17 / 18
17.愛しています【都築利音】
しおりを挟む風呂からあがってから、蘭太は何やらずっとそわそわしていた。
そろそろ寝ようかというタイミングで、挙動不審の蘭太が黒井にあからさまな目配せをする。黒井は頷いて、本を閉じた。
「ちょっと出てくる。明日の昼には戻る」
「え、黒井?」
「行ってらっしゃい、黒井さん!」
「行ってくる」
「え? おいおい、え?」
おまえ、泊めてくれる友達いたの?
という疑問は、声にはならなかった。
「蘭太くん?」
「都築さん……」
背後から、蘭太に抱きつかれたのだ。
「あのね、都築さん」
「なあに、蘭太くん、どうしたの」
「僕、今日、準備したので、」
「準備?」
背中に顔を埋めた蘭太が、ぎゅううっと腕に力をこめてくる。力いっぱい引っ付いてくる小さな恋人が、愛おしい。
「抱いてもらう準備……した……」
「oh……」
全てを察した。
大丈夫なのか、と聞きたかった。本当にいいの、と確認したかった。でも、やめた。彼は覚悟の上で、こんなに必死になって、精一杯の勇気を振り絞って誘ってくれたのだ。そこに、水を差すような真似はすまい。
「蘭太くん、」
腹に回った蘭太の細い腕を、つんつんと突く。断られると思ったのか、離すまいと抱きつく力が強くなった。背中に鼻先を擦り付けて、嫌嫌と首を振る。そんな仕草がかわいくて、都築は笑みをこぼした。
「蘭太くん、ベッド、行こうか」
パジャマを脱いだ蘭太は、恐る恐るというように、ベッドに横たわった。覆いかぶさった都築を見上げ、組み合わせた両手を揉み揉みし、何やら思い切った顔をする。
「キスしてください!」
「ふふ。はい」
固く閉ざされた目蓋に笑って、まずはひたいにキスを落とす。目蓋、こめかみ、ほお、鼻先へと順番に唇を押し当てていくうちに、蘭太の身体から強張りが解けた。そこを狙って、唇を重ねる。柔く食んで、擦り合わせ、離す。
「ん……」
再び重ねて、許しをもらってから、舌を忍ばせる。蘭太の手が、都築の二の腕を掴んだ。縋るようなそれに、拒絶ではないと安堵して、蘭太の口腔内を優しく舌で愛撫した。舌と舌を擦り合わせると、蘭太が腰を押し当ててくる。そこは、都築とのキスで硬く熱を持っていた。
キスを続けながら、蘭太の肌に触れていく。どこを触っても反応を返す蘭太の敏感な身体に興奮を煽られる。
「ぁ、都築さ、も……勃ってる……」
「蘭太くんがかわいいからだよ」
「ふふ。ーーあっ」
胸の尖りに吸い付けば、蘭太の手は都築の肩に添えられる。舐めて、軽く噛んで、転がして、舌で押し潰す。その度、びくびくと蘭太の身体は跳ねた。
「蘭太くん、腰あげて」
「ん……」
残っていた下着を、脚から抜く。粘り気のある糸が引いた。それは勃ちあがった性器の先からだけではなくて。明らかに、尻が濡れていた。
「じゅ、準備したって、言った……」
思わず凝視してしまった都築に、蘭太は恥ずかしげに小さな声でか細く言う。
「ちょっと、失礼ーー」
「わっ」
蘭太の脚を広げさせ、指で触れて確かめてみれば。窄まりはとろとろと濡れ、ふっくらと膨れて、都築の指先を貪欲に飲み込もうとした。
「全部、一人でやっちゃったの……?」
「…………ローション買いに行く時は黒井さんについて来てもらった」
黒井はさぞかし苦い顔をしていたことだろう。
「駄目だった……?」
途端に不安そうになるので、蘭太の顔中にめちゃくちゃキスしてやった。
「今度からは、私にも準備させてね」
「ええ……恥ずかしい……」
「ローション買う時は黒井について来てもらったのに、私はだめなの?」
「黒井さんは普通の人には見えないし」
「知ってる? ローションってネットで買える」
「その手があったか!」
「蘭太くん~~~!」
「あっ! あはっ。きゃははっ。やめて都築さんっごめんて!」
ひとしきり擽った後、笑い過ぎて息を乱す蘭太に身体を重ね、正面から抱きしめる。
「蘭太くん、」
「んー?」
「大事にします」
「うん」
「優しくします」
「はい」
「愛しています」
「僕もです」
「挿れていい?」
「あなたに抱かれるのを、ずっと待ってたよ」
唇を重ねた。
互いに貪り合いながら、蘭太の後孔に指を挿れる。そこはしっかり解れて、都築に愛されるのを待っていた。
「んーー……っ」
ゆっくり、ゆっくりと、都築を埋めていく。蘭太の背が反り返り、後頭部がシーツに押し付けられ、擦れてしわを作る。
「痛くない?」
「大丈夫」
馴染むのを待って、優しく奥を突いた。
「ん、ん……っ、ん……」
とん、とん……とん……と、突く度に控えめな声があがる。
「もっと強く、して」
ぎゅっと抱き寄せられながら強請られて、都築はたまらなくなった。蘭太の腰を掴み、とろとろに蕩けた肉筒を擦りあげながら腰を引いて、一息に押し込む。
「あ゛っ!」
蘭太の浮いた足先が、びくんっと揺れた。
「あっ、ん、ぁあ゛っ、あ!」
抽挿する度、高く甘い声が、蘭太のよだれに塗れた小さな口から飛び出てくる。
蘭太の中はうねり、絡みつき、都築に休む暇を与えない。
こんなの、気持ち良すぎる。
腰を振るのが止まらない。
あまり夢中になり過ぎると、蘭太を怯えさせてしまうかもしれない。自分勝手になってはいけない。抑えて、抑えてーーそう、思ったのに。
「つっ、づき、しゃん……!」
必死にしがみつき、蕩けた笑みで都築の劣情を受け入れる蘭太の顔を見てしまったら。
もう、止まらなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
27
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる