【完結】前世を思い出し、浮気王子とは婚約解消。対立候補だった侯爵令息に軽い気持ちで近付いたら、抜け出せなくなった

天冨 七緒

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現実逃避から目覚めると

体調面は問題がなかったので学園の寮に戻る事になり一応学園の地図を貰い、明日からの学園に備え、寮の場所やらを確認しながらフラフラと歩き回った。
その間何人かの生徒にすれ違い、声を掛けられることは無かったが視線は感じる。
理由は大方想像できる。
屋敷を出る直前に親から「王子との婚約は解消された」と報告を受けた。
二人は必死に笑顔で送り出そうとしてくれていたのがわかる。
王子との婚約は二人が望んでいたことではなく…国の為。
俺が王子に惚れたわけでも、親が王家に打診したわけでもない。
国の命令だ。
記憶を失った俺には、その役は担えない。
俺は用済み…必要ないとあっさりと王家は俺を切り捨てた。
何年もの教育や品行方正であった過去はなんの意味もなく、今現在の俺が国の役に立つのか立たないのかで判断された。
俺としては懸命な判断だなと思ったが、両親の方が悲しんでいるように見えた。
いつ記憶が戻るか分からない男をこれまで通り婚約者、次期国王様の補佐には向かないのは誰が見ても納得する事だ。
そこに愛があれば何か変わったのだろうが、俺たちに愛はない。
あるのは義務だけ、婚約者が記憶喪失になったと言うのにあの男は見舞いにも来なければ手紙も寄越さなかった。
こちらからの婚約解消にも大手を振って了承したんだろうなあの様子だと。
これであのピンク頭と幸せになれると喜んでいるに違いない。
邪魔物が消え王子とピンク頭は幸せになり、素晴らしき国王と王妃になりました。
そして物語の脇役の元婚約者アティランは自由な人生を謳歌しました。
だろ?

「ぁっ、王子の元婚約者様のグラキエス様じゃないですか?どうされたんですか?」

振り向けば気の強そうな猫目の男が立っていた。

「誰だ?」

「…記憶を失われたと言うのは…本当ですか?…」

眉尻を下げ悲しげな表情をした男。
…コイツ…エロいな。

「なっなんでしょう?」

「ん~?」

先程の強気な態度が一転、狼狽える姿も可愛いな。
俺が距離を詰めに行くと恐怖からか後ずさっていく。
肉食獣に追い詰められた獲物のようで、興奮する。

「ぁっ」

既に自分が壁にまで追いやられている事を知ると途端に震えだした。
やべぇコイツ…いいなぁ。
それにこの世界に来てからやたらとデカイ奴らばかりだったけど、コイツは俺より十センチ程小さい。
俺にとって丁度良いサイズだ。
壁ドンのように勢いで相手を追い詰めるのではなく、ゆっくりと退路を断っていく。
片方ずつ手を付き逃げ道を塞がれていくのを怯えた顔で耐えていたので、顔を近付け目線を合わす。

「…なっなんてすか?」

「お前、名前は?」

「…エ、エストレヤ イグニス…です。」

「ふぅん、エストレヤ…。」

頬に優しく手を添えるとビクッと分かりやすく反応した。

「…ぁ……んっんんん?ふっんんっんふぅんぁんぁんあん」

俺が唇を合わせると、驚きで目を見開いていたが次第に瞼が降りていった。
俺が舌で唇を撫でれば少しずつ開いていき、中に入り込めば簡単に舌を捉える事が出来た。
エストレヤも受け入れたのか、俺の舌に舌を絡めだす。
戸惑いながらたどたどしく絡めてくるのを知るとキスが初めてなのがわかる。初々しくて可愛い…。
強気な性格に整った顔だけでなく気の強そうなつり目、しかも俺より小さい。
全てが俺の好みだった。
拒絶なのか立っていられないからなのか俺の肩に必死にしがみつく姿を見ると、余計キスが止められなくなった。

「んっんぁんあんんっあんっあぁはぁはぁはぁはぁ」

唇が離れると息を荒くし、涙目で見つめてくる。
先程よりも力強く俺にしがみつき涙を流している姿に興奮する。

「ふっ、お前可愛いな」

「はぁはぁはぁ…ふぅぇっ?ではぁはぁ」

「なぁ、お前婚約者いんの?」

俺に視線を合わせたまま首を振った。

「ふぅん…なら俺と婚約するか?」

なんだろうな…男しかいない世界で凹んでいたはずなのに理想の人間を見つけたら離したくなくなった。
こいつを必ず手に入れてやる。

「ぇっ?…んっんぁんあんんっんんっあむっんふっん」

返事を急かすように再び唇を奪えば、エストレヤは足の力が抜けたのかズルズルと座り込んでしまった。
完全に逃げ道を塞いだ。

「なぁ、どうするエストレヤ?」

エストレヤはキスの余韻で可愛くなっていた。

「ぇっぁっ…本当に…僕でいいの?」

「あぁ」

「グラキエス様は忘れてるから…僕は…」

「これから知っていけば良いだろ?」

エストレヤの膝の裏に手を差し込み抱き抱えた。

「うわっ軽っ」

立ち上がって気付く、エストレヤは見た目より軽かった。
コイツ大丈夫なのか?

「グ、グラキエス様っ」

「大人しく掴まってろ」

「はっはぃ」

「…ふっはは、掴まってろって言ったけど掴むなよ。そういう時は首に腕を回すんだよ」

エストレヤは俺の両胸辺りを掴んでいた。

「えっ?…こっこう?」

恐る恐る俺の首に腕を回した。
こういう経験も知識もないんだとわかると、余計俺のものにしたくなる。

「俺の部屋とエストレヤの部屋どっちが良い?」

「ぇっぁっ…じゃあ…グラキエス様…の…部屋…で…。」

「あぁ」

自ら獲物の巣穴に入り込むなんて無防備過ぎる。
きっとわかってないんだろうな…。
エストレヤを抱えながら歩く姿を数人の生徒に目撃された。

「ぁ…ぁの…本当に、グラキエス様…ですか?」

「ん?どうだろうな。」

そんなの、俺にもわかんねぇよ。
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