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番外編
唯一と彗の物語 1
しおりを挟む僕は昔から背も小さくて大人しくて女みたいな顔って馬鹿にされて来た。友達と遊ぶとからかわれる事が多かったから家で1人で遊ぶようになっていった。そんな僕はテレビで見たアニメの勇者にひどく憧れた。カッコよくって、敵を倒して、魔王も倒しちゃうんだ。しかも信頼できる仲間もいる。顔だって男らしいし、背だって高いし、弱い人に優しくて、完璧だった。僕には無いものばっかり持ってる。のめり込むのは必然だったんだ。
「ヨリ……最近来ないな……」
(どうしたんだろ……何かあったのかな…それとも僕のこと嫌になっちゃったとか…やっぱりほかの友達と遊ぶ方がいいのかな……)
夏休み半ば、夜のゲームセンターで一緒に遊んでいた緋縁がパタリと来なくなってしまった。
(僕、口煩く注意しちゃったしなぁ…連絡とったらウザがられるかな…)
唯一は最近1人でゲームセンターに来ていた。緋縁と友達になる前は好きなキャラクターを取れるだけで楽しかった。でも、緋縁の雰囲気が唯一とよく合っていてただ、たわいも無い話をするだけで楽しかった。1人が寂しく感じてしまう。
「おいっ!双黒ってどいつだ!?」
突然、ゲームセンターの中にズカズカと乱暴に歩き回り、声を張り上げて周りを見回しているグループが来た。
(わぁ……あれって……黒龍ってチームの人だ。後ろにいる人総長だ。やだなぁ関わりたくない……)
唯一と緋縁は自分たちが双黒なんて名前で呼ばれている事をまるで知らなかった。そっとその場を離れようとする唯一。
「あ、いました!アイツです」
「捕まえろ」
「はい」
黒龍のグループに背中を向けていた唯一は自分のことを言われているとは思いもしなかった。腕を取られ、手首も掴まれる。
「わあっ!!」
「総長、捕まえました!」
「よし。外連れてくぞ」
(え?え?え?嘘でしょ)
「すいません。人違いしてます。僕は関係ないと思います」
「俺、見ました!コイツと2人でいるとき」
「え?何の話ですか?」
「お前、サキと一緒につるんでる奴だろ」
「サキ……あっ」
ゲームセンターの外まで連れ出され、大通りより少し狭い路地まで引っ張られて行く。黒龍の総長がピタリと止まり、こちらを振り向く。
「サキどこだ?」
「え?どこって……」
(知らないよっ……)
いきなり胸ぐらを掴み間近で睨みつけてくる。声のトーンが一段低くなって言ってくる。
「隠したって良いことないぞ。さっさと居場所吐けよ、双黒…」
「僕、知らないです……双黒じゃありません」
(何これ!?もしかして、ヨリって何かに巻き込まれてるの?)
ピリッとした場にゆったりした声が響く。
「あーあーやっぱり無茶なことしてる。辞めてあげなよ、コーウ」
「ナナミ……ガードに用はない。サキはガードに入ってないんだろ?失せろ」
「そうだけどさぁ……そんな小さい子に凄んでる姿、ほっとけないでしょ」
「コイツ、庇うのか?サキと繋がってんのか!?」
「だーから……もぅ……熱くなっちゃって……頭冷やしてよ…。お前がガードに乗り込んでから俺たちもそれなりに探したよ。その子にも見張り付けてたけど、それらしい行動は無かったって」
「……ちっ……くそっ」
緊迫した雰囲気の中、黒龍の総長がやっと唯一から手を離した。
「サキが現れたら黒龍に知らせろっ」
そう言い残し、さっと歩いて行ってしまった。小さくなる背中を呆然と見つめる。ほんの小さくなってから恐怖が遅れてやってきて、その場にへたり込みそうになる。体が傾いた時、横から誰かが支えてくれた。
「大丈夫?あのコウに脅されてよく話さなかったね。仲間思いなの?」
「え?仲間?……さっきから何を……」
「双黒の片割れさん。初めまして、俺はガードってチームの総長やってます。名前はナナミっていうの。サキちゃんも綺麗だったけど、君も可愛いね」
「え?双黒って……なんですか?」
「ん?サキちゃんといつも一緒にいる子だよね?名前は何ていうの?」
「いや、だから双黒ってなんですか?僕、違いますよ。双黒じゃありません。ユイです。」
「ん?いやいや……双黒でしょ。見張り付けてたって言ったでしょ」
「あの……さっきから何言ってるんですか?本当に……訳が分からない……」
「えー……と……。噛み合わないね、どうしよう」
「あ、助けて頂いてありがとうございました」
「いーえ。所でごめん。納得いかないんだけど…双黒って隠してるの?隠せてないよ……」
「双黒ってなんですか?チームの名前とかですか?僕、僕たちは、ただの中学生です」
「ん~だから……その2人で双黒って名乗ってるでしょ?」
「名乗ってません。双黒って初めて聞きました」
「えぇ~うそぉ……マジで?」
「ゲームセンターに遊びに来てる、ただの一般人です。その他大勢の客です」
「その他大勢はないでしょ~…えーそうなの?本気で?双黒のファンとか居るんだよ」
「ごめんなさい。何が何だか……さっぱり分かりません」
「へぇ……まあいいや、そーゆー事で。それより可愛いユイちゃん、俺と遊ぼうよ」
「え"!嫌です。僕もう帰ります」
「へ?」
「あの、よく分からないけど……助かりました。本当にありがとうございました。それでは」
「え、え、帰っちゃうの?俺だよ、俺と遊ばないの?」
「?」
首を傾げるだけで返事をした唯一は、早く帰った方が良いと判断してお辞儀だけして駆け足で帰って行った。
「え~俺が……断られることってあんのぉ……」
ナナミの呟きだけが取り残された。
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