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第1章 開幕
04.未来を選ぶか、消滅するか
しおりを挟む「掃除屋“くりん”のシェロリアだ」
声を聞いた瞬間、御幸はピンときた。
この男、間違いなくメインキャラ。受けか攻めかは知らんけど。
「浄化能力持ちの兄貴とは、おまえか?」
黒髪金目のこのイケメン、妹の推し声優の声帯を持つ選ばれし男なのである。これでメインの登場人物でないわけがない。
「兄貴……兄貴!」
横から小突かれて、ハッとする。
「御幸です」
「玲奈だ」
シェロリアは小さく頷いて、腕を組む。
「転生と生活と労働の保障を望むそうだが、それに見合うだけの働きを期待してもいいんだな?」
「頑張ります!」
元気よく返事をした御幸だったが、玲奈が苦渋の表情で唇を噛んでいることに気づき、首を傾げた。自分より低い位置にある顔を覗き込む。
「玲奈?」
呼びかけられた玲奈は横目で兄を見やり、視線を下に向け、固く目をつぶった。
「…………ごめん、兄貴」
「なんで謝る」
「あたし、今更怖気づいてる」
「なにが怖いんだよ」
「兄貴が……傷つく、ことが」
「俺が傷つく?」
目蓋を開いてシェロリアを一瞥した玲奈は、御幸の耳元に口を寄せた。何も言わずコソコソ話をする兄妹から視線を逸らし、身体の向きまで変えて聞きませんよのポーズを取ってくれるシェロリアは、もしかしたら優しい男なのかもしれない。
「兄貴は、ストレートだよな? 男で、女が好き」
「まあ、そうだな」
「そんで、童貞のまま死んだよな?」
「…………まあ、そうだな」
「処女も守ってきたよな?」
「当たり前だ」
「自分で尻に何か突っ込む趣味もないよな?」
「あるかい」
「ここで、思い出してほしいことがある」
「なんだ」
「ここは創作BL小説の世界だ」
「……そうだったな」
「主人公は受けだ」
御幸は黙り込んだ。しかし玲奈は待ってはくれない。
「この世界においての主人公は誰だ? ーー兄貴だ」
質問しておいて答えさせてもくれなかった。
「最終的に…………兄貴は男に掘られる」
「オトコニホラレル」
「声帯で察しているとは思うが、シェロリアが攻めだ」
「やっぱりな!! 絶対メインキャラだと思った!!!」
腹から声が出たが、優しいシェロリアは聞こえないふりをしてくれた。
「このまま進めば、まず間違いなく、兄貴は男とセックスすることになる」
「まじかあ~……」
「しかも設定上では相手はシェロリアだけじゃない」
「まじかよ!!」
「どうする?」
「ここまで来て聞く~……?」
御幸は完全に背を向けたシェロリアの黒いパーカーのフードを見やり、玲奈に視線を戻した。
玲奈は、真剣だった。真面目も真面目、大真面目に、男に掘られる未来を選ぶか、このまま共に消滅するかの二択を迫ってきている。
だから、御幸も、一切の嘘と冗談なく答えた。
「俺に浄化能力とやらがあったら、何がなんでも玲奈と生きて、いずれ転生する道を選ぶ。なかったら、その時は諦めて、約束通り、一緒に死のう」
最後まで兄妹でいられるなら、それはそれで悪くないと思えた。だから心中の約束をした。
……けど。
でも、やっぱり。可能性があるなら足掻きたくなってしまった。
だってさ、やっぱ、生きててほしいよ。
消滅してほしくないよ。
来世、兄妹として生まれなくても。今、兄妹であるというこの記憶が失われるのだとしても。
無に還ってほしくない。
存在が、無かったことになんてなってほしくない。
死ぬのって、痛いよ? 刺された時、めっちゃ痛かったもん。
死ぬのって、怖いよ? 刺されてすぐ意識が途切れたわけじゃない。自分が徐々に死へ向かって走っていることを、自覚しながら死んだんだ。めっちゃ怖かったよ。
もう一度死ぬって、無に還るって、消滅するって、どれだけ痛くて怖いんだろう。
それでもう二度と、このラララララナラナという世界で目覚めたように、意識が戻ってくることもないんだろ?
それを考えたら、男に掘られるくらい、なんてことないよ。
「だからな、玲奈。俺に浄化能力があるように、祈っといて」
玲奈は笑った。
「兄貴と心中するのも、悪くないけどな」
笑って、本気の声音で、冗談っぽく、言った。
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