【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ

天冨 七緒

文字の大きさ
89 / 177

控え室まで

しおりを挟む
エストレヤへ近寄り、持っていたグラスをテーブルに置いた。
でないと、金髪野郎の頭にぶっかけてしまいそうだったから手。

「エストレヤッ」

「…ぁっ…」

俺に気づいたエストレヤの表情は見るからに悪く、何が起きたのかは容易に想像ができた。
たった飲み物を取りに行った僅かな時間に起きた出来事。
きっと、コイツは俺がエストレヤから離れるのを見逃さなかったのだろう。
金髪野郎がなにに執着しているのか全く理解できなかった。

「エストレヤ着替えに行くぞっ。」

近くに待機していた学園が雇った使用人に案内される。
今、金髪野郎と会話しても冷静ではいられない自信があった。
そうなれば、相手の胸ぐらを掴んでいる気がする。
公爵家ではあっても、相手は王子…どんなことであろうと、百パーセント俺が罪に問われる。
目撃者が多数いたとしても、王子が関わっていれば真実を話すとは限らない。

コイツを無視してエストレヤと二人で消えることにした。

「待て。」 

腕を捕まれたが反射的に払い除けていた。
払い除けられるとは思っていなかったのか驚きと共に顔を歪める金髪の姿があったが、それすらも不快だった。

「…話がある。」

押し殺したような声で話してくる。

「俺にはない。」

今はお前の顔なんか見たくねぇんだよ。
エストレヤの肩を抱き使用人の後ろを歩き控え室へと向かうも、後ろから誰かが付いてきた。
僅かに振り向き足元だけで相手を確認した。
付いてきていたのは…

王子だった。

「…アティラン。」

不快だ。
俺はあんたに名を呼ぶ許可を出していない。
婚約解消したんだ話し掛けるな、放って置けよ。

金髪野郎に反応すること無く歩き続けた。
心配するようにエストレヤは俺の服の裾をクンクンと引っ張った。
エストレヤを見つめ笑顔を返すも、控え室を目指した。
エストレヤが何を言いたいかは予想できたが言わせない。
あんな奴放っておけば良いんだ。

「…グラキエス…話がある。」

俺の考えを読み取ったのか呼び方を変えてきた。

「…俺にはねぇよ。」

「少しでいいんだ…。」

「断る」

「…そいつが…着替えている間だけ…。」

そいつってなんだよっ。

「その前に言うことあんだろ?」

「………」

「わかんねぇのか?」

「………」

「エストレヤに謝罪しねぇ限り話しなんかねぇよ。」

王子ってプライドが邪魔で謝罪できねぇのか?
初対面の時もお前は謝罪しなかったな。
俺が怪我して記憶を失ったっていうのに…。

それなのに、自分の話だけは聞いてくれ?ふざけんなっ。

「………」

「…ぼ、僕は…」

「黙ってろ。」

気の弱いエストレヤなら「大丈夫」と言って終わらせようとすることなんて考えなくても分かる。

「……飲み物を…掛けたことは…悪いと思ってる。」

睨み続けていると漸く反省を口にした…。

「……「思ってる」じゃねぇだろ?」

「……すまなかった。」

「…ぃぇっ…はぃ」

事故なら気にしないが悪意があるなら話しは別だ。
エストレヤが許しても俺は許さねぇぞ。
そもそもエストレヤに何の恨みがあんだよ?
俺に不満があるなら直接俺に言えよな?
エストレヤが何かしちまってなら俺が出るのは違ってるが、もし俺に不満があってエストレヤにぶつけたんなら不愉快でしかない。

「…少しでいいんだ…。」

図々しくねぇか?
大体何をそんなに話したいんだよ?
エストレヤを「そいつ」と言っている時点で気にくわねぇんだよ。

「………」

「あの…僕一人で着替えてくるから…。」

何度断っても諦めない王子を見兼ねてエストレヤが優しさを見せてしまった。
こんな奴気にしなくてもいいんだけどな。

「控え室は突き当たりの左の扉だ、グラキエス私達は王族専用の控え室に…」

「断る。」

「…ぇっ。」

王族の控え室?
そんなとこ行くわけねぇだろう。

「エストレヤの隣の控え室じゃだめなのかよ?」

「…防音が…。」

「そんなに重要な話かよ?」

「…あぁ」

「この部屋は?王族専用って上の階だろ?面倒だ、ここでいいだろ?エストレヤの部屋からも遠い。」

「……分かった。」

「エストレヤ…すぐに来いよ。」

「ぅん…んっんふぅんっんんっんぁむっんん」

分かれる前に唇を奪った。
視線を感じながらもエストレヤの唇を離さなかった。
睨みたきゃ睨めよ、不愉快なら俺に関わらなきゃ良いだろ。

「俺はお前の婚約者だから。」

「…ぅん。」

唇を離しおでこを付けた距離で「婚約者」だと念を押した。
これはエストレヤにというよりも奴に見せ付けるためだった。
エストレヤは頷き使用人と共に歩いていく背中を見つめた。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話

鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。 この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。 俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。 我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。 そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

処理中です...