誰よりも美しい花を捧ぐ。

三川

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18.手折られた花【捧げられし花テオエル】



シドイェスカと約束している昼食の時間までまだ余裕がある。
相変わらず目を合わせてくれないヒストーナーに習いながら本を読み、時間を潰す。
お茶をいれてくれたナーサラーに礼を言って、喉を潤したところでヒストーナーが呼び出しを食らった。

「絶対に部屋から出ないように」

テオエルにしつこく言い含めて、ヒストーナーは行ってしまった。
ナーサラーに質問しながら本を読み進めていると、どこからか戻ってきたニッケルヒが、ナーサラーに耳打ちした。
ナーサラーもヒストーナーに続いて首を傾げながら部屋を出ていく。
ニッケルヒと二人きりになった。
ニッケルヒは最低限の口しか聞かないので、二人にされるとちょっぴり息が詰まる。同じ寡黙仲間でもオットリアは雰囲気が柔らかく、意外と抜けてる天然お兄さんなので、親しみやすい。
ニッケルヒは、時折笑顔で毒を吐くのが怖かった。

気まずい沈黙が続く中、しばらく今度は本を最初から一人で読み返していたが、なかなかヒストーナーもナーサラーも戻ってこない。わからない単語が出てきたので、恐る恐るニッケルヒに呼びかけようとした。

「ニッケ、」
「少々お待ちください」

テオエルが言いかけたのを遮って、扉から廊下へ首を出したニッケルヒは、頷いて何者かを迎え入れた。

「久しいな、テオエル」
「デ、デブリナ様……」
「ブデリナだ馬鹿者」

護衛騎士を二人引き連れてずかずか踏み込んできたのはブデリナだった。

「他の花には飽きたのでな、代わりにそなたを私のものにしに来たぞ」
「な……っ、僕はお断りしたはずです」
「そなたの意見など聞いておらぬ。ーーかかれ!」
「はっ!」

命令された護衛騎士達が、障害物を蹴り飛ばして駆け寄ってくる。テオエルは咄嗟に逃げたが、出口をニッケルヒが塞いでいる以上、捕まるのはあっという間だった。髪や服を掴まれて床に引き倒され、二人がかりで縫い付けられる。

「ひひ、ひひひひっ……ひひ……っ」

ブデリナがよだれを垂らしながら近づいてきた。

「放してっ! 来るなっ!」

身を捩るが、びくともしない。脂肪で膨らんだ鼻先を寄せられ、顔を背ける。乾いた歪な唇から滴り落ちたよだれがテオエルの首筋を伝って、怖気立った。

「私のものになるかあ?」

テオエルは激しく首を振った。目蓋を固く閉ざし、身を強張らせる。目尻が湿った。ほおをべろりと舐められ、嫌悪に震え上がる。

「いやぁっ……!」

上衣をたくし上げられ、太く短い指が胸を這う。
垂れ落ちたよだれを前面に塗り広げられ、あまりの気持ち悪さに吐き気がした。

「う……ゔぇ……っ、ぐ、」
「ここも触って欲しそうだの」

悪寒による寒気で立った乳首を、ぐにぐに弄られる。激しく抵抗する身体は、二人がかりで押さえこまれた。

「や……っ! やめ……っ、やめて……っ」

肌が粟立ち、ぼろぼろと涙が溢れる。
ひとしきり乳首で遊んだ指先が、ズボンと下着のウエスト部分をまとめて引っ張った。

「嫌……っ! 嫌……っ!」
「暴れるでない! 脚を押さえろ!」
「はっ!」

ばたつかせていた両脚を掴まれ、下肢を剥かれる。縮こまった性器には用はないとばかりに、ブデリナの魔の手は尻の狭間に伸びた。乾いた孔のしわを、唾液を擦り込むようになぞられる。使い込まれたそこは拒絶する心とは裏腹に、刺激されると容易く綻んだ。

「ふむ。淫乱な孔だ。ここは物欲しそうにしておるぞ」
「触るなっ、嫌……っ、放せ……っ、う、うゔ……っ」
「存分にかわいがってやろう」

勃起した粗末なものを取り出したブデリナが、待ちきれず密を垂らす先端を、いざ貫かんとあてがった。

「いやぁーー……っ!」
「テオエルっ!」

無理やり犯されそうになったその時、大きな破壊音を立ててナーサラーが飛び込んできた。素早く状況を確認すると、真っ先にブデリナを狙う。

「こんのデブリナぁーーっ! シドイェスカ様のテオエルに何してくれてんだこらあーーっ!!」

ブデリナの護衛騎士達が応戦する。拘束から解放されたテオエルは、自分の身体を強く抱いて呆然と泣いた。
二対一になるかと思われたが、ナーサラーに加勢する者がいた。見覚えのある騎士だ。テオエルがアングリフと散歩した時に、案内された騎士寮でアングリフに親しげに声をかけてきた男だった。

ナーサラーが側仕えでありながら強過ぎるのか、ブデリナの護衛騎士が弱いのか。早々に制圧し、大声で喚き立てるだけのブデリナを蹴り飛ばして黙らせると、ナーサラーと加勢の騎士はブデリナ達を縛り上げて部屋の隅に転がした。

乱れた着衣を直しもせず自らを抱きしめて硬直するテオエルに、ナーサラーは痛ましいものを見る目を向けた。刺激しないようにかゆっくりと歩み寄ってきて、傍らにしゃがむ。

「テオエル、ごめんな? 怖かったよな? 私が部屋を離れたから。本当に、本当に……ごめん」
「…………ナーサラー様のせいではありません。悪いのは、あいつらでしょう?」
「そうだな。後でテオエルも蹴り入れとけ。今なら抵抗できないから」
「……ふふ。助けに来てくれて、ありがとうございます。ナーサラー様」

涙の跡が残るほおを緩ませたテオエルに、ナーサラーはほっと息を吐いた。加勢してくれた騎士にも礼を言おうと視線をさまよわせると、ナーサラーが察して「ラーナンドは報告に行った」と告げる。

「それより、テオエル。湯浴みしないか? 身体、気持ち悪いだろ」

『気持ち悪いだろ』という言葉に先ほどまでの悪夢が蘇って、身体が強張った。

気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。

この身は汚れてしまった。
汚らわしい。


汚らわしい!
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