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Prolog
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ハァハァ、荒々しい息を吐き出して
また、息を吸う。
上からの圧力で身体が動かない。
ハァハァ、舌をダラリと出して
空気をまた大きく吸い込む。
ハァハァ……薄れて行く意識の中で
その場に座り込み涙を流す女を
目の端で捉えた。
(イロ…ハ………)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『全く。罪の無い者にまで
手を出しおって、こやつは…。』
と、白から黒くくすんだ獣の上から飛び降りて
指で印を結び、目を閉じて
呪文を唱えるこのお方は、
我らが主人、"土地神様"です。
唱え終えるとその獣は、姿を変えて
やがて、人の姿へと変わった。
あちこち傷だらけで、
服もところどころ破けている。
何より指先や頬には、
返り血がベッタリとついている。
この獣は、私の夫。名は、清嗣(キヨツグ)。
私と共に土地神様に仕える、
従順たる神使であった者……。
そして、私は彼の妻であり
土地神様に仕える神使。
名は、紅葉(イロハ)。
『いつまでそこに座り込んでいる。
早くこいつを牢へ運ぶぞ。
目が覚めたら厄介だしな。』
と土地神様が云って私に振り向く。
私は肩をビクッと動かし
ゆっくりと立ち上がった。
彼に噛まれて間もない首筋や片腕からは
鮮血が滴り落ちる。
その苦痛に顔を歪めていると
『お前も重傷だな。』
と土地神様が云って微笑を浮かべた。
しかし、そう云っているこの土地神様の服も
ところどころ破けて引っかき傷がある。
『さて、こいつを運んで
お前と私の手当てをするか。』
と云って彼の片腕を自分の腕にかける。
私は、もう片方の腕を自分にかける。
小さいせいかあまり意味がない。
ククッと土地神様は笑い。
『お前は牢屋の扉を開けておくれ。』
と云った。歯痒さを感じるもそれに従う。
暗闇の空からポツポツと雨が降って来た。
また、息を吸う。
上からの圧力で身体が動かない。
ハァハァ、舌をダラリと出して
空気をまた大きく吸い込む。
ハァハァ……薄れて行く意識の中で
その場に座り込み涙を流す女を
目の端で捉えた。
(イロ…ハ………)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『全く。罪の無い者にまで
手を出しおって、こやつは…。』
と、白から黒くくすんだ獣の上から飛び降りて
指で印を結び、目を閉じて
呪文を唱えるこのお方は、
我らが主人、"土地神様"です。
唱え終えるとその獣は、姿を変えて
やがて、人の姿へと変わった。
あちこち傷だらけで、
服もところどころ破けている。
何より指先や頬には、
返り血がベッタリとついている。
この獣は、私の夫。名は、清嗣(キヨツグ)。
私と共に土地神様に仕える、
従順たる神使であった者……。
そして、私は彼の妻であり
土地神様に仕える神使。
名は、紅葉(イロハ)。
『いつまでそこに座り込んでいる。
早くこいつを牢へ運ぶぞ。
目が覚めたら厄介だしな。』
と土地神様が云って私に振り向く。
私は肩をビクッと動かし
ゆっくりと立ち上がった。
彼に噛まれて間もない首筋や片腕からは
鮮血が滴り落ちる。
その苦痛に顔を歪めていると
『お前も重傷だな。』
と土地神様が云って微笑を浮かべた。
しかし、そう云っているこの土地神様の服も
ところどころ破けて引っかき傷がある。
『さて、こいつを運んで
お前と私の手当てをするか。』
と云って彼の片腕を自分の腕にかける。
私は、もう片方の腕を自分にかける。
小さいせいかあまり意味がない。
ククッと土地神様は笑い。
『お前は牢屋の扉を開けておくれ。』
と云った。歯痒さを感じるもそれに従う。
暗闇の空からポツポツと雨が降って来た。
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