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15.鬼ごっこの終わり【都築利音】
しおりを挟む都築は怒り心頭だった。
蘭太の身に起こったことは、自分が犯されるよりよほど都築を苦しめた。その点で言えば、白井の狙いは十分に成功したといえる。
「私は白井を殺すよ」
泣き疲れて眠ってしまった蘭太をベッドに寝かせ、そっとひたいに口づけて深夜の街へ出た都築は、ここまでついて来てくれた相棒に静かに告げた。
「そうか」
「止めないのか」
「あいつは許されざることをした」
過去、白井を兄弟のようなものだと言っていた黒井は、しかし悪事にはシビアだった。
「構ってほしくてやった悪戯と呼べる範囲を越えている。自業自得だ」
『はざまの住人』に法はない。彼らが罪を犯した時、罰を与えるのもまた、都築の血筋に受け継がれてきた祓い屋の仕事である。
「金髪の情報は確かか」
「蘭太も金髪は白井の仕込みだと言っていた。確実性は高い。それにーー」
「ああ。むしろ、誘われているね。これも、白井が用意した舞台かな」
「主役が来るのを今か今かと待っているんだろう」
「私が主役?」
嬉しくないね。
◇◇◇
「やあ、都築利音。大事なものを奪われた気分はどうかな」
心霊スポットと有名な廃ビルの最上階に、白井はいた。
「奪われた? 蘭太くんは私のもとにいる。奪われてなんかない」
「おかしいな? あんなに汚してやったのに。何度も何度も犯して中出ししてやったのに。それでもまだあの汚れた男が大事なのかい?」
怒りが爆発しそうになった都築を、手首を掴むことで黒井が抑える。
「都築利音、きみは選ばれし人間だ。きみの隣に立つのも、選ばれしモノでなければ。黒井でも、新堂蘭太でもない。ボクだよ。ボクこそがふさわしい」
何を言い出すかと思えば。笑わせる。
「蘭太くんは選ばれし人間だよ。私が選んだ、たった一人の、私の唯一」
白井のまとう空気が、ピリつく。色素の薄い目が、爛々と、獰猛な怒りを孕む。
「おまえでは、黒井にすら勝てないよ」
都築が鼻で笑った瞬間、白井が立っていた場所の床が抉れた。強烈な踏み込みで刹那のうちに都築へ迫った白井は、しかし黒井の横槍によって吹き飛ばされる。そのまま、常人には理解できない『はざまの住人』同士のぶつかり合いが始まった。
都築は開いた右手を交戦する二人の方へと向け、左手で右手首を支える。照準を合わせようとするが、黒井を巻き込んでしまう可能性を否めない。白井をとらえきれない。
「黒井!」
「わかってる!」
都築は粘り強くチャンスを待った。
あげ続ける腕が疲れてきても、決して下ろさなかった。
そして、とうとう、決着がついた。
「呪いを解く方法を聞き出す前に殺してしまっていいのかい」
黒井によってうつ伏せに押さえつけられた白井が、顎をあげて都築を見た。都築は右手を向けたまま、数歩離れたところで立ち止まる。
「呪われたままなら、蘭太くんはきっと一生、私のためにご飯を作ってくれるだろうね」
「はは。それは最悪だ。そんなきみ達にとって幸せそうなこと、ボクは許さないよ」
それが、白井の最後の言葉だった。
「馬鹿だね、白井。蘭太くんはきっと、私が呪われていなくたって、私のために毎日ご飯を作ってくれるよ」
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