そうに答えるアウロン。その顔を見てガマズは言葉を飲み込む。
(何したんだこの人…。黒い靄を治癒や浄化でなくどうやったら完璧に抜けたと言いきれるんだ…。しかもこの2人は明らかに何かあっただろ…どこまでやったんだよアウロン様…)
ガマズは視線だけ動かして2人のやり取りを観察するしか出来なくなる。いつもアウロンは望に対して距離が近いが、今日は距離が近いというレベルでなく、くっついていない所はどこだ?と探さなければ見つからないほどの距離。つまりピッタリくっついている。
(これは…私はこの馬車で無い方が良さそうだ…)
休憩の時にでも何とか魔術使いたちが乗る馬車に乗せてもらおうと心に決めるガマズだった。
「あの、ガマズさん…王城で発生した黒い靄は、どうやらあの本からみたいなんだ」
「え!?どこでその情報を!?」
「あーえと…本人?から」
「は?本人?ですか?」
何を言っているんだと思わず言いそうになったが、何とか飲み込んだ。言うに事欠いて本人だと望は言った。
「ガマズさんだから言うんだけど…良いよね?アウロンさん。あの、何とか俺の体から靄を出した時に…俺は黒い靄になってしまった本人と話をしたんだ。その時にあの本は恨みの塊だって、気をつけろよって言われて。で、この騒ぎだから…」
「な、なるほど……どうやって黒い靄を体から出したか気になりますが、聞いては行けない空気なので聞きません。人間が黒い靄になったのですね。確かに魔力という物は人の気持ちに大きく影響されるものです。あまりに強い恨みならあるいは…なるほど…」
アウロンが望に何かをしたのだろうと予想は出来たが、まさか体の関係を最後までしたとは思っていないガマズは後でこっそりどちらかに聞こうと思っていた。
「懸念すべきことは、恨みの矛先です。王家に強い恨みがあるようだが…使い様も恨んでいるとは…思えませんか?どうにも…黒い靄だった人の話し方が…気になっていまして」
「え……」
望は心臓がひゅっとした気がした。
「使いの野郎って言っていたんですよ?しかも今回の森で使い様が浄化をされて、それで黒い靄が大量に発生した、と聞きました。おかしいですよね?」
アウロンは言いながら、本当は望を王城に連れて行きたくなかった。この街での一件から樹と望も近付かせたくなかった。望のことを第一に考えれば少しでも危険のある場所に連れて行きたくないのは当たり前である。しかし望は樹を物凄く心配している、その気持ちを無視することも出来なかった。
「魔力と魔力は繋がる…だから浄化と黒い靄が触れたら繋がった!?ん?でも浄化も出来ますよね?んん?どういう事ですか?アウロン様」
「想いの強さ……恨みの強さ……またはその場所…とか……ですかね?」
「兄ちゃん……これ、早く行った方が良いんですよね?大丈夫かな…」
「すみません。不安を煽るつもりはなかったのですが…しかし…現状を少しは知っていないと…望様には正しい目を持って欲しいのです。それに、私が望様を必ずお守りいたしますので」
「アウロンさん…………」
アウロンは望の両手を握り締め、熱く語る。
「あーー…私も居ますので……それ以上は控えてくださいね…」
「わっわっ……それ以上!?な、何を言ってるんでしょうか!?はは…」
「……望様、後…王城に行きますよ。この意味、お分かりになりますよね?この国の王座に君臨する……」
「ん…分かってる……」
グッと眉間に皺を寄せ強く頷く望。望に対してした事だけでもむかっ腹が立つが、黒い靄になってしまったあの人の気持ちも自分が引き継いだと勝手に思っている望は、もはや王城は王家は…特に王様は敵である。
「何かさ、やられっぱなしは腹立ちますよね…何かさこう、一泡吹かせられないかな…」
「危険なことは辞めてくださいね?望様」
「え?……あ、はい……」
ちょっと調子に乗ってしまったかもしれない。アウロンの笑顔が怖かった。王都はもうすぐである。ガマズの希望する休憩はむかえること無く着いてしまいそうだ。
「アウロンさん、王城はどうでしょうか…」
「そうですね…もしかしたら…楽観視できないかもしれないですね…身体は大丈夫ですか?」
「え!?だ、だだ大丈夫ですよ?治癒の力が戻りましたし、自分にも使えるの知ってるでしょ??」
馬車の中は望とアウロンとガマズが座っていた。望はアウロンの発言にガマズを気にしながら言った。
望たちは樹が出発してから半日経ってから街を出た。アウロンが乗り気ではなかったが、そこは望の樹を心配する気持ちをくんで出発するに至った。
「力がお戻りになったのですね……あの…これは……私が口を挟む事では…無いのでしょうが……その…あまりにも…おふたりの…その……甘い雰囲気と言いましょうか…」
「え!?な、なに!?ガマズさんなんか言ったぁ??」
「……いえ。何でもございません。その、例の黒い靄の影響は…本当に大丈夫なのですか?」
「あぁ、それは大丈夫。望様からは黒い靄は抜けている。完璧に」
満足そうに答えるアウロン。その顔を見てガマズは言葉を飲み込む。
(何したんだこの人…。黒い靄を治癒や浄化でなくどうやったら完璧に抜けたと言いきれるんだ…。しかもこの2人は明らかに何かあっただろ…どこまでやったんだよアウロン様…)
ガマズは視線だけ動かして2人のやり取りを観察するしか出来なくなる。いつもアウロンは望に対して距離が近いが、今日は距離が近いというレベルでなく、くっついていない所はどこだ?と探さなければ見つからないほどの距離。つまりピッタリくっついている。
(これは…私はこの馬車で無い方が良さそうだ…)
休憩の時にでも何とか魔術使いたちが乗る馬車に乗せてもらおうと心に決めるガマズだった。
「あの、ガマズさん…王城で発生した黒い靄は、どうやらあの本からみたいなんだ」
「え!?どこでその情報を!?」
「あーえと…本人?から」
「は?本人?ですか?」
何を言っているんだと思わず言いそうになったが、何とか飲み込んだ。言うに事欠いて本人だと望は言った。
「ガマズさんだから言うんだけど…良いよね?アウロンさん。あの、何とか俺の体から靄を出した時に…俺は黒い靄になってしまった本人と話をしたんだ。その時にあの本は恨みの塊だって、気をつけろよって言われて。で、この騒ぎだから…」
「な、なるほど……どうやって黒い靄を体から出したか気になりますが、聞いては行けない空気なので聞きません。人間が黒い靄になったのですね。確かに魔力という物は人の気持ちに大きく影響されるものです。あまりに強い恨みならあるいは…なるほど…」
アウロンが望に何かをしたのだろうと予想は出来たが、まさか体の関係を最後までしたとは思っていないガマズは後でこっそりどちらかに聞こうと思っていた。
「懸念すべきことは、恨みの矛先です。王家に強い恨みがあるようだが…使い様も恨んでいるとは…思えませんか?どうにも…黒い靄だった人の話し方が…気になっていまして」
「え……」
望は心臓がひゅっとした気がした。
「使いの野郎って言っていたんですよ?しかも今回の森で使い様が浄化をされて、それで黒い靄が大量に発生した、と聞きました。おかしいですよね?」
アウロンは言いながら、本当は望を王城に連れて行きたくなかった。この街での一件から樹と望も近付かせたくなかった。望のことを第一に考えれば少しでも危険のある場所に連れて行きたくないのは当たり前である。しかし望は樹を物凄く心配している、その気持ちを無視することも出来なかった。
「魔力と魔力は繋がる…だから浄化と黒い靄が触れたら繋がった!?ん?でも浄化も出来ますよね?んん?どういう事ですか?アウロン様」
「想いの強さ……恨みの強さ……またはその場所…とか……ですかね?」
「兄ちゃん……これ、早く行った方が良いんですよね?大丈夫かな…」
「すみません。不安を煽るつもりはなかったのですが…しかし…現状を少しは知っていないと…望様には正しい目を持って欲しいのです。それに、私が望様を必ずお守りいたしますので」
「アウロンさん…………」
アウロンは望の両手を握り締め、熱く語る。
「あーー…私も居ますので……それ以上は控えてくださいね…」
「わっわっ……それ以上!?な、何を言ってるんでしょうか!?はは…」
「……望様、後…王城に行きますよ。この意味、お分かりになりますよね?この国の王座に君臨する……」
「ん…分かってる……」
グッと眉間に皺を寄せ強く頷く望。望に対してした事だけでもむかっ腹が立つが、黒い靄になってしまったあの人の気持ちも自分が引き継いだと勝手に思っている望は、もはや王城は王家は…特に王様は敵である。
「何かさ、やられっぱなしは腹立ちますよね…何かさこう、一泡吹かせられないかな…」
「危険なことは辞めてくださいね?望様」
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ちょっと調子に乗ってしまったかもしれない。アウロンの笑顔が怖かった。王都はもうすぐである。ガマズの希望する休憩はむかえること無く着いてしまいそうだ。
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