【完結】浮気しておきながら婚約は継続してほしい? 何言ってるの?

天冨 七緒

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悪い事したい・その九……ひと夏の経験

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 部屋にいると、ここが領地なのか王都なのか分からない。
 長期休暇の間、ずっと部屋にいるのももったいない。
 何かしたいと思うも、何をしていいのか分からない……
 
「貴族って長期休暇、何するの? 」

「お茶会やパーティーに参加したり、どこか旅行へ行ったり、観劇やコンサートなどですかね? 」

 私が経験した事のある長期休暇はイベントに参加していた。
 音楽だったり映画やドラマのエキストラに参加した事もあった。
 映画が好きで、少しでも関りを得たかったから。
 友人は部活やバイトをしていた。

「……バイト? バイトだぁ」

「バイト? とは何ですか? 」

「あっ、バイトっていうのは……正確にはアルバイトと言って、正社員に比べ短時間・短期間で働け完全時給制なの」

「……ですが、大抵の者は長期定期に働きたいと考える者が多数ですよ」

「そうね。だけど、私みたいに普段学生で、長期休暇の時にだけ働きたいって人は短期間の方がいいの」

「……お嬢様が……働くのですか? 」

「そうっ」

「……それは旦那様がお許しにならないかと……」

「大丈夫よ」

 マキシーに断られるも、娘溺愛の父なら私のお願いを聞いてくれるはずっ。
 すぐに許可取りに向かう。

「ダメだっ、何か欲しい物があれば私が何でも買ってやる」

 マキシーの言った通り、父には反対された。
 娘溺愛の父なら絶対に反対なんてしないと思っていたのに……
 計算外だ。

「お父様……」

「働くなんて、我が家は財政難ではないんだ。娘に働かせるなんて……そんな事させられない」

 あぁ……そこか……
 貴族の娘が働くのは家計が苦しいという判断になるのか……
 もし他貴族に働いているところを知られてしまえば『あの家門財政厳しいみたい』」なんて噂になるのか……

「お父様。私、働いてみたいんです」

「何故だ? 」

「私が享受しているものは全てお父様が働いてくださっているからです。お父様がどのくらいすごい事をして私を養ってくれているのか知りたいんです」

「シャル……」

「お願いです、私に社会勉強をさせてください」

「だがな……」

「お父様は私が、お金の価値が分からない世間知らずな娘になってもいいのですか? 」

「それは……分かった。だが、私が見繕った中から選ぶこといいな? 」

「お父様。私は全て自分一人の力でやりたいんです。シャルロッテ・アイゼンハワー公爵令嬢ではなく、シャルロッテとして。お父様の名前が無かったら、私は雇って頂けないかもしれません。それさえ私にとっては勉強なのです。お願いします」

「……分かった。だが、護衛は付けるからな。いいな? 」

「はい、周囲に護衛だと分からなければ」

 父を何とか説得に成功した。

「お嬢様……」

「どうしたの? 」

「本当に働かれるおつもりですか? 」

 マキシーは貴族令嬢が平民に混ざって働けるのかという心配もあるが、私が雇われた先でワガママ令嬢を発揮するのではないか? と相手側の方か心配な様子。
 
「大丈夫。貴族と知られないようにするから」

「……私も一緒に働きます」

「マキシー大丈夫だから」

「いえ、私も働きます。旦那様に許可を頂いてまいります」

「マキ……シー……」

 私が止めるのも聞かずに行動してしまった。
 父なら絶対許可するよ。
 私一人では心配だから。

「二人で受けたら、私は雇われずマキシーだけが雇われる可能性の方が高いでしょ」

 マキシーは公爵家で使用人経験がある。
 そんな人と一緒に面接を受けたら、能力値の高い方が雇われる。
 まさか思わぬ方向から障害が現れるとは……

「絶対に受かってやる」

 まずは何処で働きたいかよね……
 直接見て決めることにした。

「あそこのカフェ可愛いい」

「あのカフェは人気で、募集がかかるとすぐに店員がが集まると聞きますよ」

 エイジャックスが情報をくれるのは有り難い。
 もしや父からの回し者? 
 彼は優しさで教えてくれたのよね?
 疑いたくない。
 善意からの教えだと願う。

「あそこの宿泊施設は? 」

「宿泊施設は住み込みが多いのと、部屋に連れ込まれる危険があります」

 そうなったら、父が怖いのでやめておこう。
 ん~。
 花屋は、私が花に詳しくないし……
 パン屋さんは朝が早すぎる為、父の怒りを買いそうだし……
 料理人? 
 いや、私の料理はお金を頂ける程ではない。
 薬師? 
 無理、薬なんて作れない。
 残すは販売系だけど、お金の計算は全てが暗算となると不安がある。
 
「私が働けそうな場所がない……」

 今更、父に『働き先を見繕ってほしい』なんて恰好悪くて言えない。
 
「どこでなら働けるんだろう……」
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