誰よりも美しい花を捧ぐ。

三川

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09.怖いマックナル【捧げられし花テオエル】



「あ、あの、マックナル様……自分で、自分で準備できますから」
「私の仕事ですので」

最近、断っても断っても「私の仕事ですので」と言ってマックナルがテオエルの尻の準備を手ずからしてくるようになった。
神殿孤児院で習ったのだから尻の準備などテオエルには朝飯前なのだが、やんわりとした拒否は見向きもされず、強引に尻に触られる。

「……っ、く」

マックナルの指は、絶妙に感じるポイントをおさえてくる。テオエルの身体は、敏感に反応した。

「気持ちいいですか?」

なんでそんなことを聞く?
これはシドイェスカに抱かれるための準備であって、快感を得ることを目的としているわけではない。

日を増すごとにマックナルの準備は執拗になっていって、どんなにもういいと訴えても、テオエルがマックナルの指で射精するまで許してくれなくなった。

怖かった。

シドイェスカに抱かれた後の尻の始末も、「私の仕事ですので」と言ってマックナルは強固にやりたがった。
中に出された精液を掻き出すだけの行為のはずなのに、不埒な指先はまるで性交を思わせる動きで後孔を犯し、シドイェスカとの行為で射精し尽くしてすっかり薄くなった液体を陰茎から吐き出すまで終わらない。

そして、気持ちよかったかどうか聞いてくる。

怖かった。
恐ろしかった。
何を考えているかわからないマックナルが。
どうしてこんなことをするのかわからなくて。
誰に相談していいかもわからず、一人抱え込むしかない孤独に恐怖した。






「テオエル」

初めてシドイェスカに名前を呼ばれた。
振り向きそうになったのをぐっと堪える。

「そなたが最近暗い顔ばかりしていると、ナーサラーが」

下半身で繋がったまま、大きな手のひらが優しくテオエルの後頭部を撫でる。

「ーー私が醜男であると知ってしまったからか?」

頭の丸みを滑り落ちた手のひらが、華奢なうなじに添えられる。

「私に抱かれるのが嫌になったんだろう」
「違います!」

先ほどまでの優しい手つきが幻だったかのように、ぐっと、上から押さえつけられた。

「ぐ……、シドイェスカ様……っ」
「そなたが狂うまでは相手をしてもらう」

もう、そうであると断定された言い方だった。

「違うのです! マックナル様が……! マックナル様が、恐ろしくて……!」

うなじを上から押さえられながら、テオエルは必死に頭を振った。

「………は? マックナル? が? どうしたというのだ」

シドイェスカの力が緩む。
誰にも相談できなかったことを、この機に洗いざらい白状した。

マックナルが、テオエルに何をしてきたのか。
そしてそれが、テオエルにとってどんなに怖いことだったのか。

「シドイェスカ様に抱かれるためなら、我慢しなくてはならないのですか……? 僕はシドイェスカ様の花なのではないのですか……? 僕の身体はシドイェスカ様のためにあるのではないのですか……?」

目頭が熱くなって、ひたいを押し付けた枕が濡れていく。

「そうだ。そなたは私のーーひいては世界のためにある」

怒りを孕んだテノールが、感情の昂りのまま放たれた。

「オットリア、アングリフ!」
「はっ!」

テオエルから素早く自身を抜き、裸のままベッドを下りたシドイェスカは、声をかけた護衛騎士を連れて寝室を出ていった。

置き去りにされたテオエルは、ぐすぐす鼻を鳴らしながら濡れた目元を枕に擦りつけた。
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