20 / 21
20.任務完了【秘密部隊所属ラーナンド】
ラーナンドは普段、護衛騎士の数が足りず一時的に手を借りたいという貴族に貸し出される、派遣護衛騎士をやっている。
一時的とはいえ主と戴くのだから、全身全霊をかけて護衛する覚悟は持ち合わせている。主一人一人に、真剣に向き合っているつもりだ。
ただ、それは、真に忠誠を捧げる絶対の王の命令により、そうするようにと指示されているから、そうしているだけであって。
王が命じてくださるのであれば、一時の主を暗殺することも、情報を巧みに抜き出すことも、変装して平民に紛れることも、なんの感情もない相手と恋仲になることも、昨日肩を組んで笑い合った友人を罠にはめることも、どんな任務もこなしてみせる。
「犯されていた場合は、強姦と。未遂だった場合は、手折られた、と。合意の場合は、抱かれたと報告するように」
「はっ!」
今回の任務は、シドイェスカの花テオエルを使ってブデリナを処分することである。
ブデリナは好き放題し過ぎたのだ。
見目の良さを利用して他の神人の花を片っ端から誘惑し、飽きたらポイだ。一度裏切った花を、他の神人が受け入れるわけもなく。捨てられた花はもう二度と神人に仕えることはない。追放され、行き着く果ては、誰も知らないことになっている。
それだけ花を食い散らかしているのならさぞかしお祈りが捗るだろうと思われるが、彼は全く役目を果たしていなかった。
世界を存続させる重責を負う神人のために注がれる血税は、決して少なくない。
役目を果たさず、不和をもたらし、ただただ金を食うだけの厄介者を、いつまでも養ってやる義理はない。
今日に至るまで処分されなかったのは、彼が貴重な神人であるということと、どうせなら最後になんらかの役に立てよという、使えるタイミングを計っていたためである。
「ブデリナの誘導は容易過ぎました」
今回の任務の相棒であるニッケルヒが、淡々と告げた。
マックナルの後釜にすわり、シドイェスカの側仕えとして潜入したニッケルヒは、密かに任務を遂行していた。詳しくは解説するつもりはないが、ニッケルヒがブデリナを誘導し、ラーナンドがあらかじめシドイェスカの側仕えであるナーサラーに秘密部隊の情報をちょくちょく流すことで当日自分に声をかけにくるように仕向け、二人の暗躍によってブデリナはこの度現場を押さえられたのだ。
テオエルが見目の良いブデリナから再度誘われ、本当に欠片も心が動かないのか、シドイェスカを裏切って傷つけるような真似をしないか、確かめたいという我らが王の憂慮を払い、最後に役立ててからブデリナを処分したいという王の意向を、同時に叶えてみせた。
「次はもっとぞくぞくする任務がしたいですね」
「ニッケルヒは強い刺激を欲しすぎなんだよ。俺はほどほどの緊張感があればそれでいいわ」
「ラーナンドは小心者ですからね。オットリアは? 今回は関与しなかったでしょう。別の任務中ですか?」
空虚な顔が通常で、腹が減っている時だけ深刻な顔になり、ほとんど表情筋が働かない男は、なんの感情も読み取れない口元に人差し指を立ててみせた。
「…………秘密」
何も考えていないようで、実は考えていると思わせておいて、実際は何も考えていない。いや、裏をかいて考えているのかもしれない。
そんな底知れぬ男が、いつかのどこかで諜報活動の得意な秘密部隊の同僚にも悟られず任務を遂行している。
「俺はおまえが一番怖いよ」
あなたにおすすめの小説
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する
スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。
そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!