透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

あの家へ

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て、言うか。

この人の家って、アリススプリングスの家とは別なんだろうか。
家族、って訳じゃ、ないんだよね?

親戚?
でも、ブラッドとも「親戚」と言えば親戚なのかな??

家系図がよく、解らないんだけど…………。


そんな私のぐるぐるを背に、彼は真っ直ぐにあの通路を進んで行く。

店の前を通り、あの奥の庭園へ繋がる暗い通路だ。
予想通り、そこを通り抜け明るい庭を横目にスタスタと進む彼は、振り返りはしない。

時折置いていかれそうになる私をフワフワがチョイと突き、「ごめん」と言って進む道中。
こうして、進んでいると。

いつもの面子が「私の寄り道」をよく解って歩いているのだと、改めて分かる。


私がこんな所にいる、って…………。
あの狐は解ってるよね…。

それにきっと、本部長も。

チラリと視界に入れる、水色の短髪。
それを見失わない様確認しつつ、銀への訪問が許された事を「どうしてなのか」つらつらと考えながら、温室の横も通り過ぎた。

うん?
ここでも、ない…。

もしかしたら、またあの花達に会えるかとも思ったけれど、そうではないらしい。

再びフォーレストに急かされ、背の高い銀ローブを追うとやはり辿り着いたのは、あの茶の豪華な入り口だった。




えっ ちょ っと?
ウイントフーク さん ??????

あの、絵が沢山ある豪奢な応接室にて。

縮こまって座る、私の隣に居るのは何故だかアリススプリングスだ。

が、「いい」のか「悪い」のかを判断できないこの状況に、私は一人、心底困惑していた。


ある意味普通に招かれたつもりの私は、アンティークの香りを堪能しつつ、このお屋敷を歩いていた。

相変わらず両脇の調度品達は豪奢なのだが、姦しくお喋りである。
以前も、何やら話し掛けられた様な気はするがあの時私は半分寝ていた様な感じだった。

何を言われたのかは、全く覚えていないし。
もしかしたら、この子達が勝手にお喋りしているのが聴こえただけなのかも、知れない。


そうして示された扉の彫刻を見つめつつも、「あの時の部屋だ」という事だけは解っていた。

あの、絵が話す、あの部屋だ。

今回も沢山お喋りしていたら、私はちゃんとお詫びできるだろうか…。

どう考えても、そっちの話に気を取られる事必須である。
うむ。

心の中で謎の決意をして、背の高い彼の背後について入った。
そう、名前を思い出せないまま、ここまで来てしまったけれど。

きっとこの部屋に入ったならば、誰かが彼の名を呼ぶに違いない。
うん。


そうして半分楽しくなって来ていた私は、その部屋に入って縮こまる事になる。
何故かと言うと。

その応接室には、予想を超える人数のローブが、集まっていたからだ。



て、言うか………なに、誰………?

家族とかに呼び出されるなら解るけど、何で違う色の人も、いる訳???

豪奢な調度品に沢山の肖像画、更にそこへプラスされたのは圧のある沢山のローブ達だ。

確かに、この応接室は広い。

だがしかし、高い天井、そのほぼ天井近くまでを肖像画が埋めており、それだけでも中々の圧迫感がある。
調度品が豪華な事もあるし、それぞれの絵の密度も、濃い。

きっと話さない絵も、あるんだろうけど。

その殆どが話せるここの絵は、どれも緻密に描き込まれた「なにかが 込もる絵」だったから。

なにしろ実際に居る、人間と同じか、それ以上に圧を発するその絵画達に囲まれた私は、予想外に真ん中の椅子へ縮こまる事になったのだ。



低いテーブルを中央に、奥側のソファーにアリススプリングスと私が座っている。

その、向かい側には。
ブラッドフォードの父、名前は確か………グラディオライトだった気がする。

何故だかあのコンパクトの彼の名は思い出せないのに、一度だけ会ったお父さんの名前が思い出せた自分が可笑しくなって、笑っていた。
勿論、声は出していないけど。

多分、その横に座っている彼の所為かも知れない。

何故か、ブラッドフォードの父の隣にはあの白の長老が座っていて。
彼に対していい印象があった私は、それだけで少し安心しても、いた。

この圧のある空間に、少しでも「抜け」を探すのは大事だ。
なんだか分からないけど。

 この空気に、飲まれたら負ける。

私の「なかみ」はそう告げていて、傍らのフワフワがピッタリと離れない事を見てもなんだろう。


なにしろ、この部屋には。

きっと全区画の長老が揃っているのではないか、という人数と、圧が。

渦巻いて、いたからである。


えーーー。
でも、これって。

ここまでの事、予想してたのかな本部長………。
だったらちょっと、クレームなんですけど…。


正面には見知った顔、しかしその周りには青以外の、全色から。
一人、若しくは二人の偉そうな人達が集まっているのが分かる。

とりあえず、キョロキョロできる雰囲気では無い。

「ご苦労、シュマルカルデン。君はとりあえず、下がっていい。」

「???」

私を上座へ座る様、案内した彼に「用は済んだ」とばかりにそう言うアリススプリングス。

彼の名を思い出したのと、「え?その話で呼ばれたんじゃないの??」という疑惑がぐるぐる回り始めたと同時に「パタン」と扉が閉まる。

それと同時に、部屋中の肖像画が「キロリ」と私に視線を移して。

人以外の物も、人間も、この部屋にいる全員が私に意識を移した所でやって来た「違和感」。


やっぱり………。
不味くないですか、ウイントフークさん…。

糾弾される雰囲気でもない、しかし勿論歓迎でも、なくて。

全員が値踏みする様に私の事を見ているのが、解る。

いや、多分。
私の周りここ以外の人達、全部だよね…………。


「どちらなのか」判らない、アリススプリングス、正面のお父さんあの人からはあの時と同じ色の黄色と紫が見えているけれど、勢いは少し弱い。
私の薬を渡していると、言っていたけど。

あまり回復はしていないのだろうか。

その隣にはただ、真っ直ぐ見つめるあの濃灰青の瞳があって、つい先日見たその同じ色にまた少し安堵する。

流石の私も、この部屋全員が。

生贄派そっち側」だったなら、なんだか居た堪れない。

これから何が行われるのか、それは分からないけれど。
出来る事なら穏便に話し合いたいものだし、もしも身に危険が迫ったならば。
この人達の方が危ない様な、気もする。

ここには、シンもいるし…。

なにしろ私は、この世界を。
ぶっ壊したい、訳じゃないのだ。


そっと膝を押すフワフワの温もりに、ホッと息を吐いて目を瞑った。

まじないのメイドがお茶の支度を終え、そろそろ部屋を出る。
きっとあの人が出て行ったならば。

「その話」が、始まるのだろう。


カートの軋む音と、再びの扉が閉じる音。
それを合図にパッチリと目を開け正面の二人を見た。

うん、多分。

大丈夫、だと…………思う。



そうして。

謎の空気の中、長老達の話を聞く為にじっと様子を窺っていたのだ。


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