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第1
11話
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魔物が男に襲いかかっている隙に部屋を出る。気持ちは急いているのに、体が言うことを聞いてくれない。痛くて、痛くて、少しでも前に一歩進む事だけを考えて前に進む。
「はぁ……はぁ……はぁ……ごめんなさい。助けられなくて……はぁ……はぁ」
ナノニスを手酷く傷付けた男だったが、人が目の前で襲われているのに逃げるなんて良心が咎めた。でも魔物が怖くて、次は自分が襲われると思うと自然と身体が逃げてしまう。目の上を傷付けられた恐怖が蘇る。
妖精、ラシューが先導してくれる。ナノニスは必死に後を追うだけだ。前に、前に、外に出る為に。
「兄様や……エイリカは……無事かな……」
あの部屋を出てからまだ誰とも会っていない。騎士の声を聞くが、姿を見ないのだ。時々大きな音が聞こえて心臓がすくみ上がる。
「どけよーー!!」
ナノニスが二人の王子と約束した場所近くまで来た時、後ろから怒鳴られた。壁伝いにここまで来て、端っこに居るはずが肩にぶつかりながら逃げていく人達がいた。洋服がボロボロで、怯えた顔をしている。
「今だ、今しかない!アイツらから逃げろっ!」
それはおそらく、あの男が言っていた奴隷と飛ばれる人達だろう。こんなに人がこの古城の中にいたなんて、今の今まで目撃しなかった。誰も彼も一心不乱に逃げて行く。血を流し、憔悴している少年に手を貸す人はいなかった。
「痛っ……はぁ……はぁ……」
血で前が見えない、腕で軽く血を拭うと、逃げる人を見送ってまた歩き出す。少しづつ、少しづつ約束の場所に近付く。
「くそぉぉーー!!待ちやがれぇー!!」
一際大きな怒声が響き渡る。あまりの声に振り向くナノニス。怒声を上げながら走ってくる男は髭面のガッシリした体型の男だった。
(まずいっ!どこにも隠れられない!!)
急いで前に進む、背中はズキズキして涙が浮かんでくる。ナノニスは何とか、二人の王子と約束した古城の入口付近までたどり着いた。見渡してみても誰もいない。ここで待っていてもこの有様だ。外に出ようと、よろめきながら入って来た出入口に向かう。
ドスっ
踏み出した足に衝撃があった。視線をやるとナノニスの右足にナイフが刺さっていた。
「う、うわぁぁ!!」
痛みが襲ってきて、その場に倒れてしまう。震える手で足を掴むしか出来ない、怖くてナイフに触れない。振り返ると鬼の形相の髭面の男が立っていた。
「この……奴隷め…逃げたな!?お前らが囮になれよ!俺たちが逃げんだよっ!なんで騎士団なんか来てんだよ…ちくしょう……王子なんて攫うんじゃないっつったのによ!!」
荒い呼吸しか出来ないナノニスは見てしまった。またあの魔物が後ろから走り寄ってきているのを。この髭面の男は気が付かないのか。
「あぶ、危ない……」
「はあ!?……あ"、ああぁぁぁぁーー!!」
奇しくも、またしても魔物に助けられる形でナノニスは男から逃げることが出来た。命からがら古城から外に出て、林の木の影に隠れる。息が切れて心臓が爆発しそうだ。右足に力を入れる度に痛む、騎士団が見つけてくれないだろうか、と望みを持って古城を伺いみる。
「魔物が出てきたら……どうしよう……ラシュー」
ずっと着いてくれている妖精のラシューに声を掛ける。この子の存在はナノニスの動く原動力だ。心が折れて、打ちひしがれていてもおかしくない全身の様子。喉が痛くなるほど息をし、生きようと藻掻く。この子が先を光で照らしてくれるから足が前にと進むのだ。
「あ、あれ…あれは……兄様?」
古城から出てくる人影を見る。影は三人いる、間違いない希望の人達だった。無事だったのだと喜んで、声をかけようと口を開くナノニス。
「エイリカ、無事でよかった。本当に良かった」
第1王子のティーヌがエイリカの肩に腕を回し涙ながらに言う。
「ご心配をおかけ致しました。ティーヌ兄上…無事です。周りの方が助けてくださいましたし」
「肝が冷えたぞ、騎士団も来るのが遅いし…計画とは違ったが、お前が無事ならそれで…」
「ビニモンド兄上もご心配おかけ致しました。ありがとうございました」
「あいつは?第5の奴は?」
「さあ…分かりません」
「まぁ……いいか、最初からエイリカの身代わりで連れてきたんだし」
「そうですね。大した働きもしない第5ですから…捕まって死んでも名誉の死ですし。どちらにしても騎士団が何か見つけるでしょう」
「第5?王子って事?……あぁ…王城にいない子か、そう言えば居ましたね。忘れていました」
頭から冷水を浴びせられたと思った。身体から力が抜ける、地面に手を着いて何も感じなくなる。
「良いよ、エイリカが無事なんだから。気にする事はない」
「はいティーヌ兄上」
三人は馬の声を響かせその場から去っていってしまう。ナノニスはその場から動けず、頭が真っ白になってしまう。
「僕、僕は…………」
涙も出ない。身体が震えてばかりでどうすることも出来ない。
(最初から……最初からって……)
しばらく、そうして呆然としていたが痛みがぶり返してきて今がどういう状況か気が付く。
(あ、馬が……)
ナノニスに帰る足が無くなってしまった。この怪我で屋敷まで辿り着けるとは思えない。騎士団もナノニス達が出てきた出入口からは出てこない。他にも入口があるのだろうか、それともまだ中で戦っているのだろうか。喧騒を遠くで聞いて涙が頬を伝う。
「僕は、何で……ここに居るんだろう」
ポツリと呟いた時、古城から爆発音がした。熱風がナノニスのいる外まで来る。たじろいでいるとまた爆発が起きた。今度はもっと近くで、そして…目の前に炎が見えて、ナノニスの身体は爆風で飛ばされてしまった。
「はぁ……はぁ……はぁ……ごめんなさい。助けられなくて……はぁ……はぁ」
ナノニスを手酷く傷付けた男だったが、人が目の前で襲われているのに逃げるなんて良心が咎めた。でも魔物が怖くて、次は自分が襲われると思うと自然と身体が逃げてしまう。目の上を傷付けられた恐怖が蘇る。
妖精、ラシューが先導してくれる。ナノニスは必死に後を追うだけだ。前に、前に、外に出る為に。
「兄様や……エイリカは……無事かな……」
あの部屋を出てからまだ誰とも会っていない。騎士の声を聞くが、姿を見ないのだ。時々大きな音が聞こえて心臓がすくみ上がる。
「どけよーー!!」
ナノニスが二人の王子と約束した場所近くまで来た時、後ろから怒鳴られた。壁伝いにここまで来て、端っこに居るはずが肩にぶつかりながら逃げていく人達がいた。洋服がボロボロで、怯えた顔をしている。
「今だ、今しかない!アイツらから逃げろっ!」
それはおそらく、あの男が言っていた奴隷と飛ばれる人達だろう。こんなに人がこの古城の中にいたなんて、今の今まで目撃しなかった。誰も彼も一心不乱に逃げて行く。血を流し、憔悴している少年に手を貸す人はいなかった。
「痛っ……はぁ……はぁ……」
血で前が見えない、腕で軽く血を拭うと、逃げる人を見送ってまた歩き出す。少しづつ、少しづつ約束の場所に近付く。
「くそぉぉーー!!待ちやがれぇー!!」
一際大きな怒声が響き渡る。あまりの声に振り向くナノニス。怒声を上げながら走ってくる男は髭面のガッシリした体型の男だった。
(まずいっ!どこにも隠れられない!!)
急いで前に進む、背中はズキズキして涙が浮かんでくる。ナノニスは何とか、二人の王子と約束した古城の入口付近までたどり着いた。見渡してみても誰もいない。ここで待っていてもこの有様だ。外に出ようと、よろめきながら入って来た出入口に向かう。
ドスっ
踏み出した足に衝撃があった。視線をやるとナノニスの右足にナイフが刺さっていた。
「う、うわぁぁ!!」
痛みが襲ってきて、その場に倒れてしまう。震える手で足を掴むしか出来ない、怖くてナイフに触れない。振り返ると鬼の形相の髭面の男が立っていた。
「この……奴隷め…逃げたな!?お前らが囮になれよ!俺たちが逃げんだよっ!なんで騎士団なんか来てんだよ…ちくしょう……王子なんて攫うんじゃないっつったのによ!!」
荒い呼吸しか出来ないナノニスは見てしまった。またあの魔物が後ろから走り寄ってきているのを。この髭面の男は気が付かないのか。
「あぶ、危ない……」
「はあ!?……あ"、ああぁぁぁぁーー!!」
奇しくも、またしても魔物に助けられる形でナノニスは男から逃げることが出来た。命からがら古城から外に出て、林の木の影に隠れる。息が切れて心臓が爆発しそうだ。右足に力を入れる度に痛む、騎士団が見つけてくれないだろうか、と望みを持って古城を伺いみる。
「魔物が出てきたら……どうしよう……ラシュー」
ずっと着いてくれている妖精のラシューに声を掛ける。この子の存在はナノニスの動く原動力だ。心が折れて、打ちひしがれていてもおかしくない全身の様子。喉が痛くなるほど息をし、生きようと藻掻く。この子が先を光で照らしてくれるから足が前にと進むのだ。
「あ、あれ…あれは……兄様?」
古城から出てくる人影を見る。影は三人いる、間違いない希望の人達だった。無事だったのだと喜んで、声をかけようと口を開くナノニス。
「エイリカ、無事でよかった。本当に良かった」
第1王子のティーヌがエイリカの肩に腕を回し涙ながらに言う。
「ご心配をおかけ致しました。ティーヌ兄上…無事です。周りの方が助けてくださいましたし」
「肝が冷えたぞ、騎士団も来るのが遅いし…計画とは違ったが、お前が無事ならそれで…」
「ビニモンド兄上もご心配おかけ致しました。ありがとうございました」
「あいつは?第5の奴は?」
「さあ…分かりません」
「まぁ……いいか、最初からエイリカの身代わりで連れてきたんだし」
「そうですね。大した働きもしない第5ですから…捕まって死んでも名誉の死ですし。どちらにしても騎士団が何か見つけるでしょう」
「第5?王子って事?……あぁ…王城にいない子か、そう言えば居ましたね。忘れていました」
頭から冷水を浴びせられたと思った。身体から力が抜ける、地面に手を着いて何も感じなくなる。
「良いよ、エイリカが無事なんだから。気にする事はない」
「はいティーヌ兄上」
三人は馬の声を響かせその場から去っていってしまう。ナノニスはその場から動けず、頭が真っ白になってしまう。
「僕、僕は…………」
涙も出ない。身体が震えてばかりでどうすることも出来ない。
(最初から……最初からって……)
しばらく、そうして呆然としていたが痛みがぶり返してきて今がどういう状況か気が付く。
(あ、馬が……)
ナノニスに帰る足が無くなってしまった。この怪我で屋敷まで辿り着けるとは思えない。騎士団もナノニス達が出てきた出入口からは出てこない。他にも入口があるのだろうか、それともまだ中で戦っているのだろうか。喧騒を遠くで聞いて涙が頬を伝う。
「僕は、何で……ここに居るんだろう」
ポツリと呟いた時、古城から爆発音がした。熱風がナノニスのいる外まで来る。たじろいでいるとまた爆発が起きた。今度はもっと近くで、そして…目の前に炎が見えて、ナノニスの身体は爆風で飛ばされてしまった。
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