さがしもの

猫谷 一禾

文字の大きさ
4 / 46
少年のころ

《4》



 里葉は武藤の秘書から色々と説明されたが、正直よく分からなかった。親の財産を里葉が成人するまで預かると言う話で決着した。生活で困ることがあれば何でも言って欲しい、我慢をして欲しくないと言われた。心配はとてもされていて、今までより学校が遠くなってしまったので車で送ってもらうことになった。

「おい、あれ森じゃね?」
「あ、本当だ」
「なんだあれ?車で学校来んのかよ」
「しかも超高そう。親いなくなったから孤児じゃねぇの?なんで金持ちになってんの?」

子供の感想とは直接的で悪意が悪意として認識されにくい。自分自身が中心の考えの子が多く、人の見える部分で全てを判断してしまう。里葉は小さく、目立つ性格でもなく、どちからというとからかいの対象だった。下に見ていた同級生がいきなり高級車で登校してきたのだ。

「おはよ、森くん。大丈夫?」
「凄い車で来てたね!どうしたの?」
「…おはよ……お世話になってる家が遠くなって」

女子という生き物は、中でも自分に自信のある子は時にズケズケと踏み込んでくる。

「え~!引っ越したんだぁ…そうだよねぇ」
「今はお金持ちのお家に住んでるの?」
「え……そう、なのかな……」
「すごーい!」

今までとの扱いの差に面食らってしまう里葉。

「おい、お前車で来るってずりぃよ!」
「しょうがなくね?こいつ今は哀しいんだろ?」
「あー可哀想な子だもんな」

唇を噛み締めて俯く、”辞めなさいよ男子”と出しゃばりの女の子が言い”そーよそーよ”など同調の声も聞こえる、周りの声が煩い。

(所詮、他人事だよな……こんなの)

里葉は周りの声を置き去りにし、歩みを進める。後ろでは里葉の話題から次の口喧嘩の題材に移行していた。今までもけして居心地が良い場所では無かったが、ますます居心地が悪くなる。学校が面倒臭くなってしまう。

(やだなぁ…この場所……)

授業中はまるで腫れ物に触るかのような担任の態度。担任はまだ若く、どう扱ったら良いか困惑しているようだった。あの養護教諭の温かさを求めてしまう。里葉に何も求めず、ただ穏やかな雰囲気で隣に座って居てくれた。お昼休みになったら保健室に行こうと心に決めた里葉だった。

昼休み、他の生徒は食べたあと外で遊ぶ者が多い。

「失礼します」
「あら?君は……どうかした?」

やはりほっとする雰囲気を持っている養護教諭だ。

「あの……僕……」

体調不良や怪我ではない、ただ先生に会いに来たと言っても良いものか躊躇する。

「入ってらっしゃい、お昼は食べた?」
「はい。食べたました」
「今日のハンバーグ美味しかったわね」
「え……はい。そうですね……」
「ほらここ、座って。森くんよね?」
「そうです」
「森くんは何が好き?給食で」
「え……えと……そう、ですね…揚げパンとか」
「あれは美味しいわよね~きな粉とかね。先生はフレンチトーストも好きだわ」
「はい、美味しいです」

そんなとりとめのない話をしていたら予鈴がなった。戻るのかとため息が漏れていた。

「森くんはどうする?5時間目」
「え?戻り…ます」
「そう、大丈夫?」
「え……」
「また、いつでもいらっしゃい。先生はここにいるからね」
「っ…………はい」

それから度々保健室に行くようになった。それは回数が増えて滞在時間も増えていった。


「森ってやっぱ狡くね?」
「あぁ……確かに…授業いないこと結構あるよな」
「あれだろ?心の病気。親死んだから」

教室の前にたまたま居合わせてしまった。すぐに立ち去れば良いのに足は動いてくれない。頭の片隅では分かっている、傍から見た自分の姿が。里葉は自分を幼少期から客観視できる子供だった。大多数の人が右にならえと、普通では無い者は異端と決めつける。異端は受け入れてもらえにくい。他者の想いや立場を汲み取れる小学生は少ない、特にここのクラスにはいない。攻撃することが一番楽だし安易な考えだ。

(だよな……)

分かっているが、耳に直接聞こえてしまうとショックだった。温もりを求めて何が悪い、車の送迎は無下に出来ない立場だ、里葉はそっとその場を離れいつもの保健室に向かった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

前世が悪女の男は誰にも会いたくない

イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です ーーーやってしまった。 『もういい。お前の顔は見たくない』 旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。 前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める 頑張って運命を回避しようとする話です

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪