傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾

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第1

13話

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 ここは騎士団駐屯地、王都中心部にある国王が住まうミリー城の隣に騎士団の本部があるが、ここは王都の中に点在している駐屯地の一つ。在籍しているのは騎士団副団長率いる精鋭部隊で構成された独立部隊、通称エー。20名ほど在籍しているこのエーは基本見回りなどを主な仕事としているが、面倒事や後処理などの仕事も命じられていた。
その駐屯地に走り込んできた傷付いたミリー城の護衛。彼が最上級の面倒事を持ってきた。

「失礼致します!副団長は…いらっしゃいますか!?」

必死の形相で待機している騎士に詰め寄る。
今日は比較的平和な日だったので部隊のほとんどの人が見回りを終えて駐屯地でだらけていた。もちろん副団長も。

「俺はここー!こっちにいるよー」

手をヒラヒラと上げて居場所を教える。

「ふ、副団長殿!たた、た、大変です!」

「何何ー?まーた面倒事かぁ?ん、お前は…エイリカ王子付きの護衛か?はぁ……どうしたよ…」

エイリカは皆から可愛い可愛いともてはやされて育った為、少し我儘であった。可愛いが騎士や護衛たちからは扱いにくいと評判で、また第1王子や第2王子に睨まれるので、出来れば近付きたくない相手だった。

「大きな声では言えませんが…非常事態です…第6王子エイリカ・ミリテジ様がお忍びで街に外出中、攫われました」

「はぁ!?お前何やってんだよ!!」

「第1王子ティーヌ様並びに第2王子ビニモンド様より離れて護衛をしろとの命により…間に合いませんでした…」

「あーもー……あの王子様たちは…で?」

「ただいま、追跡によりエイリカ様の居場所は判明しております。ティーヌ様とビニモンド様は……エイリカ様奪還の為…我々の制止を振り切り、ララン……第5王子ナノニス様のお屋敷にて人員を確保の上……既に……向かわれています……」

「ま、そん……くそっ!無茶苦茶しやがって!」

副団長、シュシュル・フレイザーは目の前にあった机に握り拳を叩き付ける。

「私は騎士団に連絡をと命じられてまして…その、敵からの攻撃により負傷致しまして…」

「分かった!取り敢えずこいつの手当をしてやって、それと場所は?」

「古城です。北の外れにあります…」

「……なるほど、確かにナノニス様のお屋敷に近いな。道案内でも頼んだか…王子様たちは…。あの方々は、少々ご自分のお力を過信しておられるからな」

「副団長っ!言葉が過ぎますよ」

護衛の前でもお構い無しに発言する副団長に隊員がハラハラしてしまう。

「ふんっ面倒事を頼まれてるんだぞ。これぐらいの文句、愛嬌だ。仕方ないな、すぐに向かう。あ、一人ナノニス様のお屋敷に行って経緯を聞いてこい。大方口止めされてるだろうから、王子様からのご命令だと言えよ」

瞬時に的確な指示を出し、一斉に動き出す。

「二人は待機!一人は屋敷へ、残りは俺についてこい!行くぞ」

颯爽と駐屯地を出ていく騎士団精鋭部隊エー、副団長の後ろ姿は頼もしく、隊員達は絶対の信頼と憧れを持っている。
各自馬に乗り隊列を組む。

「良いか!エイリカ様奪還、保護を第一と考えろ。敵の捕縛は出来る限りだ!尚、敵の規模も全容もまったくの未知だ!古城を根城にしてやがる、知恵が回るかもしれん、気をつけろよ!決して油断するな」

『はっ』

ヒヒーンと馬が一声あげて出立となった。

「ここから古城まではどのくらいだ?」

副団長の隣を走る隊員に確認する。

「ここ、東の駐屯地からだと…1時間以上は掛かるかと…」

「じゃあ、1時間以内だな」

「え!副団長…」

「1時間以内だっ!」

金髪をなびかせて馬を操りほかの隊員より頭一つ出る。

「続けよっ!遅れるな!!」

(第6王子に何かあったらマズイ。あの方には傷一つ付けてはいけない。万が一何かあったらこの隊は解散させられるだろう…あのクソ王子共め……)

急ぐ副団長に何とかついて行き、古城の手前の林にたどり着く。馬から降りて辺りを警戒しながら進む。馬の番に一人残し、他の隊員に偵察させながら古城の手前に待機する。状況がまるで飲めない、古城の周りには見張りが居ないのだ。

「見張り一人つけてないぞ、何でだ?」

「副団長、古城の周りを調べました所、馬が2頭繋がれておりました。やはり見張りはいません」

「分かった。ふむ…腑に落ちないな…王子様を攫うなんてとんでもない事仕出かした割には…警戒が弱い…中に仕掛けてんのか?……お兄様方もこの中に入ってしまわれたようだし…悩んでる暇はないな、よし…突入するか」

隊員をちらりと見ると、皆の顔がランランとしていた。

「ウズウズしてんじゃないよ…屋敷に行った者はまだ戻って来ないか?」

「もうすぐだと思いますが…」

「そうか…あの屋敷からの人数を知りたかったが…仕方ない、行くか」

騎士団が一斉に立ち上がり、いざ突入と言う時にナノニスの屋敷に寄っていた騎士が合流してきた。

「報告します!」

「おぉ!よし、何人だ?」

「一人だそうです………それが…」

「なんだ?」

「あの……ティーヌ王子とビニモンド王子は…ナノニス王子ただ一人連れて行ったと…」

「は?ナノニス王子お一人?……え、まさか…」

(あのくそ野郎どもっ!!)

騎士団副団長シュシュル・フレイザーはミリー城にも出入りしていた為、ナノニスの正確な扱いを知っていた。王子とは名ばかりのあの子は忘れられた王子、外れ物の王子、と揶揄されていた。軽く見られている所ではなく、いないもの、軽蔑、侮蔑されていた。あの二人の王子がナノニスを連れて行った意味など瞬時に理解出来てしまった。

「ナノニス王子は…贄だ」

ザワっと隊員がざわめいた。

「良いか、エイリカ様とナノニス様の奪還、保護だ。行くぞ」

副団長シュシュルは、ナノニスに特別な想いがあった。何としてもこの忌まわしい古城から救い出すと足を進めた。
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