上 下
9 / 26

7日目 ''アニメ語"を話すイケメンウルグアイ人

しおりを挟む
-3度の気温の冷え込む午前9時。

Juanさん(仮名) 日本語は一切話せない ウルグアイ出身

Juanさんとの第一印象
イケイケな南米ボーイ イケメンではあるがチャラい感じがした アニメを見て日本語を覚えたせいでかなり不思議な日本語の言い回しをする

※今回の会話は最初は全編英語で行い、載せるのは日本語訳したもの
" "で囲んだところは日本語

「こんにちは。聞こえます?」

Juanさんの声は聞こえるがビデオがオフになっている。

「はい。ビデオはオフになっていますが、音声だけの方がいいですか?」

「あ、ごめんなさい。オンにします」

真っ暗な部屋の中で微かにJuanさんの顔が映る。

「オッケーです。Juanさんですね?」

「ああ、私の名前はJuan(ホワン)です」

ジュアンだと思っていたので発音が少し違っていたよう。以前コロンビア出身の男の子が同じJuan(ホワン)という発音の名前で、その時に発音を間違えたのを思い出す。スペイン語圏ではJ(ホタ)はハ行の発音をするのだ。

「あ、なるほど。Juan(ホワン)さんね」

「はい。"私は日本語を少ししゃべる。でも..." えーと、簡単な日本語は話しますが、日本語で何をいってるのか理解することは出来ないです」

「なるほど」

「だから、どのように勉強していけばいいのかわかりません」

「わかりました。大丈夫ですよ。まずは自己紹介しましょうか?」

「はい」 

「自己紹介は日本語でしますね。もしわからなかったら英語で説明します」

「わかりました」

「"〇〇(会社名)のエリです。半年間オンラインで日本語を教えています。日本の北海道に住んでいます"」

「"はい、わかります。俺の自己紹介、いけます"」

なんだか凄い癖がある話し方だなあ。

「お願いします」

「"私はホワンです。今26。ウルグアイの出身です。そしてグラフィックデザイナーです"」

「"へー、グラフィックデザイナーなんですか"」

「今はどこにいますか?」

「"今は、俺のウチです"」

「"Juanさんはどれくらい日本語を勉強しているんですか?"」

「うーん、正確にはわからないけど私がどれくらい日本語を勉強したか、と尋ねていますか?」

「そうです」

「実は日本のアニメから少しの日本語を学びました。それから、日本語を独学で学びました。一ヶ月間です」

「なるほど」

「しかし、結構前の話です」

「そうですか。じゃあ、ひらがなやカタカナは読めますか?」

「何度かひらがなを読む練習はしましたが、多くを忘れました。実は最近日本語の学習コースのようなものをはじめました。日本語版のside by sideのようなものです。しかし、まずは日本人と話して実際の日本語の感じや雰囲気を体験したくて予約してみました。そのコースではひらがなの学習から始めてみましたが、カタカナはまだわかりません」

side by sideは英語学習者の為の有名なテキストだ。

「なるほど。ではどのように勉強していきたいですか?会話中心が望ましいですか?」

「はい。会話をしたいです。とりあえず日本語で話しかけてほしいです。それで私もできる限り日本語で答えます。それでもし間違った表現や文法があれば教えてください」

「わかりました」

ここから全編日本語に切り替わる

「それでは、日本語で話していきましょう! Juanさんが日本に興味を持つきっかけになったのはアニメなんですよね?」

「はい。俺は、すごく、アニメファンです」

「どんなアニメが好きですか?」

「俺はスポーツファンだ」

なんだか本当に言い回しやアクセントがアニメみたいで面白い。

「へー、スポーツなんですね」

「ハイキューが1番好きだ」

「なるほど。Juanさん。好きだ、とか、~だ、とかって言うことが多いですね。友達と話す時とかはそのようなカジュアルな表現でも問題はありませんが、今後初対面の日本人と話す時とかは語尾を変えた方がいいですね。好きだ、ではなく、好きです、に変えたほうが印象が良くなります」

「わかりました」

「Juanさんは実際にスポーツをしていますか?」

「はい。俺はスポーツをplay?」

「スポーツをする、ですね」

俺、という言い方が少し気になったが、一人称の選び方は自由なのでそこは言及しない事にした。恐らく彼の日本語のボキャブラリーの多くはアニメから学んだものなのだろう。

「する。俺はバレーをする」

「へー、バレーをするんですね」

「はい。1年間する」

「1年間してるんですね」

「俺は友達とバスケもする」

「色々するんですね笑 1番好きなのはスポーツはなんですか?」

「俺はバレーボールとバスケットボールが好きです。だけどバレーボール、もうしない」

「もうしないの...?」

「はい」

「それはなんでですか?」

「友達、いない、する」

バスケをする友達がいないのだろう。

「そうですか。そして、仕事はグラフィックデザインをしているんですね」

「はい。俺の仕事、グラフィックデザイナー、です」

「なるほど。その仕事は長いんですか?」

「...」

「何年間、その仕事をしていますか?」

「あ、何年...。今は5年、次の年で6年。グラフィックデザイナーです」

「へー、長いんですね」

「はい」

「仕事は楽しいですか?」

「はい、楽しいですね。俺の仕事、凄くインターナショナル(国際的)。世界中の人と働く」

「へー、そうなんですね」

「はい。イギリス人、アメリカ人、ほかのヨーロッパ人、インド人と働く」

「確かにインターナショナルですね」

「彼らとは英語でコミュニケーションをとるんですね」

「はい。英語で」

「Juanさんの母国語はスペイン語ですか?」

「ぼ、こく...?」

「Mother language(母国語)」

「あ、スペイン語です」

「ウルグアイではみんなスペイン語を話すんですね」

「はい」

「話は変わりますが、一ヶ月間しか日本語は勉強してないんですよね?それにしては、日本語が上手ですね」

薄々感じていたが、彼の日本語レベルは高い。確かに彼の日本語は少しアニメの影響のせいか少し変ではあるものの、私の言っている日本語をしっかり理解している様子から、彼の日本語レベルは初心者にしてはなかなか高い。

「はい。俺は日本語の勉強です」

??

「ん?」

「Travel(旅行)」

「Travel?」

カオスだ...。

「Yes」

「日本に旅行した事があるんですか?」

「...」

「Have you ever travel to Japan?(日本に旅行した事はありますか?)」

「Never(いいえ)」

「So, you want to travel to Japan, don't you?(じゃあ、日本に旅行したいのですか?)」

「Yes!! 」

ああ、通じてよかった。

「なるほど。日本に旅行したいんですね」

"日本に旅行したい"とチャットボックスに打ち込む。

「俺は日本に旅行したい。ぶんこを知りたい」

ぶんこ...。文化!

「えっと、ぶんこじゃなくてぶんか! culture! 」

「Yes! Culture(文化)」

「日本のどんな文化に興味がありますか?」

「えーと、俺は日本の歴史に興味がある。特に江戸時代から全部の」

「へー、歴史に興味があるんですね」

「日本の歴史文化、好きです」

ふむふむ。なんだか面白い。

「なんで日本の歴史に興味がありますか?」

「俺は...日本の歴史を勉強していました。学生の時に1人で」

「へー、一人で?」

「はい。"なんていうか、実は日本の過去から日本にかけての変容というか、営みの移り変わり、建物や生活様式の変化なども含めて学ぶことが好きなんです"」 

" "で囲まれた部分は英語

「なるほど。じゃあ、日本文化全般の歴史が好きなんですね」

「そうです」

「"実は私は日本だけじゃなくて沢山の国の文化や言語に興味があります。だから私は、ポルトガル語、イタリア語、フランス語、そして日本語を学んでいます"」

「わあ、素晴らしい。マルチリンガルですね」

「"はい。だから日本に旅行したら生の日本語に触れて、現地の人々から文化を学びたい。そして、自分の文化も彼らとシェアしたいんです"」

「それは素敵ですね。あなたの仕事にもその経験が活かせそうですね」

「はい」

「日本に旅行するとしたらどこに行ってみたいですか?」

「俺は、新宿を行きたい」

「新宿に行きたい、ですね」

「後は長野に行きたい」

「長野?」

「はい。あるYouTuberが長野を紹介していて、それで好きになった。俺は...Urban city(大都市)そんなに好きじゃない」

「なるほど」

新宿は大都市だが...。

「俺は...京都と新宿と、静かな田舎すき」

「そうなんですね」

「はい。でも俺は..."数日間じゃなくて長く日本に滞在して、沢山の県に行きたい"」

「なるほど。日本の各地に滞在して多くの文化を学びたいんですね」

「はい」

「ちなみに私は北海道に住んでいます」

「おお、北海道」

Juanさんのテンションが上がる。

「北海道は観光地として人気ですが、冬は凄く寒いですよ」

「寒い?雪降る?」

「はい、雪降ります」

「いいですね」

「ウルグアイでは雪は降りますか?」

「Never(決して降りません)。しかし冬は本当に寒い。3度とか。吐く息、白い」

「えー、それは意外です」

南米のウルグアイには寒いイメージがあまりなかった。

レッスンの終わりの時間

「今日はお話しできてよかったです。またお話ししましょう」

「はい。ありがとうございました」

「それではまた、バイバイ~」

Juanさんと話した感想
アニメの影響をもろに受けた彼の日本語は斬新で面白かった。グラフィックデザイナーのJuanさんは異文化に興味があり、これからも多くの言語や文化を学んでいくのだろう。彼と話した時間は面白かった。
しおりを挟む

処理中です...