召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第一章「冒険者編」

第十二話「狩りと冒険の仲間」

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〈廃坑〉

 廃坑の入り口にはスケルトンが四体も湧いており、入り口を守る様にメイスを握り締め、辺りを警戒している。連日、廃坑で狩りを行っているからだろうか。今日は魔物が警戒している様に感じる。

「キング、ヘルファイアを使ってくれるかな? 入り口に居るスケルトンが少し邪魔なんだ」
「ワカッタ……」

 ハーピーの卵を抱えてキングの傍で待機する。キングはスケルトンの群れに左手を向けた。魔力を左手に集めると、辺りには爆発的な熱風が吹いた。キングは左手から巨大な炎の塊を放出させると、スケルトンの群れが粉々に吹き飛んだ。

 強烈な炎の一撃は辺りを燃やし尽くし、スケルトンの武器すらも溶かした。何度見ても驚異的な威力だ。キングの魔力が卵に流れると、卵から暖かい魔力が流れ始めた。ハーピーがキングの魔力を糧に成長しているのだろう。強い魔物に育って貰うために、なるべく多くの魔力を与えよう。

 それから俺とキングは昨日に引き続き廃坑内を探索した。昨日スケルトンを狩り尽くしたにも拘わらず、廃坑内はスケルトンで溢れかえっていた。周囲に生息するスケルトンがこの空間に集まるのは、廃坑の魔力を求めての事だろう。どんな場所にも魔力の場がある。自分自身の魔力と合う場所は、己の魔力を高め、精神を落ち着かせる。三時間ほど廃坑内に滞在すると、三十二体ものスケルトンを狩る事が出来た。狩りを終えてフィッツ町に戻る事にした。

 大量の戦利品を仕舞った鞄を抱えながら町に戻ると、今日もロンダルクさんの店で買い取りをお願いする事にした。今日の戦利品の中で価値がありそうなアイテムは、錆びついた指環が二つ、それから銀製の腕輪だ。装飾品は何個あっても困るものではない。腕輪はハーピーが生まれたらプレゼントする事にしよう。


〈ロンダルクの雑貨屋〉

「ロンダルクさん。今日も買い取りをお願いします。それから何か冒険で役に立ちそうなアイテムがあれば譲って頂けませんか?」
「冒険に役に立つアイテムと言ってもな……俺の店は雑貨屋だから召喚士のお前の役に立つような物は少ないぞ。そうだ、低級召喚書は持っているか? サシャは召喚士なんだから、既にキング以外の魔物も召喚してみたのだろう?」
「そういえば、まだキング以外の魔物を召喚した事はありませんでした」

 自分自身が召喚士だという事を忘れていた。つい最近まで、俺は農業に携わる村人だったからな。俺が召喚士か……幻魔獣の召喚士などという仰々しい称号まで得てしまったが、俺自身に召喚の力があるのかも分からない。キングが俺の元に生まれたのは、石碑の付近で魔力を放出したからだ。キングはガントレットの強い魔力と、俺自身の魔力に惹かれて姿を現した。

 今日の狩りでスケルトンの頭骨を大量に手に入れる事が出来たのだから、更にスケルトンを召喚して、狩りを効率化する事は出来ないだろうか。俺の代わりに廃坑で狩りを行う仲間が居てくれれば、自動的にお金を稼ぐ事も出来るだろう。

 今日の戦利品をロンダルクさんに買い取って頂き、低級召喚書を三冊購入した。金銭的にも随分余裕があるので、新しく召喚するスケルトンのための武器と防具を用意する事にした。それから俺とキングは冒険者ギルドでクエストの報酬を頂き、シャーローンさんの店に向かった。


〈シャーローンの武器店〉

「サシャか。また来てくれて嬉しいよ」
「こんにちは。シャーローンさん。今日は剣と盾を探しているのですが」
「剣と盾か。誰が装備するんだね?」
「新しくスケルトンを三体召喚するので、武器と防具を揃えようと思いまして」
「そうか。剣が三本、盾が三つでいいかな?」
「はい。安くて使い勝手の良い物を選んで貰えますか?」
「任せておけ」

 暫く待つとシャローンさんは剣と盾を抱えて戻ってきた。青銅鉱から作られた剣と盾だ。代金は今日のクエストの報酬から支払った。これでスケルトンの装備が揃った。あとは召喚を行えば良い。直ぐに宿に戻って仲間を召喚しよう。


 急いで宿に戻ると、卵をベッドの上に起き、スケルトンを召喚するための召喚書を床に並べた。召喚書の上にスケルトンの頭骨を乗せると準備が完了した。スケルトンは魔獣クラスの魔物。この世界には魔獣、幻獣、幻魔獣の三種類の魔物が生息している。神獣という魔物も過去の時代には生息していたらしいが、現代では確認されていない。幻魔獣のキングが居るのだから、生まれてきた魔獣クラスのスケルトンは俺の命令を聞いてくれるだろう。

 両手を床に並べた召喚書に向けて魔力を放出した。召喚書は魔力を吸収すると、強い光を放った。光が収まると、光の中からは三体のスケルトンが現れた。身長はキングよりも高く、柔和な表情を浮かべている。

「俺は幻魔獣の召喚士、サシャ・ボリンガー。今日から君達の主人だよ」
「……」

 三体のスケルトンは頭を下げると、召喚された事が嬉しかったのか、俺の体をペタペタと触り、キングを抱きしめた。四体の骨の魔物が楽しそうにじゃれ合っている光景は異様だ。これからパーティーが増えるのなら、パーティーの名前を決めた方が良いだろうか。民を守る騎士の集団という事で、パーティー名をボリンガー騎士団に決めた……。
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