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第2章 愛されました!
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制止の声は悉く無視された。
暴れる腕は掴まれ、ばたつく脚は踏み押さえられた。
平田のつけた跡を、上書きするように強く吸われ。噛まれ。
手嶋の涙は踏みにじられた。
そして全力の抵抗虚しく、力づくで犯された。
中で出された感覚が広がり、全身から力が抜ける。
後ろから押さえつけられていた力が緩んで、ずるりと手嶋を犯していたものが抜けていった。
腹ばいのまま、ぼろぼろと落ちる涙で濡れた顔を、両手で覆う。
怖かったとか、怒りがわいたとか、悔しかったとかでもなく。
ただただ悲しかった。
逢崎にとって、自分が無理やり犯していい存在であったということが、悲しかった。
「手嶋……」
逢崎が、か細い声で呼んだ。
「………………帰る」
それだけ言って、顔を拭った。
「待ってくれ!」
腕を掴まれる。
手嶋の「待って」は無視したくせに。
虚ろな目で見返すと、逢崎は今にも泣きそうな顔をしていた。
「帰ったら……今、このまま帰したら……手嶋はきっと、俺のこと、捨てるんだろ……」
おまえが。
おまえが、それを。
「嫌だよ……別れたくない……好きなんだ……手嶋が、好きだ……好きなんだ……」
おまえが、それを。
手嶋は逢崎の手を振り払って咆えた。
「おまえにとって俺は! 無理やり犯してもいいような! 踏みにじってしまえるような! その程度の存在だったんだろ! だから俺が嫌がっても抵抗しても押さえつけてレイプしたんだ! そんな奴の言う好きなんて誰が信じるんだよ! 少なくとも俺は信じねえよ!」
逢崎のこんな時でも綺麗な顔が歪んだ。
なんでおまえが傷つくんだ。
「違う……違う……俺……」
なんでおまえが泣くんだよ。
「ごめん……手嶋……俺、俺……」
「…………帰る」
「待って……待って……」
乱された服を直して立ち上がる。
逢崎が立ちはだかった。
「俺といたくないなら、俺が出ていくから。だから、ここにいて。帰らないで。身体、気持ち悪いだろ。風呂使ってくれ。その服も着替えた方がいいし、そのまま外に出ないでくれ。お願い……お願い……!」
自分の身体を見下ろす。確かに、何かがあったのが丸わかりの様相だった。
「ありがとう……」
頷いた手嶋に、逢崎は礼を言って自分の部屋から出ていった。
玄関のドアが閉まる音を、どこかぼんやり聞いた。
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