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25 バレたので、告白!(3)

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「リディア様、もしかしてマヨネーズ開発しました?」

 私とステラはこうして雑談もする仲になった。平民であるステラは、公爵令嬢の私に対して敬語で話すことにしているようだが、遠慮はなく態度は大きいままで気は楽だ。

「そうなの。先月我が家で作ったのだけど、ついに販売まですることになって」
「メイトランド公爵のお墨付き、魔法の万能調味料! って巷で大人気ですよ」
「次は味噌を作りたいのよね」
「ああ、味噌いいですね! 梅干しもお願いします」
「いいわね!」

 転生者の仲間というのは、とても新鮮だ。例えばこの世界の少し日本的なヘンテコ設定や仕組みにツッコミをいれたり、逆に日本が恋しいものに共感してもらえる。もちろん、このゲームについての情報を共有出来るのも有り難い。

「そういえばリディア様ってどうやって鍛錬してます?」
「お兄様と、クリス様と、我が家の訓練場で……」
「ご自宅に訓練場! さすが公爵令嬢! 私の実家もお金持ち設定がよかった~」
「それだけ可愛く生まれたんだから良いじゃない」
「うふふ! ありがとうございます」

 可愛いポーズが可愛くキマる。羨ましい。

「そろそろ魔物がチラホラ現れてイベント起きるはずなのに、全然なんですよね。どこかの誰かが聖石なんて開発したせいで!」
「ぐっ」

 ちなみに、最近でも魔物は王都近くの森でも出現するようになってきている。しかし、森の外を聖騎士団や警備隊が警備し、ばんばん魔物を倒してくれているのだ。
 これまでは聖魔法の使い手だけが魔物を相手に出来ていたが、今は誰でも聖石の力で聖魔法を使えるようになった為、人々が襲われることはめっきり減った。

 この学園の裏の森も、魔物が出るはずだが、まだ現れない。

「ステータス的にはかなり良い感じまで上げたんですけど、攻略対象とのイベントこなせてないから不安なんですよね~」
「うぅっ」

 聖石のことも、攻略対象者のことも私のせいなので何も言い返せない。
 
「だから魔物バンバン倒して、カンストレベルまで上げときたいんですけど」

 このゲームのクリア条件は確かに厳しい。攻略対象者の好感度はもちろん、ヒロイン自体のレベルも高くなければ魔王にやられてしまう。

「夜のイベントありましたよね? 肝試し」
「あ、あったわね」

 その問いで、ステラが言いたいことが分かった。

 ゲームの中盤、共通ルートの最後の方で出てくる肝試しイベント。
 攻略対象者達とヒロイン、なぜか悪役令嬢が、みんな揃って肝試しをする。そこで悪役令嬢はヒロインに間違ったルートを選ばせ、そこで魔物が出現! 攻略対象者と共に倒すのだ。

 肝試しを誰と巡るかは、攻略具合に関係なく運次第。好きな攻略対象者になればラッキー、違っても強い魔物を倒してしっかり経験値やレベルが上がる、おいしいイベントである。

「肝試し、企画してくれますよね?」

 ステラの可愛い顔は脅迫まがいのおねだりをしていても可愛かった。

「は、はい……」



「みなさーん! こちらでーす!」

 目前には、とっても張り切っているステラ。横には、どよんとした空気の男性陣。どういうわけか珍しくアラン様もいる。

 もうすぐ日が暮れるという時間。
 
 生徒会メンバーで校内を巡回する名目で、今から肝試しを行う予定だ。ゲームの規定イベントだからなのか、割とすんなり決行にこぎつけることが出来た。

 ルートは、正門前からスタートし、校内を歩き、中庭を通る。第二校舎に入り生徒会室の黒板に自分達の名前を書いて、裏庭へ。そのまま庭園へ抜けて正門に戻るコースだ。
 ゲームでは、悪役令嬢であるリディアが、裏庭から森へ行くのだと嘘を教えて魔物に襲われるストーリーだった。

 メンバーは、私とクリス様、キース様にお兄様、アラン様とステラの六人。二人ずつのペアになって巡るのだが──。

「クジには細工とかしなかったの?」
「だ、だって私ヒロインだから! クジ運もいいかなって……」

 コソコソと二人で話してももう遅い。

「よーし! じゃあ俺達から出発するぞ。またあとで!」
「皆さんくれぐれも気を付けてくださいね」

 令嬢恐怖症のお兄様が、ステラとのペアを回避したことでテンションが上がったようで、張り切って出発していった。
 お兄様のペアはキース様である。

 残された四人の割り当ては、私とアラン様のペア、クリス様とステラのペアである。

 クリス様から何だか恐ろしいほどの黒いオーラを感じる……。アラン様は涼しい顔だ。アラン様と言葉を交わしたのは数えるほどで、学園内を巡回する間、話題が持つとも思えない。

「殿下! 行きましょう! レベルを上げましょう!」
「ちょ、ステラさん?」

 何かを吹っ切るように、ステラがクリス様の腕を引っ張って出発しようとする。クリス様は私達をじとーっと見ながら仕方なく歩き始めた。

「……リディに何かしたら……分かっているね?」
「御意。指一本触れない」
「!?」

 アラン様は両手を上げて宣言した。それを見届けつつ、クリス様は後ろ髪を引かれる様子で出発していく。

(あぁ、帰りたい……)

 指一本どころか会話すらしてくれなさそうなアラン様と二人残されて、私は既にギブアップしたかった。
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