召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

文字の大きさ
8 / 188
第一章「冒険者編」

第八話「スケルトンの王」

しおりを挟む
「コレ……」
「これが欲しいのかい? だって中身が分からないんだから、もしかしたら俺達の敵になる魔物が生まれるかもしれないじゃないか」
「ダイジョウブ」
「キングがそう言うなら良いんだけど……」

 キングが指差す先には紫色の卵があった。何の卵かは分からないが、幻魔獣のキングが選んだ卵だ。低級の魔物の卵ではないだろう。自分よりも劣る存在の卵を欲しいと言う訳が無いと思ったので、俺はこの卵を購入する事にした。しかし、手持ちのお金が足りない。

「俺達はこの卵が欲しいのですが、お金がないんです……何かアイテムと交換してくれませんか?」
「それじゃ……そのガントレットと交換でどうかね?」
「このガントレットは大切な物なのでお譲りする事は出来ません。ですがこの指環なら……」

 俺はガントレットを外し、指に嵌めていた指環を抜いた。霊力のシルバーリングを店主に渡すと、店主は目を輝かせて指環を受け取った。指環の相場は分からないが、キングが初めて欲しがった卵だ。キングには狩りを手伝って貰っているから、この卵はキングのために買ってあげよう。

 俺は紫色の卵を手に取った。卵は人の体温よりも少し暖かい。優しい風の様な魔力を感じる。俺達の支えになってくれる魔物が生まれてくれれば良いのだが。卵をキングに渡すと、目の中の青い炎が嬉しそうに揺れた。卵を大切そうに抱えると、俺とキングは店を後にした。

「他にも色々な卵があったけど、その卵で良かったのかい?」
「ウン……」
「そうか。それじゃ宿に戻ろうか」
「アリガト……サシャ」
「良いんだよ。この卵はきっと特別な物なんだろうね」

 明日も早朝に起きて廃坑に行こう。お金を稼がなければ生きていけない。それに、キングの魔法も見てみたい。お金を稼いだら装備を買い足し、防御力を上げなければならない。卵を孵化させる方法も調べなければならないな。魔物に関する本や、幻魔獣に関する本も買いたい。

 宿に戻った俺達は、ベッドに横になると、俺とキングは卵を間に挟むようにして眠りに就いた……。

 今は朝の六時。早朝に目を覚ました俺は、武器や防具の手入れをしてから、心地良さそうに眠るキングを起こした。今日も廃坑で狩りを行う。キングの魔法を見せて貰うつもりだ。仲間に魔法の使い手が居れば、更に効率良く狩りが出来るだろう。

 紫色の卵を抱えて、俺とキングは一階の食堂に降りた。パンとミルク、それからチーズと乾燥肉を食べると、直ぐに出発する事にした。狩りには卵を持っていく事にした。キングが少しでも一緒に居たいと言ったからだ。きっと自分が選んだ卵だから可愛いのだろう。町を出て深い森に入り、廃坑を目指した……。


〈廃坑〉

 町外れの廃坑入口に着いた。流石に卵を持ちながら戦闘は行えないので、付近の茂みの中に置いておいた。今日の目的はスケルトンのドロップアイテムを集める事だ。アイテムを集め、ロンダルクさんに買い取って貰い、装備を充実させる事が当面の目標だ。その前に、まずはキングの魔法を見せて貰う事にしよう。

「キング、廃坑で狩りを行う前に、魔法を見せて貰っても良いかな?」

 確か、キングが使用出来る魔法は、ヘルファイアとサンダーボルトだ。まずはヘルファイアを見せて貰う事にした。キングは廃坑付近の廃屋に右手を向けると、意識を集中させて魔力を集めた。瞬間、熱風のような強烈な魔力が炸裂し、辺りの気温を一気に上昇させた。

『ヘルファイア!』

 キングが魔法を唱えると、彼の右手からは巨大な炎が放出された。キングの炎は廃屋をいとも簡単に燃やし尽くした。「燃やす」という表現よりも「消し去る」という表現の方が適切かもしれない。彼の魔法は、瓦礫一つ残さずに廃屋を消し去ったのだ。驚異的な威力だ。近くに居るだけで強烈な熱風を感じた。これが幻魔獣の力か。

「キング。君は本当に強いんだね! 俺も早く君に追いつけるように強くならないとね」
「サシャ……」

 キングは恥ずかしそうに俺を見つめながら、俺の服の袖を掴んだ。小さくて可愛らしいが、魔法は信じられないほど凶悪だ。どんな魔物でも一撃で消し去る事が出来るのではないだろうか。木造の廃屋を一瞬で消滅させられるのだからな。自分の強さを知っているのに、俺の様な駆け出しの冒険者と共に居てくれるなんて、やはりキングは最高の仲間だ。

 しかし……世の中は広いんだな。ヘルファイアの様な強力な魔法が存在するとは、想像した事も無かった。まるで空想の世界の魔法。現実ではないような桁違いの破壊力。魔法を作り上げる速度も、威力も一流だ。

 続いてサンダーボルトを見せて貰う事にした。キングはメイスを頭上高く掲げると、上空には雷雲が集まり始めた。天候すらも一瞬で変化させられる魔法なのか。キングがメイスを振り下ろした瞬間、雷雲の中から一筋の雷撃が爆音を立てて放たれた。

 爆発的な魔力を周囲に撒き散らし、目にも留まらぬ速度で廃屋を捕らえると、地面を揺るがす程の衝撃と、魔力の爆発を体に感じた。俺はキングの魔法を目の当たりにして、自分の死を悟った。幻魔獣の魔法の前では、俺の様な人間はあまりにもちっぽけだ。幻魔獣が一体で国を一つ滅ぼという話も、今なら理解出来る。

 サンダーボルトは精確に廃屋を消し去っていた。不思議な事に、周囲に被害は無く、狙った場所に雷撃を落とせるみたいだ。スケルトンはメイスを振り回すだけの魔物だと思っていたが、キングは違う。高度な魔法を使用し、人間の言葉を理解する。きっと知能だって俺よりも高いのだろう。武器を使った戦闘よりも、後方から魔法支援をして貰った方が、キングの力を活かす事が出来るかもしれない。

「凄い魔法だったよ! これからも俺を支えてくれるかな?」
「サシャ……」

 キングの小さな体を抱きしめ、白骨の頭を撫でる。骨のなのに少しだけ暖かいのは気のせいだろうか。キングがこれ程までに強力な魔法の使い手だったとは、想像すら出来なかったが、キングの力を借りれば、俺達は直ぐに冒険者として成り上がる事が出来るだろう……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...