16 / 74
1章 棄てられたテイマー
16話:圧倒的強者 ~ベルカの疑問~
しおりを挟むあれからどれだけ時間が経ったかな……。
他の種族の女の子たちもだいぶ人数が減ってきた。次はいよいよ私たちの番かしらね……。
「ん……? ゴブリンたちの様子がおかしいぜ?」
「殺気立っているわね……」
ジェニスとシーリアの言う通り、ゴブリンたちの様子がおかしい。
洞窟に誰か入ってきたの……?
カシウス? いや、カシウスがやってくるとは思えない。別の村の誰かかしら……。
――だとしたらこれは希望だわ。その知らない誰かが、あの憑き物ゴブリンを倒してくれれば、私たちは助かる!
お願い、名も知らない誰か! どうかあの憑き物を倒して私たちを助けて……!!
▽ ▽ ▽
「アル、捕まってたダークエルフたちはこやつらか?」
「クエッ」
――信じられない光景が私の目に映っていた。
ウンディーネ様とアルゲンタヴィス、人と虫が混ざり合ったような、今まで見たことのない魔物が私たちの前に現れたけど……蜂みたいな見た目だし、もしかしてクイーンノーブルビーの進化系……?
ウンディーネ様は縄張りを持ち、自分の縄張りから動くことは滅多にないとされている。
ましてや、他の魔物を従えてゴブリンの巣へやってくるなんて……一体何がどういうことでどうしてこんなことが起きてるの!?
私たちはこのあとどうなってしまうの……?
「アル、全員の拘束を解いてやれ」
「クェッ」
「っ」
アルゲンタヴィスの風魔法で拘束していた縄が切り裂かれた……助けてくれた……?
そ、そうだ、お礼! お礼を言わないと!
「あっ、あのっ、助けて頂いてありがとうございます! ウンディーネ様!」
私に続いてジェニス、シーリア、他の女の子たちも膝をついて頭を下げた。
上位種上位大精霊であらせられるウンディーネ様に頭が上がる存在なんて、この森にはいない。
ましてや私たちを助けてくれるなんてこと、夢物語でもない限りありえない。
本当に何が起こっているの???
「礼は我らが主に言うとよい――が、その汚れたままの姿ではダメだな……この辺の布で良いか……」
ウンディーネ様が汚れたボロ布を集めた。一体何を――え!?
生成された水の中に入れて……洗ってるの?!
「……よし、清潔になっただろう。これを使って各自身を清めよ。それが終わったら出てくるがよい」
それだけ言って、ウンディーネ様はクイーンノーブルビーと部屋から出て行った。アルと呼ばれたアルゲンタヴィスが残っているけど、見張りかしら……。
ウンディーネ様がまとめた汚れたボロ布は、一瞬で汚れが落ちて奇麗な布に変わって――温かい……。
これで体を拭いて出てこいと仰られていた。もしかして身分の高い者がきている……?
――まさか水の女神様!?
「……」
「……」
「……」
私たちは無言で頷き合い、奇麗な布で体を拭いた。
▽ ▽ ▽
体を拭いて汚れを落とし、部屋から出た私たちの前に、またしても信じられない光景が映った。
水の女神様はいなかった。でも――周囲には大量のゴブリンの死体。憑き物だったゴブリンは胴を何かで貫かれ、大きな風穴が空いていた。
風穴は――あの蜘蛛、グラットンスパイダーかしらね……隣にはウンディーネ様の眷属として知られる、あのアサルトヒポポタマスがいるなんて、もう何がなんだがわからない……。
グラットンスパイダーと遭遇したら、まず助からないと言われている危険な魔物。しかも赤い姿からして亜種かしら……そもそもこんな場所にいていい存在ではない。本来はもっと山側にいるはず……。
アサルトヒポポタマスもこんな場所にくるような魔物じゃない。それがどうして……。
そしてグラットンスパイダーの背中の上で誰かが寝ている。人族……?
ウンディーネ様はそれを慈しむように眺めていた。
こんな場所にいるなんて、一体どんな人族? 近づいて確認したいけど、ウンディーネ様たちがこっちを見た……。
グラットンスパイダーとも視線が合っちゃったし、生きた心地がしないわ……。
私たちは本能的に、膝をついて頭を下げていた。
絶対強者を前にして、対等な状態で話ができるわけがない……!
「ウンディーネ様、全員身を清め、参りました」
「うむ。主が目を覚ましたら今後の行動を決める。それまで各々好きに休むがよい。そのまま住処に帰るのも自由にするといい。だがダークエルフたちは一緒に村に行ってもらうため、ここに残ってもらう」
「「「――はっ!」」」
ウンディーネ様が主と呼んでいた――あれは人族――人族がウンディーネ様の主?――なんで?――人族はテイマー?――なんで??――テイマーがウンディーネ様をテイムした??――まさかグラットンスパイダーも???――
…………ダメだわ、無理。理解が追い付かない。本当に何が起こっているのかしら……。
でも、テイマーだなんてね……。
「ああそうだ。そんな畏まる必要はない。主が起きたら驚いてしまうからな」
ウンディーネ様はいたずらをする子供のように笑っていらっしゃる。
そんなにあの人族を気に入っているの……? 一体どんな人族なのかしらね……。
もしウンディーネ様やグラットンスパイダーたちを支配においているなら、あの人族を味方に引き込めれば――
「……そうそう、あまり主に変な気を起こさないように気を付けろ。私が許しても、アトラ殿が許されるかな?」
「キ」
――心が読まれたの!?
……グラットンスパイダーから尋常じゃない殺気を感じる。余計なことは考えないほうがいいわね……。
「はっ……肝に銘じておきます。失礼します」
と、とにかく一度この場から下がりましょう。こんなプレッシャー、命がいくつあっても足りないわ……。
▽ ▽ ▽
「一体なんだよありゃ……」
「多分、あの人族の男の子がテイマー、よねぇ……」
「えぇ、多分そうね。なんでここにいて、ウンディーネ様たちと一緒にいるのかはわからないけれど、私たちは今こうして無事に生きているわ」
「生きた心地がしねーけどな……」
「そうね……」
ジェニスとシーリアの言う通り、助かりはしたけど未だ生きた心地がしないわ……。
好きに帰っていいと言われた獣人族の女の子たちも、身動きが取れていないしね……。
「あ、あの……」
「あ?」
狼人族の少女が話しかけてきたわね。何かしら。
「ジェニス、そんな威嚇するような真似やめなさい」
「別に威嚇なんてしてねーよ……」
「フフ」
ジェニスは男勝りなところがあるから、普通の女の子だと萎縮しちゃうのよね。
シーリアも笑ってないでフォローしてくれてもいいのに。
「それで、どうしたの?」
「あ、あの、私たちもあなた達に付いていってもいいですか……?」
狼人族の少女の申し出は理解できる。この危険な森を武具もなしに出るのは自殺行為だわ。別に他の種族を村に招き入れてはいけないという掟もないし、問題ないでしょう。
「ええ、構わないわ。私たちといるほうが安全だし、賢い選択ね」
「あ、ありがとうございます!」
ウンディーネ様一行の戦力を考えれば、今ここが一番安全なのは間違いない。
……あとはあの人族が目を覚ますのを待つだけね。
12
あなたにおすすめの小説
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる