この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

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夏がくる

《50》

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 皇輝と間違いなく恋人と言えるようになって初めての週末、心配を掛けていた唯一とまたあの店で会っていた。外では梅雨模様の空が地上に傘の花を咲かせていた。

「やっとちゃんと顔が見れたよ」
「ごめん、何かさ…外出届け受理してくれなくてさ…外出れなかったんだよ」
「あ~はいはい。分かった分かった。ヨリから連絡貰ってたし、ここで里葉さんとか、ハクの人達から聞いてたから。大変だったねヨリ」
「うん、うん?ハク?」
「うん。ここによく来るよ。ハクとガードは結構仲良いみたいでさ」
「ハクって……」
「え?ヨリの学校の人達でしょ?えーと…」

唯一が思い出そうとしていると背後から声が聞こえた。

「俺だよ、俺たち。君がサキだったのね~」
「あ!風紀委員の!」
「央歌だよ。いつもサトがお世話になってるみたいだね」
「ヨリって……何にも知らないの?」
「えぇ……イチ、言葉がキツくないですか…」
「サキって呼べばいいのかな?」
「何でも良いです。まさか、生徒会みたいに風紀の人たちも皆ハクってチームなんですか?」
「会長さんは教えてくれないの?君を周りと断絶させたいのかな……」

(怖っ……有り得そうで、怖っ!)

「そうだよ。元気が有り余ってるからね~皆。あ、サトは入ってないからね。ここには本当に気分転換で来てるだけだからね」
「はい…あの~里葉さんと仲が良いんですか?」
「うん、だいぶ、仲良し」

ニコリと答えられたけど、威圧的な何かを感じる。

「ねえ、ヨリ。黒龍の総長と付き合ってるんでしょ?それで良いんだよね?」
「は……い……。そのようです……」
「なんで敬語……僕もガードの総長と付き合うことにしたから」
「え!?そうなの??やっぱり!」
「うーん……お試しで?僕は生身の人間と付き合うつもり無かったからさ」
「イチ、何故かカッコよく見える。ハッキリし過ぎてて潔いいね」
「ふふ…面白いね、2人は」

2人の時間に水を指すのも悪いと感じ、ゆっくりね~と去っていく央歌。

「あ~ぁ、ヨリもすっかり色気が出ちゃってさ。ラブラブなの?」
「なっ!?なんて事を……イチの口からそんな事」
「あのね、ヨリはちょっと問題だよ。男子高校生なんて、馬鹿みたいにエッチなことばっか考えてるでしょ!なんならちょっと自慢でしょ」
「俺は無理なの~もぅだーって叫びたくなるくらい恥ずかしいの…てか、イチもその……もうしたの?ガードの総長さんと…」
「僕?ん~何となく…かな?」
「え"どーゆー事それ」
「ご想像にお任せします」
「うそっ狡くない!?」
「あはは、うそうそ。まだだよ、まだ最後までしてないの。過保護なんだよあの人。でもさ、今日会ってヨリが笑顔で良かった」
「イチ……うん」
「きっとさ、まだまだ僕たちって経験値ないから、これからも変わらず悩みそうだけど、またこうしてヨリと話して悩んで、それでも笑ってられると良いね」
「そうだね!」

緋縁と唯一、2人は顔を寄せ合い笑顔でいつもと変わらない平穏な日を願う。

「ゆーいちゃん、過保護な彼氏が迎えに来たよ」
「自分で言っちゃうんですね…」
「夜道を1人で歩かせるわけないでしょ」

呆れた口調の唯一は嬉しそうな顔をしている。

「もう1人の過保護な彼氏さんから一緒に帰るように言われてるから来たよ」
「里葉さん!?マジで……」
「緋縁くん、どっちもどっちな恋人だったね」

(俺の周り、ビシバシ言う人ばっかりじゃないか)

「黒龍の総長はここに入ると抗争が始まっちゃうって止められててね…思わず口出しちゃったよ」
「すみません、本当にご迷惑を……」
「じゃあ、帰ろっか。あの学校の寮に」

幸せな報告に終わり、それぞれが帰路につく。梅雨空の中傘の花をさしながら。



 学園の中、噂が出回っていた。
皇輝の機嫌がずっとずっと良すぎるのだ。憶測は多く出て、まことしやかに言われていた探し人が見つかった、探し人を締め上げた、容赦なく潰しただの。物騒な噂が多かった。
緋縁は耳を傾けないようにしていたが、勝手に入ってくるのだ。梅雨の時期はランドリールームが混み合うが、今日は珍しく誰もいなかった。この時期は肌寒い日が時々あり、緋縁は大きめのパーカーをフードを被り頭からすっぽりと着ていた。

「噂、噂……噂話以外ないのか……」

誰もいないのをいい事に、ブツブツと文句を言いながら洗濯物を取り出していた。その後ろ姿はモソモソと黒い塊が動いているようだった。

「何か、寒気する。部屋戻ろっ」
「ひーよーりー」
「ぎゃあっ!!」

いきなり背後から抱き締められ、耳に心地よい声が近くで聞こえた。持っていた洗濯物を入れた袋を落としてしまう。

「な、なに!?」
「これ、着ちゃって。もぅ公言するつもりか?」
「へ?なに?」

後ろを振り向けば、予想通りの皇輝。指摘された服を見る。一気に顔が熱くなる。

「あ、これは……たまたま、手に取って……」
「俺のパーカー、まだ持ってたの?」

そう、皇輝の部屋から逃げる時に着ていたあの黒いパーカーだった。緋縁は知らなかった、背中の部分には黒龍を模した字がプリントされていて、皇輝ただ1人のオリジナルのパーカーだった。

「これ着てたら、俺のものって言ってるのと一緒にだぞ」
「うそ……そうなの?」

その時、ランドリールーム入口でバサバサっと音がした。2人が揃って見ると、1年の生徒が数名いた。皇輝に抱き締められているところをバッチリ見られてしまった。ざーっと頭が冷える緋縁。

「おい、お前たち。多咲緋縁は生徒会長の恋人で、手を出したら殺されるって流しとけ、分かったな」
『は、はいー!!』

蜘蛛の子を散らすように去っていく生徒たち。

「う……そ……うそ……」
「これで安心だな、緋縁」
「うそーーー!!!」

ランドリールームどころか、廊下にまで緋縁の声は響き渡った。この噂は学園中を駆け巡るだろう。
季節は巡り、また暑い夏があと少しでやって来る。


[完]




  ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ ﹉ 

これで、ひとまず完結です。

最後までお付き合い頂き本当に、本当に
ありがとうございました。
こんなに読んで頂けるとは、毎日投稿する度に信じられない思いでした。
未熟者で申し訳ありませんでした。

物語は完結となりますが、
番外編をいくつか載せたいと思ってます。

もう少しお付き合い頂けると嬉しいです。


猫谷  一華
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感想 12

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