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あなたは、いりません
あなたは、いりません
「エルランド様、私たちはいつ結婚しますか?」
私たちの婚約が決定したのは三年前。
公爵家の我が家から、侯爵家の彼に婚約を申し込んだ。
私は幼い頃から、彼が好きだった。
婚約が決まった時、彼も私と同じ気持ちなのだと舞い上がった。
「デヴュタントも終えていないのに、結婚なんて……」
「そうですよね」
彼は私のことを最優先に考えてくれる。
デヴュタントを終えたら、結婚。
もしかしたら、デヴュタントの日にプロポーズされるのではないかと期待していた。
私のデヴュタント。
「今日、エルランド様からプロポーズされるのかしら?」
期待しながら彼のエスコートを受け、彼色のドレスを身に纏いパーティーに参加。
彼は、私のドレスの色が彼の瞳の色だと気付いただろうか?
彼は寡黙なので『綺麗』『可愛い』『似合っている』と、一度も言われたことがない。
いつも、今日は言ってくれるのかもしれないと期待しエスコートを受け会場に到着してしまう。
パーティーが始まり、ダンスへと移る。
「エルランド様、ダンスをしましょう?」
「……ダンスは苦手なんだ」
苦手と話すので、ダンスを強要することはしなかった。
そんなことをしてしまったら、彼に嫌われる。
嫌われたくない思いから、笑顔で納得する。
「そうなんですね。分かりました」
「挨拶してくる。君も、友人達と挨拶するべきだ」
パーティーは社交の場。
挨拶の邪魔は出来ない。
私も彼と一緒に挨拶周りをしたいと思ったが、私に友人を優先するよう告げるので彼の提案を受け入れる。
「そうですね」
パーティーの間、私は常に彼を意識していた。
彼の方は、男性たちとの会話に盛り上がり私に気づく様子はなかった。
「もう、レリーナ様ったら、エルランド侯爵ばかり見て」
何度も彼を確認する私に周囲も気づき、揶揄う。
「申し訳ありません」
「いのよ。エルランド侯爵様は素敵な方ですものね。お二人の結婚は、いつ頃なのかしら?」
「まだ具体的な日取りは決まっておりません」
「まぁ、そうなのね。二人の結婚式、楽しみにしているわ」
「はい」
パーティーが終わり、数日。
彼が我が家に尋ねて来た。
きっと、結婚の話。
緊張しながら、彼が結婚について切り出してくれるのを待った。
「……それでは、今日は失礼します」
「え? あの……エルランド様?」
「なんでしょう?」
「その……私たちの結婚の話は?」
「……デヴュタントも終ったばかり。結婚は急ぐ必要ないと思う」
「……では、いつ頃とお考えですか?」
「そう、焦る必要はない」
そう言って、彼は去って行ってしまった。
そのこともあり、私から切り出せない日々が続いた。
「ユリアンナ様が、結婚?」
あれから三年が経過し、同年代の令嬢からの結婚式の招待状が届いた。
私のパートナーとしてエルランドと共に。
その時に、再び尋ねた。
「私たちは、いつ頃結婚しますか?」
「その話はパーティーの後にしませんか? 今日は、友人の結婚式だ」
「……そうですね」
目の前の幸せそうな二人を祝福する。
パーティーが終わり、数日後にエルランドが訪れる。
今日こそプロポーズされると信じ、朝から気合を入れていた。
「レリーナ様に伝えていなかったが、公爵家に婿入りする前に侯爵領地で経験を積む事になった」
「え? どうして? だって……パーティー後に結婚と……」
「……ああ。パーティー後に話そうと思っていた」
「……なら、そう言ってくれたらよかったのに……侯爵領には通いですか?」
エルランドの領地は王都から離れている。
通いは難しいだろうと思いながらの、質問。
「いや、侯爵領に滞在する予定、当分は戻ってこれない」
「当分とは、いつぐらいですか?」
「当分は当分だ」
「……分かりました。いつ、出発なさるのですか?」
「明日には」
「明日ですか? それは突然ではありませんか?」
「ああ」
「どうして、そんな急に?」
「以前から考えていた。ただ、パーティーを終えてからと考えていた」
「もっと早く教えていただきたかったです」
「友人のパーティーを楽しみにしているようだったので」
「……私のためですか?」
「……明日の出発は忙しいので、今日挨拶に来た」
「私に見送りに来なくていいということですか?」
「俺を気にする必要はない」
エルランドは去って行ってしまった。
私たちの結婚は、彼が侯爵領で学び終えてからになった。
翌日、私は彼を見送りたい気持ちを抑え屋敷に留まっていた。
「そうだわ、レリーナ様。結婚式の日取りは決まったのかしら?」
お茶会では、いつ頃結婚するのか尋ねられる。
同年代の令嬢が結婚したので、私の結婚についてもそろそろなのではないかと思われている。
公爵令嬢と侯爵令息の結婚。
周囲も気に掛けている。
「それが、エルランド様が結婚の前に当主として相応しいよう領主として経験を積みたいと……」
「まぁ、結婚式を挙げてからでも遅くはないのに」
「エルランド様は、責任感のある方ですから」
お茶会に呼ばれる度に同じ話をして、時間の経過とともに「エルランド様は、いつ頃戻るのかしら?」と質問を受ける。
彼には、手紙を何度も出した。
だけど、彼からの返事はない。
私たちの婚約が決定したのは三年前。
公爵家の我が家から、侯爵家の彼に婚約を申し込んだ。
私は幼い頃から、彼が好きだった。
婚約が決まった時、彼も私と同じ気持ちなのだと舞い上がった。
「デヴュタントも終えていないのに、結婚なんて……」
「そうですよね」
彼は私のことを最優先に考えてくれる。
デヴュタントを終えたら、結婚。
もしかしたら、デヴュタントの日にプロポーズされるのではないかと期待していた。
私のデヴュタント。
「今日、エルランド様からプロポーズされるのかしら?」
期待しながら彼のエスコートを受け、彼色のドレスを身に纏いパーティーに参加。
彼は、私のドレスの色が彼の瞳の色だと気付いただろうか?
彼は寡黙なので『綺麗』『可愛い』『似合っている』と、一度も言われたことがない。
いつも、今日は言ってくれるのかもしれないと期待しエスコートを受け会場に到着してしまう。
パーティーが始まり、ダンスへと移る。
「エルランド様、ダンスをしましょう?」
「……ダンスは苦手なんだ」
苦手と話すので、ダンスを強要することはしなかった。
そんなことをしてしまったら、彼に嫌われる。
嫌われたくない思いから、笑顔で納得する。
「そうなんですね。分かりました」
「挨拶してくる。君も、友人達と挨拶するべきだ」
パーティーは社交の場。
挨拶の邪魔は出来ない。
私も彼と一緒に挨拶周りをしたいと思ったが、私に友人を優先するよう告げるので彼の提案を受け入れる。
「そうですね」
パーティーの間、私は常に彼を意識していた。
彼の方は、男性たちとの会話に盛り上がり私に気づく様子はなかった。
「もう、レリーナ様ったら、エルランド侯爵ばかり見て」
何度も彼を確認する私に周囲も気づき、揶揄う。
「申し訳ありません」
「いのよ。エルランド侯爵様は素敵な方ですものね。お二人の結婚は、いつ頃なのかしら?」
「まだ具体的な日取りは決まっておりません」
「まぁ、そうなのね。二人の結婚式、楽しみにしているわ」
「はい」
パーティーが終わり、数日。
彼が我が家に尋ねて来た。
きっと、結婚の話。
緊張しながら、彼が結婚について切り出してくれるのを待った。
「……それでは、今日は失礼します」
「え? あの……エルランド様?」
「なんでしょう?」
「その……私たちの結婚の話は?」
「……デヴュタントも終ったばかり。結婚は急ぐ必要ないと思う」
「……では、いつ頃とお考えですか?」
「そう、焦る必要はない」
そう言って、彼は去って行ってしまった。
そのこともあり、私から切り出せない日々が続いた。
「ユリアンナ様が、結婚?」
あれから三年が経過し、同年代の令嬢からの結婚式の招待状が届いた。
私のパートナーとしてエルランドと共に。
その時に、再び尋ねた。
「私たちは、いつ頃結婚しますか?」
「その話はパーティーの後にしませんか? 今日は、友人の結婚式だ」
「……そうですね」
目の前の幸せそうな二人を祝福する。
パーティーが終わり、数日後にエルランドが訪れる。
今日こそプロポーズされると信じ、朝から気合を入れていた。
「レリーナ様に伝えていなかったが、公爵家に婿入りする前に侯爵領地で経験を積む事になった」
「え? どうして? だって……パーティー後に結婚と……」
「……ああ。パーティー後に話そうと思っていた」
「……なら、そう言ってくれたらよかったのに……侯爵領には通いですか?」
エルランドの領地は王都から離れている。
通いは難しいだろうと思いながらの、質問。
「いや、侯爵領に滞在する予定、当分は戻ってこれない」
「当分とは、いつぐらいですか?」
「当分は当分だ」
「……分かりました。いつ、出発なさるのですか?」
「明日には」
「明日ですか? それは突然ではありませんか?」
「ああ」
「どうして、そんな急に?」
「以前から考えていた。ただ、パーティーを終えてからと考えていた」
「もっと早く教えていただきたかったです」
「友人のパーティーを楽しみにしているようだったので」
「……私のためですか?」
「……明日の出発は忙しいので、今日挨拶に来た」
「私に見送りに来なくていいということですか?」
「俺を気にする必要はない」
エルランドは去って行ってしまった。
私たちの結婚は、彼が侯爵領で学び終えてからになった。
翌日、私は彼を見送りたい気持ちを抑え屋敷に留まっていた。
「そうだわ、レリーナ様。結婚式の日取りは決まったのかしら?」
お茶会では、いつ頃結婚するのか尋ねられる。
同年代の令嬢が結婚したので、私の結婚についてもそろそろなのではないかと思われている。
公爵令嬢と侯爵令息の結婚。
周囲も気に掛けている。
「それが、エルランド様が結婚の前に当主として相応しいよう領主として経験を積みたいと……」
「まぁ、結婚式を挙げてからでも遅くはないのに」
「エルランド様は、責任感のある方ですから」
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彼には、手紙を何度も出した。
だけど、彼からの返事はない。
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