15 / 74
1章 棄てられたテイマー
15話:裏切り ~ダークエルフ・ベルカの災難~
しおりを挟む「ゴブリンに憑き物が出た? それは本当? シーリア」
「そうなのよベルカ、狩りから戻ってきた子が見たって言ってるわ」
憑き物――それは黒い靄に憑りつかれた魔物を指す言葉。
いつそれが生まれたのかは誰も知らない。
憑りつかれた魔物は憑き物となり、黒い靄によって自身の限界を超えた力を発揮する。
知られているのはそれだけの、謎の多い存在ね。
山奥にいた地竜も憑き物になっていたけど、あれは正に悪夢だったわ……。
アイツに私の妹や仲間たちは……くッ!!
……そして今回、ゴブリンに憑き物が出たという報告。
雑魚ゴブリンが憑き物になっても脅威には感じられないけど、油断はできないわ。
それだけ憑き物は脅威的で、未知数な相手。それに時間をかけてしまえば、更に力を付けてしまうだろうし……。
そうなる前に仕留めないと、この村が甚大な被害を受けてしまうかもしれない……。
「お困りのようだなベルカ、手を貸してやろうか?」
「……カシウス。いらないわ、どっか行ってちょうだい」
「へっ、相変わらずつれない女だな、お前は」
「カシウス様っ、ベルカよりも私たちと遊びましょうよ!」
「おうおう、そうだな」
「ふぅ……」
カシウス――シーリアについで二番目の次期族長候補だけど、性格や女癖が悪すぎる。
武力は高いんだけど、素行の悪さで二番手ね。それでも族長の座を狙っている面倒な男だわ。
「おーーーーい!!!!」
この大声は……ジェニスね。
「ベルカ! 憑き物のゴブリンの巣が分かったぞ!」
「本当!?」
「あぁ、ここから南にいった場所にある、崖下のデカイ洞窟だ!」
憑き物の巣が判明したのは大きいわ。そいつが力を付ける前に叩くべきね。
「わかったわ。準備して向かいましょう」
「おう! シーリアにも話してくるぜ!」
▽ ▽ ▽
「それで、どうしてカシウスがいるの?」
「シーリアに話してるところを聞かれちまってな……」
「なんだよ水くせぇなベルカ。村の危機に、村一番の力を持つ俺がいて、なんか不満なのか?」
「そうね、不満だわ」
コイツは何を考えているか分からない。同行させるのは危険すぎるわ……。
「ごめんなさいねベルカ、お父様がカシウスも同行させろって言っていたのよ……」
「そういうことだ。族長命令に逆らうのか?」
「ッ……!」
族長の命令なら仕方ない……確かに戦力としては一番だし、憑き物を討伐するならその力は必要になるかもしれない。だけど――
「オラッ、いつまでグズグズしてんだ。憑き物が力つける前に仕留めにいくぞ」
「あっ、オイ! 何お前が仕切ってんだよ!」
「……ジェニス、いいわ。行きましょう。カシウスの言う通り、時間が惜しいわ」
討伐のメンバーは私、ジェニス、シーリア、そしてカシウスの四人。
他の仲間は村の守りに回してるけど、これでいい。下手に被害が増えるよりも、少数精鋭での行動が望ましいわ。
それに、カシウスが何かしようとしても私たちは三人がいる。絶対に変なことはさせない
▽ ▽ ▽
「カシウスッ……!! これは一体どういうこと!?」
信じられないことに、洞窟の奥深くに入ったところで、カシウスが私たちの動きを封じた。
「アーーーーッハッハッハッハ!! こいつぁ笑いが止まらねぇぇーーーーぜ!!!!」
「クソがッ……!!」
「そんな……体が動かないなんて……!」
カシウスの手には魔道具が……あれで私たちの動きを封じたのね……!
「いやぁこんな上手くいくなんてなぁ。良い眺めだぜぇベルカ」
「カシウス! 何を考えているの!!」
「ナニってそりゃ、お前たちをゴブリンに始末させんだよ」
コイツッ……! そこまで墜ちていたのッ!!
「テメェッ! 憑き物はどうすんだよ!!」
「相変わらず威勢だけはいいなぁジェニス。憑き物程度俺一人でどうにでもなるだろ。たかがゴブリンだぜ?」
「カシウス! 私が戻らなかったらお父様が怪しむわよ!」
「大丈夫だシーリア。善戦虚しくシーリアは憑き物に囚われてしまいました。って報告しといてやるからよ。安心してゴブリンの子供を産んでいいぞ」
「この下種ッ……!!」
「クックックッ……おっと、そろそろゴブリンたちのご登場だ。せいぜい優しくシてもらえるよう祈るんだなァ!! アーーッハッハッハ!!」
「カシウス……カシウーーーーーース!!!!」
クッ……ゴブリンたちが洞窟から出てきた……ここまでなの?
「ギャッギャ」
「ギャギャ」
「ギャーーギャッ」
……そんな……嘘……信じられない……アレは……ゴブリンなの……?
▽ ▽ ▽
「なんだアレは……! オレが見たときはあんな姿じゃなかったぞ……!」
「一体どういうことかしらね……」
「……」
ゴブリンの巣に連れ込まれたけど、私たちはまだ無事……。
「イヤァァァァァァーーーー!!」
「誰か助けてェェェ!!」
いや、危機的状況なのは変わらないわね……。先に他の種族の女の子たちが……くッ。
「カシウスの野郎……戻ったら覚えてやがれ!」
「……戻れたらいいわね」
シーリアの言う通り、戻れる可能性は限りなく低い。
手足は縛られたまま。魔法もつけられた魔道具によって封じられてしまっている。
おそらく襲った村から奪った魔道具かしらね……。
それよりも、憑き物があそこまで変化していたのは大きな誤算だったわ。
あんな巨大なゴブリンは見たことがない。このままだと本当にマズイわね……。
何か、何か手立てはないの……!?
12
あなたにおすすめの小説
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる