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16.今日こそは
しおりを挟む「やっぱり蘭太くんは天才だ! カップ麺がこんなにうまい」
「お湯注いだだけなんだよなあ」
事務所で昼食を取るいつもの光景が、今日も当たり前の日常として繰り広げられていた。
「自分でやってもこうはいかないんだよ。やっぱり愛ってやつかなあ、蘭太くん」
「愛ですよ、都築さん」
「うふ」
黒井は二人のことはガン無視で麺をすすっていた。
都築は、呪いが解けたというのにあいも変わらず、蘭太がお湯を注いだだけのカップ麺を泣きながら食っている。
今までの呪われし都築には、食べ物がどれもこれも吐き気を催すようなグロテスクな塊にしか見えず、とても食べる気が起こらない上に、食ったら食ったでゲロマズだったらしい。地獄だ。それでも生きるためには食べるしかない。食べないと、生きていけない。
そんな呪いをかけた『はざまの住人』白井は、なんか蘭太が寝てる間に都築と黒井によって成敗されていた。
蘭太がいたところで何の役にも立たなかっただろうが、せめて一言くらいほしかったと思うのは贅沢だろうか。
でもまあ、都築が好きなものを好きなように食べられるようになったのは、非常に喜ばしいことだ。
「蘭太くん、私、晩ご飯はオムライスが食べたい」
「今日の晩ご飯は鰻ちらしです」
◇◇◇
今日こそは。今日こそはと、決めていた。
そのために、今日の晩ご飯は鰻ちらしにしたのだ。
鰻は精がつくって言うし。
都築はセックスがしたいという意味で蘭太のことを好きだと言っていた。つまり、蘭太とセックスしたい、はずなのだ。
それがどういうことだろう。呪いが解けてからというもの、蘭太はほぼほぼ都築と同棲していると言っても過言ではない状態なのに、同じベッドに寝てもキスのひとつもしやしないじゃないか。
いや、わかってる。わかってる!
都築はきっと遠慮しているだけなのだ。蘭太を気遣っている。望まぬ性交を強いられた蘭太が、セックスをしたくないんじゃないかと。都築の方から迫って、怯えさせたりしたら可哀想だと、そう思ってくれているに違いないのだ。
実際、蘭太は尻込みしていた。しょうがないじゃないか。初めてが無理やりで怖かったんだもの。
でも、毎晩何もせず都築と寄り添って夜を過ごすうちに。気づいたのだ。
いや、都築さんが僕に乱暴するわけなくない? と。
白井と都築は違う。白井が蘭太に向ける感情と、都築が蘭太に向ける感情は、別のものだ。そして、都築と蘭太の間にある想いは、きっと同じ。
なら、何も恐れることはない。
だから、今日こそ。今日こそは!
黒井にも協力を取り付けた。準備はばっちり。
今日こそ! 都築とセックスする!
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