召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第一章「冒険者編」

第三十四話「レイリス町と奴隷市」

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 訓練の内容は、クーデルカの魔法を土の壁で防ぐというシンプルなものだ。ルナとアイリーンは二人で武器を使った稽古をしている。野営地には魔法が炸裂する轟音と、ルナのレイピアとアイリーンの槍が触れ合う音が響いた。ゲルストナーとキングは眠たそうに起きると、二人は朝食の支度を始めた。

 朝食は昨日の残りのブラックライカンの肉だった。朝の訓練で体中の筋肉が疲れ切っている俺には、高タンパク質の食事が必要だとゲルストナーが言ったので、俺は朝から大量の肉を食べた。

 朝食を終えると、アレラ山脈に向けて馬車を進めた。山脈の付近にはレイアリス町という町があるらしく、まずはレイリス町で装備や食料を用意する事にした。キングのための装備も新しく作らなければならない。暫く馬車を走らせると、俺達はレイリス町に辿り着いた。

「サシャ、あの町では奴隷取引が行われているんだ」
「奴隷だって? まさか……」
「奴隷の取引が行われている町の中でも、比較的取引量の多い町だ」
「奴隷なんて存在するんだね。俺が生まれた村には奴隷なんて一人も居なかったのに」
「フィッツ町にも奴隷は居なかっただろう。しかし、この町では多くの奴隷が暮らし、物の様に取引されている」

 もしかしたら俺がアイリーンを救出しなければ、彼女はこの町で奴隷として生きていたのだろうか。レイリス町に入り、今晩の宿を探す事にした……。

 レイリス町に入ると、山脈超えのための食料や、日用品の買出しをする事にした。町はフィッツ町程の広さだろうが、全体的に活気が無く、どこか薄暗い雰囲気だ。様々な店が建ち並んでおり、一見豊かそうに見えるが、この町の奴隷市では奴隷が売買されている……。

 乾燥肉や乾燥フルーツ、堅焼きパンやチーズ、乾燥野菜などの保存が利く食料を大量に買い込み、ユニコーンの馬車に積む。それから装備作りに必要な金属をアイリーンと相談して購入した。暫く町を進むと、立派な外観をした宿を見つけたので、暫くこの宿に滞在する事にした。

 外で野営をするのも良いが、たまには宿を利用するのも良いだろう。土のベッドの上で寝続けているからか、なかなか疲れが取れない。砦の宝物庫で手に入れ戦利品を売り払うと、かなりの金額になったので、暫くは宿に滞在しながら、山脈を超えるための準備をする事にした。

 それから宿の受付で代金を支払い、部屋を二部屋借りた。お金にはかなり余裕があるが、必要以上の部屋を借りたくなかったので、部屋決めをしてパーティーを二つに分ける事にした。

「それじゃ部屋決めをしようか」
「ルナはサシャが居ないと眠れないから、一緒の部屋に泊まる!」
「私もサシャと一緒よ。常に私の主と居たいからね」
「あたしも……一緒でいいかな……?」
「それじゃ俺はキングと部屋を使う事にするよ」

 部屋割りは俺、クーデルカ、ルナ、アイリーン。それから、キングとゲルストナーに決まった。室内にはベッドが二つあったので、一つは俺とルナで使う事にし、もう一つはアイリーンとクーデルカが使う事にした。部屋に荷物を置き、町を見て回るために宿を出る事にした。奴隷の取引が行われている市場を見に行きたかったからだ。

 奴隷市には誰を連れて行くべきだろうか? 生まれたばかりのルナには奴隷市は刺激が強すぎるだろう。キングとアイリーンは装備が整っていないから、奴隷市のような物騒な場所には連れて行けない。ゲルストナーにはアレラ山脈に関する情報を集めて貰いたい。パーティーで自由に動けるのはクーデルカだけだ。

「クーデルカ、これから奴隷市を見に行くんだけど、一緒に来てくれるかい?」
「勿論良いわよ。初めてのデートという訳ね」
「デートではないんだけどね」
「それは残念だわ」
「ルナは何をしていたらいいの?」
「ルナはアイリーンとキングと一緒に居てくれるかな? アイリーン、二人を頼むよ」
「分かったの。気をつけて行ってくるの」

 俺はアイリーンにお金を渡すと、アイリーンはキングとルナを連れて町に出た。念のため、武器と防具の点検をしてから奴隷市に向かう事にした。俺達はアシュトバーン村のむら娘を誘拐した盗賊達を殺めている訳だから、もしかすると、奴隷商が俺達を襲うかもしれないからだ。

「クーデルカ奴隷市に行こうか」
「そうね。ちゃんとエスコートするのよ。デートなんだから」
「分かったよ……」

 クーデルカは俺の手を握り、まるで恋人同士の様に指を絡めると、俺を見上げて微笑んだ。彼女の体温と優しい魔力を感じる。近くで見ると一段と美しい……太陽の光が紫色の髪に反射して輝き、きめ細やかな白い肌は透明感に溢れ、思わず触れたくなる程のツヤがある。服の胸の部分は窮屈そうに大きく盛り上がっており、町を歩いているだけで、男達がクーデルカに色目を使う。

「そんなに見つめてどうしたの?」
「綺麗だなと思って……」
「馬鹿……こんなに人が居るのに。サシャは大胆ね」
「やっぱりクーデルカはサキュバスだから、人間とは違う魅力がある気がするんだ」
「そうかもしれないわね。私はもっと美しくなるわ」

 クーデルカは満面の笑みを浮かべながら、上機嫌で町を歩いている。俺は女性の事は素直に褒める事にしている。これは村で暮らしていた時からの習慣だ。村の女性が料理を作ってくれれば、すぐに料理の味を褒める。服を新調すれば服を褒め、髪型が変われば「いつも美しいですね」と一言伝える。これだけで人間関係はより良くなるから不思議だ。母の言葉だが、「女性の変化に敏感でありなさい」俺は常にこの言葉を意識して女性と接している。

 暫く歩くと、俺達は奴隷市に繋がる裏路地を見つけた……。
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