透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ 再々

意外な訪問者

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 えっ  でも
   めっちゃ見てる な

  そんなに おかしい?  いや

 でも  そんなに 薄くない し

   なんなら そこまで変わってない 

 いや それはない か。


実際問題、私は「訪問」に関して 何も考えていなかった。

「会えばいい」、そう思っていたし
そもそも「会うこと」、それ自体が自分にとっては高いハードルだったから。

 ある意味 忘れていた
 自分の「見た目」のこと

 真っ白になってしまった ほぼディーの私。


 まあ 他にディーのこと 見た事ある人 いないし
 ん?  いや ??

 肖像画?  あれ って白かったっけ ?? ?


私が自分の中で脱線している間にも、灰色の瞳は観察を止めてはいない。

しかし、その明るい灰色が 以前よりは澄んで見えたから。

私の「心配」は 何処かへ飛んで行って
とりあえず自分の羽衣を掴み、「ワンピースにすれば良かったかな」なんて 考えていたんだ。


「見事だな、その姿。」

「えっ ?はい?  そう ですか?」

些か雰囲気は欠けたかも知れないが、間抜けな返事は避けられたと思いたい。

多分 あの色が 不在な理由はこれも、ある。

 何故だか今日 起きたら自分がほんのり「青」に
 色付いていて。

しかし、自分の姿を改めて確認する事などすっかり忘れていた私は、調度品達の囁きと鏡の声で。
やっと自分が「染められている」事に気が付いて、ついでに赤くなった頬も上乗せされ なんだか「これまでの私が薄くなった程度」に完成していたのだ。

 いやいや まさか
 ここまで? 計画済み とか ??

 てか ホントに 何処行ってるんだろう 。


そうは思いながらも、ふと思い出して顔を上げた。

きっと、じっと見て いれば。
何故ブラッドフォードではなく、自分が来たのか
この人なら説明すると、思ったからだ。

そうして暫く私が黙って観察していると、何かを諦めた様子の 彼は。
思った通り、何故自分がここへ訪れたのかを 話し始めたんだ。


「ブラッドには、婚約者を見繕ったんだ。」

「  ぇっ?」

思わず口に出ていた返事が「へっ」でなかった事に安堵しながらも、手は既に口を塞いでいる。

「私達は依るが戻ってきている事を知っていたが、長老達には話していない。あれから暫く経つ。もう君にあいつと結婚する気は無いのだろうし、それならその方がいいかと思ってな。」

「 ええ、まあ、はい。 そうですね ?」

なんと言っていいのか、分からずとりあえず
首を傾げながらもそれだけ返事を した。

なんとなく、苦笑されている気はするが
それは私に対してではなく、きっとブラッドの事を想像しているのだろう。

なんとなく、解れた彼の雰囲気で それが分かりホッとした。
二人の間が良い雰囲気なのが、伝わってきたからだ。


「まあ、あいつも人気が無い訳じゃ、ない。」

「え、まあ、はぁ。」

ずっと前のお茶会の様子を思い出しながらも、曖昧な相槌を打ち「お兄さん モテないのかな」なんて思っていた自分の記憶を 修正しておく。

 ふーーむ?

  いや しかし  てか この人と。

  なに    話すの  ねえ


  ウイントフーク  さーーーん ????


結局、「ブラッドとの婚約話が丸く収まった報告」をしに来た訳ではない筈である。

確かに、デヴァイの近況等 訊きたい事は、ある。
でも。

  今?  この人 に??

  訊けって  こと?  違うよね ?


私が彼に気を取られている間に、本部長は既に奥へ引っ込んでいる。
小部屋からは何やらカチカチと微かな実験音が聴こえているし。

 ん?  待てよ?  「実験」??

   それか ?


そう、私は「人に会う」練習をしている
それもあるんだ。

「 ふむ?」

そう思って、くるりと視点を変え正面の灰色の瞳を 見る。

 うん?  てか ?

  なにを  どう  見る んだっけ ??


いつの間にか腕組みをしていた自分、何故だか「面白い」という顔をした彼は 同じ様に腕を組んで私を逆に観察している。


 えーー なんか 見てるな
   見てる  まあ  いいけど

 ある意味 この人だとあんまり 気にならない な?

 うん? それって 練習になるんだろうか

  いや とりあえずは 「見て」みようか。


しかし、「嫌な色」を出していない彼に 特段見るものは無い気も する。

いやしかし。

 「見てみる」ことは 有益だろう
 なんとなく だけど。


 そう この人は ずっと前 あの「嫌な色」を
 出してたし

  ん?  
 あれって 確か 祭祀の時 だよね?
 赤黒い 色

  うーん あれは アラルのブレスレットの色

 ん? アラルは??
 てか この人の婚約者は 誰なんだろうか
 
 えーー それって 訊いていいかなぁ

 いかん。
 なんか 違う事が気になってきた。


ぐるぐる ぐるぐると脱線し始めた私の頭
しかし確かに「エネルギーを見よう」としたけれど。

「今の彼」からは、なんら 嫌な色は感じられなく
だからなのか、他の事が 気になり出して。


「 えっ、こう なって終えばこれは私の好奇心がうずうずし始めて あまり観察眼が仕事をしない的な はなし  」

「で?何が聞きたいんだ?」

やっとか、という様に 口を開いたアリススプリングス
その顔には見慣れた「仕方の無い色」の、片鱗が見えていて。

 ふむ?

 この人 結構  

   なったって こと ??

どこまで何が、どうなのか デヴァイの構図は分からないけど。

なんとなく、彼がここに割と頻繁に出入りしている色が 見て取れるのだ。

 うん
 そう 
 これは ここの人達が よく
 私に醸し出す 色だから。


「 ふーん。」

なんとなく、ふと湧き出た寂しさをフッと小さな息で飛ばし
「仲が良いのは いいこと」と自分の中身を上書きする。

「フフッ」

その、自分に湧き出てきた小さな独占欲とヤキモチに 
笑いながらもとりあえず一番聞きたい事を訊く事に した。


「あの。貴方の、婚約者は誰なんですか?」

 あっ 

ちょっとドキドキしたけれど、一瞬 彼の顔に浮かんだ色で。

私には それが誰なのか、解ってしまった。

「 フフフフフ 」

「なんだ。まだ、何も言っていないが。…………いや、こちらの考えている事が、解るのか?」

「えっ?いや、とりあえず良かったなあって。思った、だけですよ?」

そう言ってクスクスと笑う私
それと共に止まる 奥の小部屋の音
同時にカチリと鳴った 扉の音。


「おや、どうだい?楽しそうだね?」

微妙な色を浮かべる灰色の瞳が少しだけ、翳った所で。

タイミング良く、茶器の音と共に白い扉が開いた。
ティーセットを持ったイストリアである。

何故だか珍しく、示し合わせた様に白衣が奥からフラリと出て来て。

それを見て、「お母さんが持ってきたお茶をいつも飲んでいるのか」なんて 私がニヤつこうとしていた顔を改めたのは、すぐだった。

多分、本部長は。
アリスの声の変化に、奥から出て来てくれたのだと その雰囲気で解ったからだ。



そうして 少し。

書斎のいつものソファーには
 本部長とアリススプリングス
 イストリアと 私。

謎の面談の様になっている、この形でしかし
みんなは黙って黙々とお茶を飲んで いる。

茶葉は勿論、定番の糞ブレンド
味は勿論 蒸らしも完璧 イストリアが手ずから丁寧に淹れてくれた いつもの美味しいお茶である。

だが しかし。

 えっ なに この沈黙。


何故だかあそこから、会話が無くなってしまった私達
しかし本部長とイストリアはきっと「何故話が止まったのか」、知っている風で ある。

 えっ
 まさか 私 だけ?

私は一人、「何故話が止まったのか」を解明して「知った顔」をしれっと真似すべく
その真相を突き止めようとチラチラとみんなの色を 観察していた。

 うーん
 でも きっと 二人は。

 この人アリスが 話し出すのを
 待ってる風 なんだよね

 だから 私は 喋らずに この雰囲気から
 「なんでなのか」を読んで
 そう 「知ってる顔」をして しれっと座って
 いれば  いい 筈。


そうして何故だか。

私達の 謎の「沈黙攻防戦」は 
始まったので ある。









 
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