誰よりも美しい花を捧ぐ。

三川

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02.初夜【捧げられし花テオエル】


神人とは。
世界を存続させるために祈りを捧げる男達のことをさす。
祈ることで特殊な力を発揮し、世界を滅亡への道から遠ざける能力者だ。彼らは精嚢が空の状態の時に最も力を発揮すると言われており、神人が精液を出し尽くす穴として育てられるために集められた男児が、神殿孤児院の美しい孤児達である。
何故男児ばかりなのかというと、女は孕む可能性があるためだ。無責任に子どもをつくってはいけないのである。
テオエルも、幼少期より神人に捧げられるために教育されて育った。成人すれば出荷される覚悟はできていた。

でもまさかシドイェスカ様に捧げられるとは聞いてない!





抱かれる覚悟はできていても、精神異常を来す覚悟はできていない。

何故?
どういうこと?
どんな抱き方をされるの?
鬼畜なの?
猟奇的なの?

神殿孤児院より連れ出され、シドイェスカの元へ向かいながら、テオエルはぐるぐる渦巻く不安に苛まれていた。

せめて美形であってくれ。
この世界基準ではなく、テオエル基準の美しい男であれ。
この世界基準の美形だとテオエル的には不細工な場合がある。頼むからテオエルの常識範囲内のイケメンであれ。
それなら諦められるから。

モテや陽キャとは程遠い地味な陰の者であった前世のテオエルは、美人やイケメンとは縁がなかった。もちろん童貞で、異性愛者であったので処女でもあった。もうこの際、今世でも童貞を貫いて構わないから。だから、せめて、せめて。抱かれるならイケメンがいい。シドイェスカよイケメンであれ。

「尻の準備はできてるな?」

シュルテルマイヤー城の北棟にある寝室へ連れ込まれ、ベッドの上でここまで付き添ってくれた神官に最終確認をされた。
テオエルは声もなく頷いた。

めちゃくちゃ準備してきた。
念入りに。念には念を入れ、できる限りのことをした。

神官が寝室を出ていく。
テオエルは天蓋を睨みながらその時を待つ。
まだ昼食の時間を過ぎたばかりであるので、室内は明るい。テオエルを抱いたらシドイェスカは神殿へ祈りを捧げに行かなければならないため、この時間帯なのである。お祈りには数時間かかるらしいのだ。夜にやるにはうるさいらしいし。

うるさいって何?
なんで?
叫びながらお祈りするの?

そういう詳しいとこ、神殿孤児院では教えてくれない。生贄の役目に直接関係ないからだって。

人が入ってくる気配に、緊張して背筋が伸びる。
ベッドの側に、二本の脚が立つ。天蓋に隠れて、上半身は見えない。

「服を脱げ」

テノールボイスが命令した。
人を従えることに慣れている、凛とした声色だった。
テオエルはすぐさま服を脱ぎ捨て、全裸になる。

「うつ伏せになれ」

心臓が爆発しそうなほど脈打つのを感じながら、テノールボイスに従って伏せる。

「尻をあげろ」

従順に、顔も見せない主に向かって尻をあげる。

「枕に顔を伏せろ」

命令通り、疑問を挟む余地もなく、枕に顔を埋めた。

「決して振り向くな」

ベッドがもう一人分の体重を乗せて沈む。
背後に、人の気配。
恐ろしい噂のある男が、無防備なテオエルの背後を取っている。

「振り向くな!」

後ろからどんなことをされるかわからず、振り返りかけた頭を押さえつけられる。鋭い声と、絶対に勝てないであろう腕力の強さに、身体が震えだした。
枕に強く顔を押し付けられながら、受け入れる準備を整えてきた後孔に無遠慮に指を挿し込まれ、具合を確かめられる。

怖い。準備したけど怖い。怖かった。だってどんなに念入りに備えてきたとしても、テオエルはまだ処女だ。一度も男を受け入れたことがない。
無理やり突っ込まれたらどうしよう。
血が出るかもしれない。
裂けたらきっと痛い。
怖い。怖い。

背後で男が自身を勃たせようとする気配を感じる。前戯するでもなく、テオエルにさせるでもなく、ただ事務的に勃たせ、準備された孔に挿し込んで排出するだけのような、最低限の接触の予感。
べつに最初から愛ある行為でないのはわかっていた。神人にとっては精嚢を空にする必要があってのことで、テオエルにとっては彼らに使われるために税金を使って生かされてきただけのこと。それだけのこと。

後孔に先端をあてがわれる。
引き攣れた息が漏れた。

「シドイェスカ様っ!」

今にも千切れそうなか細い悲鳴が出た。
枕に力いっぱいしがみついて、震える声で訴える。

「どうか、どうか……! 決して振り向きません。抵抗もしません。嫌がったり、暴れたりもしません。ですから、どうか、どうか、優しくしてくれとも言いません……! ただ、どうか、どうか……」

シドイェスカの無言が怖い。

「痛くしないでください……!」

涙が出た。怯え竦む身体を差し出しながら、顔も知らぬ恐ろしい男に声だけで縋る。

「怖い……っ!」



シドイェスカは何も言わなかった。
でも、頭を押さえつけていた手が緩んで、そっと、慰めるように、黒髪を撫ぜた。
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