透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
587 / 2,047
8の扉 デヴァイ

意外な訪問者

しおりを挟む

「うーーーーーーーん。この、この辺りの色ってどうやって出してるんですか?」

「これはね、まじないの一種なんだが………」
「えっ?!まじないなんですか??やだ。」

「何が「やだ」なんだ…。」

すっかりコーネルピンと打ち解けた、私。

絵について色々と聞きたがる私に嫌な顔一つせず、嬉々として教えてくれる彼に質問攻めをしていると向こうから極彩色のツッコミが聞こえてくる。

聞こえてますからね………。

キロリと視線を飛ばしたその時、応接室の扉が鳴った。


「お客様がいらしてますが。」

扉を叩いたのは、ハクロだ。

ウイントフークが出て行って、「なんだろう」と思いつつも私の前には「あの絵」がある。

すぐに話に戻った私達に、焦った様な足音は全く聞こえていなかった。

「なんだ?」

そう言って部屋の奥にいた千里が扉へ向かって歩くのを、目の端に捉えた頃。

勢い良く、「ガチャリ」と扉が開く。

珍しく焦っているウイントフーク、「隠せ」と言われたが何の事か全く解っていない私達に極彩色が白い布を、渡したその時。

「やあ、来たよ。」

「へっ?」

ある意味いつも通りの間抜けな返事をした私、隣で固まるコーネルピンに大きな溜息の極彩色。
溜息と共に、ソファーへ置かれた白い布の行き先に気付いた時は、「時既に遅し」であったのだ。

部屋へ入って来たのは先日青の家で会った、銀ローブの彼で。

これ」を隠そうとしていた事が分かった時には既に、彼の視線はもうその絵に釘付けだったからだ。


あちゃ~………。

でも?

が、私だって。

分かんない、よね??

普通、まじないの色は他の人に知られる事はそう無い筈である。

でもな………この人、祭祀も見てるしね?


とりあえず自ら墓穴を掘らない様に、本部長の動きと極彩色、ついでにコーネルピンをチラリと見ると。
意外な事に、始めに口を開いたのはコーネルピンであった。

「お久しぶりですな。いつ、戻ったのですか?」

確かにそれは、私も気になっていた。

てか、コーネルピンさんも銀の家だけど?
この二人も「同じ家」って、こと??

ブラッドフォードから聞いている、銀の家の数は大きく三つ。
その中で、二つだか三つだか………あるらしいのだが、その辺りはあの玉虫色の管轄なのである。

勿論、聞いたが覚えちゃいない私は、息を潜めながら男達の成り行きを見守っていた。




「でもな………この辺りの色がやっぱり、独特なんだよね………どうやって出してるんだろ…他の絵も、見たいな…?」

コーネルピンの絵は、あのカードの作者だけあって繊細な色使いに、細かい描写。
それに、基本的に優しい色使いのこの絵に、きっと異色であろう「虹色」が加わった事で醸し出される不思議な雰囲気、そこに差された鮮やかな、「青」。

「新しい境地に至りました」と言っていた、彼の黄茶の瞳が思い出されて、ふと振り返った。

案の定、男達の話は何やら続いていたし、私にそれを聞く気は無かった。
始めは成り行きを見守っていたのだが、全く絵の話が出る気配がないので既に「一人鑑賞会」を始めていたのだ。


て、言うか。
この絵こっちの方が、いいに決まってるじゃん………。


「うん?」

黄茶の瞳を求めて振り返ったのだけど。
何故だかタイミングよく、みんながこちらを見ていた。

え あれ?

まさか、ずっと見てたって事、ないよね??

助けを求め本部長をチラリと見るも、何故だか顔が怖い。
要らぬ藪は突くまいと、極彩色に狙いを変えるも、なんだか微妙な顔である。

その、紫色の瞳をくるりと、回すと。

ウイントフークに向き直った千里は「持ってる様だな」と、言った。


え?
なにが?

私、関係無い話??

未だ飲み込めていない私は、本部長の怪しい気配に既に絵の方へ向き直っていた。

「やはり、でしょう?だから、僕にも権利があるんですよ。それに、僕の方が年の頃も丁度、いい。また後でブラッドフォードも交えて話すかも知れませんが。とりあえず今日は、ご挨拶までに。」

「じゃあ、ヨル。また来る。」

えっ。
何そのセリフ?

またあの廊下でのサムいセリフが思い出されて、パッと振り返った。


私が戸惑っているうちに。
爽やかに手を振り、出て行ったその銀ローブの後ろ姿を見つめながら今更ながら、名前を考える。

今、振り向いてはいけない。

私の勘が、そう言っている。


そうして一人、ぐるぐるしていると丁度その答えがコーネルピンの口から齎された。

「何をしに来たんでしょうね?まあ、シュマルカルデンの言い分が本当ならば。彼にも、権利自体はあるのでしょうけど銀同士だと、ヨルは………選択権までは、無いか。」

「そうだろうな。「意見」くらいじゃないか。しかし、何処の誰の差し金だ?いや、グロッシュラーからだから、違うのかも………と言うか、あいつが間抜けなだけなんじゃないか、おい、ヨル!」

「ひぇっ!」

「「ひえ」じゃ、ないだろう。お前、報告は貰ってないが?あいつから、何か「もの」を貰ってるな?」

「もの………?」

彼に貰ったものと、言えば。

あの綺麗なカメオの付いた、コンパクトの事だろう。

「あの綺麗な天使と薔薇の付いたやつですよね…………あれは素晴らしかった、あの細かさは初めて見ましたよ…それにあのモチーフ?こっちにも天使っているんですか………はい、ごめんなさい??」

眼鏡の奥の、瞳がコワイ。

兎に角、不味い事だけは、解る。

しかしそこまで思い出して、やっとトリルに言われていた事を思い出した。

「えっ?ホントに?了承した事に、なるって…………?え?でもお兄さんは???」


大きな、溜息が聞こえ再びチロリと絵を振り返る。
そう、現実逃避だ。

何かしら不味い事になって、それがあのコンパクトの所為で、そしてウイントフークのあの、顔。


なんだろな………?
えっ。まさか?

いやいや、でも、うんん??
私に「選択権」は無いって?
あれれ??

お兄さん?
お兄さんに、頑張ってもらうしかないの?
て言うか、もう金色で、良くない………???


段々面倒になってきて、私もつい溜息を吐いて座り直した。

なんか、私に今更どうにかできる、問題じゃ無さそうだし??


しかし、そんな投げやり気分の私の背後では、まだ男達の話は続いていた。

「何か別の目的があるのかも知れん。」

「そう考えた方が、いいでしょうな。」

「コーネルピンは何か知らないのか?」
「私は帰って来ていたのも知りませんでした。まあ、同じ家でもあまり顔は合わせませんからね。」

「それはお前が引きこもっているからじゃないのか。まあ、それはいいが。ブラッドフォードが上手く対応しているといいがな…きっと今日はうちに確認と念押しを兼ねて訪問している筈だ。「ヨルが認めた」とでも、言うに違いない。」

「あいつが動揺するかどうか、どう思う?」

「すると、思うね。」

「えっ。」

何故だか自信満々にそう言い切った千里に、つい大きな声を出し振り返った。

多分「なんで?」という顔をしていたのだろう、そのまま千里が説明した内容は。

到底、私の理解できる話では、なかったのだけど。

は、結構依るの事を気に入っているからな。本人の気持ちを尊重しようという気は、あるのだろう。だから、今あいつとの噂が出ていても口を噤んでいる。しかし、銀となれば…話は違うかもな?」


何故、話が。

違うのか。

全く、分からないしそもそも「私の事を気に入っている」??
初耳だけど???

何処から仕入れてるの、その情報??


再びのぐるぐる沼に、嵌っている間。

男達の話はどこかに落ち着いた様で、私に最終的に出された指令は、「いつものアレ」だった。


「とりあえず、お前は。好きに、振り撒いていろ。」

「えっ。………そんな事なら、お安い御用、ですけど………。それだけで、いいんですか?」

あっ。
どうせ「それしかできないんだろ」って目、してる!

「はいはーい、分かりましたっ!」

本部長の返事を聞く前に、そう言って立ち上がる。


そうしてコーネルピンに「本当に貰っていいか」を、訊きながら。

再びの「色」談義を始めた私達は、現実逃避を図ったのである。

うむ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...