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第三章「アドリオンの冒険者」
第七十八話「剣鬼の最終試験」
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「五試合目は遂に、冒険者ギルド・ラサラスのギルドマスター、剣鬼、クラウス・ベルンシュタインが登場します! 対するのは魔術師ギルド・エリュシオンのギルドマスター、魔術師、ハロルド・バラックです! ギルドマスター同士の対決に会場は既に大盛り上がり! 既に二人の説明は要らないでしょう。今、最も注目されている新設ギルドのマスター達が、プライドを賭けて戦います! レベルは剣鬼の方が二十二も上回っているが、果たしてエリュシオンのギルドマスターであるハロルド・バラックは剣鬼に勝つ事が出来るのでしょうか! 注目の試合が今始まります!」
相変わらず司会が大げさな解説をすると、会場の盛り上がりが最高潮に達した。国家魔術師試験は市民達を喜ばせるためのお祭りの様なものなのだろうか。年に一度、ファステンバーグ王国で最強の五人を決める試験なのだから、盛り上がらない訳がない。自分達の生活を守る王国の最高戦力が決まる試験なのだから、注目するのは当たり前だと思う。
俺は木製のロングソードを持つと、あまりに軽さに驚いた。普段使用しているデーモンイーターがあまりにも高重量だからか、木製の剣が軽すぎるのだ。これでは本気で相手を打てばたちまち折れてしまうだろう。武器が折れれば魔法と拳で勝負すれば良い。武器が弱いという点は相手も同じなのだから、勝負は公平だ。
国家魔術師試験は古くから最強の魔術師を決める試験だったからか、杖は自由に持ち込む事が出来る。対戦相手のハロルドさんはエリュシオンの標準装備である杖と盾を持っている。ちなみに防具も自由に装備する事が出来る。殺傷能力が高い刃物や鈍器は持ち込めない。最終試験で使用出来る杖の種類は自由だが、杖を使って物理攻撃を行う事は禁止されている。
「どちらが勝ってもアーセナル出身の冒険者が国家魔術師になる。ベルンシュタイン殿。最高の戦いにしましょう!」
「はい、ハロルドさん」
俺達は試合の前にリング上で握手を交わすと、彼は満面の笑みを浮かべた。全くもって彼の言葉の通りだ。どちらが勝ってもアーセナル出身の冒険者が国家魔術師になるのだ。しかし、俺は勝負に負けるつもりはない。今日、遂にエルザの運命が決まるのだ。一年間も待たせてしまった。遂にエルザを救う事が出来る。この戦いは絶対に負ける訳にはいかないんだ。
「五回戦、剣鬼、クラウス・ベルンシュタイン対魔術師、ハロルド・バラック! 試合開始!」
司会が開始の合図をした瞬間、俺は一瞬で間合いを詰めて全力で突きを放った。流石にバラックさんから長年剣の稽古を受けていたからか、俺の木剣を杖で受ける事に成功した。しかし、ハロルドさんの木製の杖は俺の攻撃を受けて粉々に砕け散った。リングサイドからクラウディウスさんが木剣を投げ入れると、ハロルドさんは一礼して木剣を拾い上げた。
「なんという攻撃の速さでしょうか! 私には剣鬼の攻撃の瞬間が見えませんでした! しかし、魔術師ギルド・エリュシオンのギルドマスターは、魔術師でありながらも、剣鬼の攻撃を見事防ぎました! 剣聖、クラウディウス・シュタインが武器を失ったハロルド・バラックに対し、木剣を投げ入れた! 果たして試合はどうなるのでしょうか!」
ハロルドさんは笑みを浮かべ、剣に美しい金色の魔力を纏わせた。聖属性のエンチャントである。アーセナルのギルドマスター、バラックさんとリーゼロッテさんが得意とする戦い方だから、今まで何度も見てきた事があるが、ハロルドさんの木剣からは感じた事も無い様な強烈な聖属性の魔力がほとばしっている。近くに居るだけで気分が悪くなりそうだ。闇属性を秘める俺にはあまりにも魔力が強い。
攻め方を変えよう。正攻法ではハロルドさんを倒す事は難しいだろう。冬の洞窟の生活で習得した、ブラックウルフを最も効率良く狩る方法。上空から無数のファイアボールを降らせ、地上の敵を討つ戦法を選ぶ事にした。
下半身に力を入れて上昇し、尚且つ左手を地面に向けて炎を炸裂させると、俺の体は闘技場よりも遥か上空まで飛び上がった。高速で急降下をしながら、左手から何十発もの炎の球を飛ばしてハロルドさんを襲う。急激な魔力の低下を感じたが、最終試験なので全ての魔力を使い切っても良い。
ハロルドさんはかろうじて俺の魔法を叩き切っているが、全ての攻撃を防ぐ事は不可能だったのか、ハロルドさんのマントが燃え上がった。ハロルドさんはファイアボールの爆風をもろに受けて吹き飛んだが、かろうじてリングからは落ちず、瞬時にヒールの魔法を唱えた。
怪我を負っても自分自身を癒やす事が出来る相手とは初めて戦う。命を奪う勢いで攻撃を仕掛けなければ倒せないのだろうか? いや、本当にハロルドさんを殺して仕舞うかもしれない。しかし、手を抜いて勝てる相手ではないのだ。
リングに着地した瞬間、俺は左の拳を握りしめてハロルドを殴った。ハロルドさんは俺の攻撃を直撃すれば大怪我をすると悟ったのか、瞬時に石の壁を作り出した。俺が攻撃を放つ直前に、目にも留まらぬ速度でリング上に巨大な石の壁を作り出したのだ。なんという反射神経だろうか。
やはり剣士の戦い方を知っている魔術師だから、簡単に倒せそうにない。それに、ハロルドさんは俺と適度な距離を取るので、なかなか間合いを詰めて攻撃出来ないのだ。俺はそのまま石の壁を殴って粉砕すると、会場からは熱狂的な拍手が上がった。ハロルドさんは後退しながら何度も石の壁を作り出し、尚且つ、俺の頭上から無数の大岩を降らせ続けるのだ。
流石に魔術師ギルドのマスターという訳だ。防御魔法と攻撃魔法を同時に使用し、尚且つ、物理攻撃が出来るチャンスを逃さず、強烈な一撃を放ってくる。俺は上空に作られた大岩をファイアボールで吹き飛ばし、石の壁を殴って粉砕し、ハロルドさんの剣を受けた。
「流石! 剣鬼、クラウス・ベルンシュタイン! 父から聞いてた話は本当でした! 私はあなたと手合わせしたくて仕方がありませんでした! 剣と魔法を極めた最強の冒険者! 魔法では決着がつかないみたいなので、剣で勝負を決めましょう!」
「そうですね! 俺もそう思っていたところです!」
俺達は同時に魔法の使用を止め、ここからは魔力を使わずに木剣のみで戦う事にした。俺は悪魔の魔装を脱いだ。明らかに俺の方が物理攻撃に対する防御力が高いからだ。すると、ハロルドさんは盾を捨て、焼けたマントを脱ぎ捨て、白銀の鎧を外した。お互い防具を身に着けず、木剣だけで勝負を決める。
「どちらが勝ってもアーセナルの勝利。そうですね、ベルンシュタイン殿!」
「はい、ハロルドさん。それでは行きますよ!」
俺達は微笑み合ってから再び剣を構えた。ハロルドさんは柔和な表情を浮かべていたが、武器を構えた瞬間、一気に獣を狩る冒険者の鋭い表情へと変わった。一流の冒険者が持つ独特の殺気。バラックさん直伝の隙きの無い構えに、俺を睨みつける鋭い視線。精神は高ぶり、剣を持つ手には力が入る。遂に俺とハロルドさんの戦いが終わろうとしているのだ。
俺の剣さばき一つでエルザの人生が決まる。俺は何が何でもエルザを救わなければならないのだ。ゆっくりとリングを回る様に相手の出方を伺っていた時、ハロルドさんが攻撃を仕掛けてきた。ハロルドさんは木剣に魔力を込めていないから、攻撃の威力だけなら筋力が高い俺の方が遥かに上回るだろう。武器での打ち合いなら俺の方が有利に戦えるのだ。
。肉体を徹底的に鍛えておいた甲斐があるというものだ。
ハロルドさんの攻撃を受けると、魔術師の剣とは思えない程の衝撃を感じた。流石にティファニーやクラウディウスさん程の威力ではないが、力強い攻撃に戸惑いを感じながらも、俺は瞬時にハロルドさんの背後に回り、背中に木剣を叩きつけた。
悪魔として肉体を鍛え込んでいるからか、人間を遥かに上回る速度で移動が出来るのだ。恐らく、会場に居る全ての人間の中で、攻撃の瞬間を捉える事が出来たのはレベッカさんとクラウディウスさん、ティファニーしか居ないだろう。
ハロルドさんは背中に木剣を受けて悶絶しながらも、果敢に攻撃を仕掛けてきた。何度攻撃をしてもハロルドさんは降参する事はなく、震えながら木剣を握り、俺の攻撃を受け続けた。遂に痛みが限界に達したのか、ハロルドさんは意識を失ってリングに沈んだ瞬間、闘技場には拍手の嵐が沸き起こった。
「遂に五人目の国家魔術師が決定! 冒険者ギルド・ラサラスのギルドのマスター、レベル百、剣鬼、クラウス・ベルンシュタインです! 十六歳の若き剣鬼が、ファステンバーグ王国の最高戦力になるのです! 順位はクラウス・ベルンシュタインが一位、ティファニー・ブライトナーが二位、ヴィルヘルム・カーフェンが三位、クラウディウス・シュタインが四位、アダム・バスラーが五位です! 一位から四位までが何と、ラサラスの冒険者なのです! 偉大なる国家魔術師達の誕生に祝福を!」
遂に俺が一位で国家魔術師に合格したのだ! 仲間達が涙を浮かべながらリングに上がると、俺を強く抱き締めてくれた。今日の試験のために何度も死ぬ思いをしながら徹底的に己を追い込んできた。全ては愛する家族を救うため。エルザを眠りから覚ますために。
俺は遂に国家魔術師になるのだ。デーモンがレーヴェを襲撃してから一年。随分長かったが、努力はやはり裏切らないのだな。睡眠時間まで削り、剣と魔法の練習を続けて良かった……。
「私達、遂に国家魔術師になるのね……一緒に合格出来て嬉しいわ……」
「おめでとう! クラウス! 俺はお前を誇りに思うよ! やはりクラウスに付いて来て正解だった。クラウスが俺の人生を変えてくれた……」
「私も、クラウスと出会えて人生が変わったわ。まさか、四人同時に国家魔術師になるなんて。だけど、来年は必ず合格してみせる。クラウス、ティファニー、ヴィルヘルム、クラウディウスさん、合格おめでとう!」
「ありがとう。リーゼロッテ。これからは国家魔術師として大陸を守りながら生きる……」
相変わらず司会が大げさな解説をすると、会場の盛り上がりが最高潮に達した。国家魔術師試験は市民達を喜ばせるためのお祭りの様なものなのだろうか。年に一度、ファステンバーグ王国で最強の五人を決める試験なのだから、盛り上がらない訳がない。自分達の生活を守る王国の最高戦力が決まる試験なのだから、注目するのは当たり前だと思う。
俺は木製のロングソードを持つと、あまりに軽さに驚いた。普段使用しているデーモンイーターがあまりにも高重量だからか、木製の剣が軽すぎるのだ。これでは本気で相手を打てばたちまち折れてしまうだろう。武器が折れれば魔法と拳で勝負すれば良い。武器が弱いという点は相手も同じなのだから、勝負は公平だ。
国家魔術師試験は古くから最強の魔術師を決める試験だったからか、杖は自由に持ち込む事が出来る。対戦相手のハロルドさんはエリュシオンの標準装備である杖と盾を持っている。ちなみに防具も自由に装備する事が出来る。殺傷能力が高い刃物や鈍器は持ち込めない。最終試験で使用出来る杖の種類は自由だが、杖を使って物理攻撃を行う事は禁止されている。
「どちらが勝ってもアーセナル出身の冒険者が国家魔術師になる。ベルンシュタイン殿。最高の戦いにしましょう!」
「はい、ハロルドさん」
俺達は試合の前にリング上で握手を交わすと、彼は満面の笑みを浮かべた。全くもって彼の言葉の通りだ。どちらが勝ってもアーセナル出身の冒険者が国家魔術師になるのだ。しかし、俺は勝負に負けるつもりはない。今日、遂にエルザの運命が決まるのだ。一年間も待たせてしまった。遂にエルザを救う事が出来る。この戦いは絶対に負ける訳にはいかないんだ。
「五回戦、剣鬼、クラウス・ベルンシュタイン対魔術師、ハロルド・バラック! 試合開始!」
司会が開始の合図をした瞬間、俺は一瞬で間合いを詰めて全力で突きを放った。流石にバラックさんから長年剣の稽古を受けていたからか、俺の木剣を杖で受ける事に成功した。しかし、ハロルドさんの木製の杖は俺の攻撃を受けて粉々に砕け散った。リングサイドからクラウディウスさんが木剣を投げ入れると、ハロルドさんは一礼して木剣を拾い上げた。
「なんという攻撃の速さでしょうか! 私には剣鬼の攻撃の瞬間が見えませんでした! しかし、魔術師ギルド・エリュシオンのギルドマスターは、魔術師でありながらも、剣鬼の攻撃を見事防ぎました! 剣聖、クラウディウス・シュタインが武器を失ったハロルド・バラックに対し、木剣を投げ入れた! 果たして試合はどうなるのでしょうか!」
ハロルドさんは笑みを浮かべ、剣に美しい金色の魔力を纏わせた。聖属性のエンチャントである。アーセナルのギルドマスター、バラックさんとリーゼロッテさんが得意とする戦い方だから、今まで何度も見てきた事があるが、ハロルドさんの木剣からは感じた事も無い様な強烈な聖属性の魔力がほとばしっている。近くに居るだけで気分が悪くなりそうだ。闇属性を秘める俺にはあまりにも魔力が強い。
攻め方を変えよう。正攻法ではハロルドさんを倒す事は難しいだろう。冬の洞窟の生活で習得した、ブラックウルフを最も効率良く狩る方法。上空から無数のファイアボールを降らせ、地上の敵を討つ戦法を選ぶ事にした。
下半身に力を入れて上昇し、尚且つ左手を地面に向けて炎を炸裂させると、俺の体は闘技場よりも遥か上空まで飛び上がった。高速で急降下をしながら、左手から何十発もの炎の球を飛ばしてハロルドさんを襲う。急激な魔力の低下を感じたが、最終試験なので全ての魔力を使い切っても良い。
ハロルドさんはかろうじて俺の魔法を叩き切っているが、全ての攻撃を防ぐ事は不可能だったのか、ハロルドさんのマントが燃え上がった。ハロルドさんはファイアボールの爆風をもろに受けて吹き飛んだが、かろうじてリングからは落ちず、瞬時にヒールの魔法を唱えた。
怪我を負っても自分自身を癒やす事が出来る相手とは初めて戦う。命を奪う勢いで攻撃を仕掛けなければ倒せないのだろうか? いや、本当にハロルドさんを殺して仕舞うかもしれない。しかし、手を抜いて勝てる相手ではないのだ。
リングに着地した瞬間、俺は左の拳を握りしめてハロルドを殴った。ハロルドさんは俺の攻撃を直撃すれば大怪我をすると悟ったのか、瞬時に石の壁を作り出した。俺が攻撃を放つ直前に、目にも留まらぬ速度でリング上に巨大な石の壁を作り出したのだ。なんという反射神経だろうか。
やはり剣士の戦い方を知っている魔術師だから、簡単に倒せそうにない。それに、ハロルドさんは俺と適度な距離を取るので、なかなか間合いを詰めて攻撃出来ないのだ。俺はそのまま石の壁を殴って粉砕すると、会場からは熱狂的な拍手が上がった。ハロルドさんは後退しながら何度も石の壁を作り出し、尚且つ、俺の頭上から無数の大岩を降らせ続けるのだ。
流石に魔術師ギルドのマスターという訳だ。防御魔法と攻撃魔法を同時に使用し、尚且つ、物理攻撃が出来るチャンスを逃さず、強烈な一撃を放ってくる。俺は上空に作られた大岩をファイアボールで吹き飛ばし、石の壁を殴って粉砕し、ハロルドさんの剣を受けた。
「流石! 剣鬼、クラウス・ベルンシュタイン! 父から聞いてた話は本当でした! 私はあなたと手合わせしたくて仕方がありませんでした! 剣と魔法を極めた最強の冒険者! 魔法では決着がつかないみたいなので、剣で勝負を決めましょう!」
「そうですね! 俺もそう思っていたところです!」
俺達は同時に魔法の使用を止め、ここからは魔力を使わずに木剣のみで戦う事にした。俺は悪魔の魔装を脱いだ。明らかに俺の方が物理攻撃に対する防御力が高いからだ。すると、ハロルドさんは盾を捨て、焼けたマントを脱ぎ捨て、白銀の鎧を外した。お互い防具を身に着けず、木剣だけで勝負を決める。
「どちらが勝ってもアーセナルの勝利。そうですね、ベルンシュタイン殿!」
「はい、ハロルドさん。それでは行きますよ!」
俺達は微笑み合ってから再び剣を構えた。ハロルドさんは柔和な表情を浮かべていたが、武器を構えた瞬間、一気に獣を狩る冒険者の鋭い表情へと変わった。一流の冒険者が持つ独特の殺気。バラックさん直伝の隙きの無い構えに、俺を睨みつける鋭い視線。精神は高ぶり、剣を持つ手には力が入る。遂に俺とハロルドさんの戦いが終わろうとしているのだ。
俺の剣さばき一つでエルザの人生が決まる。俺は何が何でもエルザを救わなければならないのだ。ゆっくりとリングを回る様に相手の出方を伺っていた時、ハロルドさんが攻撃を仕掛けてきた。ハロルドさんは木剣に魔力を込めていないから、攻撃の威力だけなら筋力が高い俺の方が遥かに上回るだろう。武器での打ち合いなら俺の方が有利に戦えるのだ。
。肉体を徹底的に鍛えておいた甲斐があるというものだ。
ハロルドさんの攻撃を受けると、魔術師の剣とは思えない程の衝撃を感じた。流石にティファニーやクラウディウスさん程の威力ではないが、力強い攻撃に戸惑いを感じながらも、俺は瞬時にハロルドさんの背後に回り、背中に木剣を叩きつけた。
悪魔として肉体を鍛え込んでいるからか、人間を遥かに上回る速度で移動が出来るのだ。恐らく、会場に居る全ての人間の中で、攻撃の瞬間を捉える事が出来たのはレベッカさんとクラウディウスさん、ティファニーしか居ないだろう。
ハロルドさんは背中に木剣を受けて悶絶しながらも、果敢に攻撃を仕掛けてきた。何度攻撃をしてもハロルドさんは降参する事はなく、震えながら木剣を握り、俺の攻撃を受け続けた。遂に痛みが限界に達したのか、ハロルドさんは意識を失ってリングに沈んだ瞬間、闘技場には拍手の嵐が沸き起こった。
「遂に五人目の国家魔術師が決定! 冒険者ギルド・ラサラスのギルドのマスター、レベル百、剣鬼、クラウス・ベルンシュタインです! 十六歳の若き剣鬼が、ファステンバーグ王国の最高戦力になるのです! 順位はクラウス・ベルンシュタインが一位、ティファニー・ブライトナーが二位、ヴィルヘルム・カーフェンが三位、クラウディウス・シュタインが四位、アダム・バスラーが五位です! 一位から四位までが何と、ラサラスの冒険者なのです! 偉大なる国家魔術師達の誕生に祝福を!」
遂に俺が一位で国家魔術師に合格したのだ! 仲間達が涙を浮かべながらリングに上がると、俺を強く抱き締めてくれた。今日の試験のために何度も死ぬ思いをしながら徹底的に己を追い込んできた。全ては愛する家族を救うため。エルザを眠りから覚ますために。
俺は遂に国家魔術師になるのだ。デーモンがレーヴェを襲撃してから一年。随分長かったが、努力はやはり裏切らないのだな。睡眠時間まで削り、剣と魔法の練習を続けて良かった……。
「私達、遂に国家魔術師になるのね……一緒に合格出来て嬉しいわ……」
「おめでとう! クラウス! 俺はお前を誇りに思うよ! やはりクラウスに付いて来て正解だった。クラウスが俺の人生を変えてくれた……」
「私も、クラウスと出会えて人生が変わったわ。まさか、四人同時に国家魔術師になるなんて。だけど、来年は必ず合格してみせる。クラウス、ティファニー、ヴィルヘルム、クラウディウスさん、合格おめでとう!」
「ありがとう。リーゼロッテ。これからは国家魔術師として大陸を守りながら生きる……」
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