レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

浦野影人

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1章 棄てられたテイマー

14話:決戦・ゴブリンキング

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 三……いや、四メートル以上あるか? かなり大きなゴブリンだな。アルよりは小さく見えるが、ここまで大きいともはやゴブリンじゃないように見えるが、見た目はゴブリンだ。
 
 だが……なんだか様子がおかしいな。黒い靄みたいなものが体から出ている?

「キキ」

「どうしたアトラ?」

「主よ、あのゴブリンはゴブリンキングだ」

「じゃあ中位種ってやつか?」

「いや……あの気配、上位種に近いものを感じる」

「マジか」

「だが私の敵ではない。アトラ殿でも勝つことはできるだろう。そこでだ」

「そこで?」

「エリザベスとアルに戦わせてみないか?」

「それは、二人を強化するためか?」

「そうだ」

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

「おっと、ゴブリンキングが痺れを切らしたようだぞ主」
 痺れを切らしてゴブリンキングが咆哮しながら駆けてきたか。
 
「クソッ、考える暇も無しか! エリザベス、アル、行け!」

「クェッ!!」
 エリザベスとアルは中位種の魔物だ。相手のゴブリンキングは上位種に近い中位種。
 強さだけ見れば勝てない相手ではないが、ゴブリンキングは様子がおかしい。

 あの黒い靄のせいか? 涎を垂らし奇声をあげながら攻撃をしてきた。

 二人とも一旦高度を上げて距離を取り、ゴブリンキングの棍棒をやり過ごす。
 空を飛べるとこういうとき便利でいいな……いや、何だ? 黒い靄が――射出された!?

 ゆらゆらと揺らめいていた黒い靄が、弾丸のように射出されて二人に襲い掛かった。
 
 エリザベスもアルも異変を感じ取っていたのか、無数に射出された黒い靄を避けることには成功したようだが……あの靄、そんなこともできるのか。
 思っている以上に油断ができない相手だ。

 回避したエリザベスが<スピアレイン>を発動。無数の針がゴブリンキングに降り注ぐが、全てを黒い靄が半球状態になって防いでいる。あれはどういう物質なんだ? 黒い霧が物体を防ぐ……未知過ぎる現象だ。

 それを見たアルが突風を巻き起こしたがっ……こっちまで暴風の影響が凄いな。
 
 中心となったゴブリンキングは――やはり無傷か。黒い靄も微動だにしていないように見える。二人では火力不足か?

「ほう、あの靄はああいう使い方もできるんだな」

「なぁ、エリザベスとアルじゃ厳しいんじゃないか?」

「いや、問題ないだろう」
 霞は面白そうに戦いを見てそう答えたが、何か確信があるのか?

 もう暫く様子を見てみるか……まだ周りのゴブリンたちは観戦してるだけだが、いつ動き出すかも分からないからな、そっちも用心だ。

 エリザベス、アル、ゴブリンキングの撃ち合いが続くが――いや、変化が起きた。

 黒い靄がゴブリンキングを離れ、宙に浮かんだままだ。
 射出されたわけでも、攻撃としてあるわけでもなさそうだが、無数に浮かんだ黒い霧は一体――

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
 マジかよ! ゴブリンキングが宙に浮いてる黒い靄に乗って、二人に向かってるぞ! あれは足場にもなるのか!

 エリザベスとアルは飛んで回避してるが、靄の塊は無数に浮いている。

 ゴブリンキングはその足場を伝って二人を追いかけまわしているが――マズイ!
 追われてたアルの周囲に黒い靄が集まって壁になった。
 上下左右後ろと逃げ場を塞がれ、アルが身動きを取れない状態だ。
 エリザベスの攻撃も靄に防がれて通らない……!

「お、おいっ、助けに入らないとマズイだろ!?」

「主よ、アルとエリザベスはあの程度ではやられはせんよ」
 真面目な顔で霞はそう言うが、二人の具体的な戦闘能力を知らない俺からすれば、不安しかないぞ。
 ステータスとかでも見られれば良かったんだがな……。

 アルの目の前までゴブリンキングがやってきて――振りかぶってアルに殴りかかった。
 
 ――が、アルは両翼でその攻撃を防いだが……いや、防げるとは思えない、無事なのか?!

 ゴブリンキングが何度も殴りかかってラッシュを続けているが、角度や距離から状況がハッキリと見えない。
 
 だがアルが苦しむ声も聞こえないし、状況に変化も見えない。ゴブリンキングの攻撃が通っていないのか?
 それに翼でガードしてるってことは、飛べないんじゃないか? どうなってる?

「主よ、エリザベスの必殺の一撃が見れそうだぞ」

「は?」
 霞に言われてエリザベスを見ると、エリザベスの前に長く鋭い、白いランスのような針が生成されている……。あれがエリザベスの必殺の一撃なのか?

 エリザベスはゴブリンキングの横に位置取っている。
 そして体の前に出現した大きなランスのような針が回り始めた。

 回転率が上がりきったところで、ランスはエリザベスから弾かれたように様に飛び出した。

 ゴブリンキングは異変に気付き、ランスをガードしようと体の向きを変えて、棍棒でガードしようとしたが――

 ――ランスは黒い靄ごとゴブリンキングの腹を貫いた。

 貫かれたゴブリンの体はそのまま落下して動かなくなった。

 落下と同時に、それまで静まり返っていたゴブリンたちが騒ぎ出したが、我先へと逃げ始めたみたいだな。
 
 アルを囲んでいた靄も消え、それまでサンドバッグにされていたアルは、飛び回って無事な姿を見せてくれているが……アルは防御能力に長けているのか?

 そして、大きな光の玉――経験値が、ゴブリンキングの体から出てきた。
 
 光の玉はゴブリンキングから離れ、エリザベスとアルに吸収されていったが……戦っていないアトラや霞のところにきていないし、俺のところにもこないか……。

 アルが逃げ回っているゴブリンたちに魔法を放っている。あれだけ殴られていたのに、そこまで余裕があるのか。
 
 それまで動かなかったエリザベスも、後れを取らないようにとゴブリンの掃討を始めたな。攻撃の反動で動けなかったのだろうか?
 にしてもアルはともかく、エリザベスにあんな威力のある技があったとはな。驚かされたぜ。

 だが攻撃するまで時間がかかっていたところや、反動で動けなくなっているところを見ると、単独での使用は難しいだろうな。準備中や放ったあとに攻撃されて防がれるのがオチか。
 今までは兵隊蜂とか働き蜂がいただろうし、余裕を持って使えていたんだろうが、ここでも安全に使えるように環境を整えてやらないとだなぁ。

 ともあれだ。これでゴブリンキングは倒した。ゴブリンの掃討も進んでるし、ツインテウンディーネの依頼は達成するだろう。
 
 あとは捕まってる女たちの救出だな。



 ▽   ▽   ▽



 ゴブリンたちの掃討も終わってから異変は起きた。
 
 エリザベスの体が白く光っているんだが……。

「ほう、エリザベスは進化するようだぞ」

「マジか」
 進化。アトラのときは見逃してしまったが、こういう風になるのか。眩しい。

 だが待て、エリザベスは人間の子供サイズのミツバチだが、何に進化するんだ?
 ここからスズメバチ形態にでもなるのか?
 
 徐々に光が収まってきた。そしてそこにいたのは――
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