35 / 188
第一章「冒険者編」
第三十五話「演技と賭け」
しおりを挟む
奴隷市は薄暗く、禍々しい闇の魔力が蔓延している。気味の悪い魔力を感じる路地を進むと、ついに奴隷市に辿り着いた。奴隷市では、奴隷商達が奴隷を壁際に並ばせている。奴隷の中には幼い人間の女や獣人の女等が居る。やはりルナを連れて来なくて正解だった。クーデルカは悲しげな表情で奴隷達を見つめている。
奴隷の首には値札が掛けられており、容姿が整った若い女は値段が高く、服装も綺麗だ。男の高齢の奴隷は、ボロの布で肝心な部分を隠しているが、体は汚れきっており、虚ろな目で地面を見つめている。
安い奴隷でも最低五千ゴールド、容姿の整った若い女性の奴隷が二万ゴールドだ。俺とクーデルカが奴隷を見ていると、でっぷりと太った奴隷商が近づいてきた。随分儲けているのだろう、金の指環をいくつも嵌め、首には太い白金の首飾り巻いている。手には宝石が散りばめられたステッキを持っており、クーデルカの体を舐め回すように見つめている。
「旦那様、本日はどういった奴隷をお探しでしょうか?」
「別に奴隷を探している訳ではありませんよ」
「左様でございますか。旦那様はグラディエーターを育ててみる気はないでしょうか? 私の奴隷は、どれも強くて強靭ですよ。こちらの奴隷は剣士でした! 冒険者時代のレベルは35。値段は一万ゴールド。いかがでしょうか?」
「だから、奴隷を買いに来た訳じゃないんですよ」
俺の言葉を無視しながら、奴隷商は一人の奴隷を連れてきた。身長百九十センチ程の屈強な男で、鋭い眼差しで俺を睨みつけている。他の奴隷は人生を諦めた様な表情をしているが、この奴隷だけは鋭い視線で辺りに居る人間を睨んでいる。
「それから、こちらの姉妹は本日入荷した人間の姉妹。冒険者ではありませんが、性奴隷や家政婦としていかがでしょうか! 名はアリスとセシリア。男の経験も無く、セットで買って頂けるなら割引しますよ」
奴隷商が気味の悪い笑みを浮かべると、クーデルカは露骨に軽蔑した顔で奴隷商を見た。しかし、性奴隷とは可愛そうな人生だ。姉妹の奴隷の値段は三万ゴールドだった。買えない金額ではないが、奴隷を買う必要はない。姉妹が気の毒だとは思うが、命を賭けて幻獣と戦い、手に入れた財産をわざわざ使う必要は無いだろう。だが、このまま見捨てるのは可哀想だ。なんとかして彼女達を救う方法はないだろうか。
暫くすると、奴隷市には人が増え、奴隷商達が集まり始めた。何か催し物でもあるのだろうか。金属製の大きな檻が市場の中央に運ばれると、一人の奴隷商が話し始めた。
「お集りの皆様! これより闘技会を行います! 闘技会を見て頂ければ、私の奴隷の強さが分かるでしょう。グラディエーターとして育てるも良し! 魔物討伐をさせるのもよし! 使い方は皆様次第です!」
奴隷の闘技会? 奴隷同士を戦わせるのだろうか。奴隷商が檻を開け、一人の奴隷を放り込んだ。体は痩せこけており、生気を失った男は涙を流しながら観客を見つめた。足元にはグラディウスが投げ込まれ、男はグラディウスを拾うと、体を震わせながら檻の隅に座り込んだ。それから先程の長身の男が檻の中に入ると、集まった人達は賭けを始めた。
どう考えても長身の男が勝つだろう。奴隷同士に殺し合いをさせるなんて、許して良い事ではない。どうにかして奴隷制度を崩壊させる方法はないだろうか。賭けは大いに盛り上がり始めたが、貧弱な男に賭ける者は殆ど居ない。
「私なら好きな方を勝たせられるわよ。私のマジックドレインを使えば、相手の魔力を吸収して弱らせる事が出来る……」
「好きな方を……?」
「そうよ」
クーデルカは静かに頷くと、俺は直ぐに作戦を立てる事にした。サキュバスの固有魔法、マジックドレインを使えば、対象の魔力を奪う事が出来る。クーデルカの魔法によって魔力を失えば、大きな隙きが出来るだろう。どちらでも勝たせられるのなら、俺は貧弱な奴隷に勝って欲しいと思う。
「クーデルカ、俺が指示したタイミングで長身の奴隷にマジックドレインを掛けてくれるかな?」
「任せて頂戴」
ここ芝居を打って馬鹿なギャンブラーを演じる事にしよう。明らかに負ける方の奴隷に大金をつぎ込む。
「俺は痩せている男に五万ゴールド賭けるぞ! 誰かこの賭けに乗らないか!」
「五万ゴールド? お前は頭がイカれてるのか? 長身の奴隷が勝つに決まっているだろう」
「若造がどこでそんな大金を手に入れたんだ? よし、俺様がお前の幼稚な賭けに乗ってやろう」
身なりの整った貴族の様な男が近づいてくると、賭けが成立した。これで五万ゴールドの儲けが確定した。儲けたお金で姉妹の奴隷を開放してあげよう。観客が賭けを終えると、ついに闘技会が始まった……。
奴隷の首には値札が掛けられており、容姿が整った若い女は値段が高く、服装も綺麗だ。男の高齢の奴隷は、ボロの布で肝心な部分を隠しているが、体は汚れきっており、虚ろな目で地面を見つめている。
安い奴隷でも最低五千ゴールド、容姿の整った若い女性の奴隷が二万ゴールドだ。俺とクーデルカが奴隷を見ていると、でっぷりと太った奴隷商が近づいてきた。随分儲けているのだろう、金の指環をいくつも嵌め、首には太い白金の首飾り巻いている。手には宝石が散りばめられたステッキを持っており、クーデルカの体を舐め回すように見つめている。
「旦那様、本日はどういった奴隷をお探しでしょうか?」
「別に奴隷を探している訳ではありませんよ」
「左様でございますか。旦那様はグラディエーターを育ててみる気はないでしょうか? 私の奴隷は、どれも強くて強靭ですよ。こちらの奴隷は剣士でした! 冒険者時代のレベルは35。値段は一万ゴールド。いかがでしょうか?」
「だから、奴隷を買いに来た訳じゃないんですよ」
俺の言葉を無視しながら、奴隷商は一人の奴隷を連れてきた。身長百九十センチ程の屈強な男で、鋭い眼差しで俺を睨みつけている。他の奴隷は人生を諦めた様な表情をしているが、この奴隷だけは鋭い視線で辺りに居る人間を睨んでいる。
「それから、こちらの姉妹は本日入荷した人間の姉妹。冒険者ではありませんが、性奴隷や家政婦としていかがでしょうか! 名はアリスとセシリア。男の経験も無く、セットで買って頂けるなら割引しますよ」
奴隷商が気味の悪い笑みを浮かべると、クーデルカは露骨に軽蔑した顔で奴隷商を見た。しかし、性奴隷とは可愛そうな人生だ。姉妹の奴隷の値段は三万ゴールドだった。買えない金額ではないが、奴隷を買う必要はない。姉妹が気の毒だとは思うが、命を賭けて幻獣と戦い、手に入れた財産をわざわざ使う必要は無いだろう。だが、このまま見捨てるのは可哀想だ。なんとかして彼女達を救う方法はないだろうか。
暫くすると、奴隷市には人が増え、奴隷商達が集まり始めた。何か催し物でもあるのだろうか。金属製の大きな檻が市場の中央に運ばれると、一人の奴隷商が話し始めた。
「お集りの皆様! これより闘技会を行います! 闘技会を見て頂ければ、私の奴隷の強さが分かるでしょう。グラディエーターとして育てるも良し! 魔物討伐をさせるのもよし! 使い方は皆様次第です!」
奴隷の闘技会? 奴隷同士を戦わせるのだろうか。奴隷商が檻を開け、一人の奴隷を放り込んだ。体は痩せこけており、生気を失った男は涙を流しながら観客を見つめた。足元にはグラディウスが投げ込まれ、男はグラディウスを拾うと、体を震わせながら檻の隅に座り込んだ。それから先程の長身の男が檻の中に入ると、集まった人達は賭けを始めた。
どう考えても長身の男が勝つだろう。奴隷同士に殺し合いをさせるなんて、許して良い事ではない。どうにかして奴隷制度を崩壊させる方法はないだろうか。賭けは大いに盛り上がり始めたが、貧弱な男に賭ける者は殆ど居ない。
「私なら好きな方を勝たせられるわよ。私のマジックドレインを使えば、相手の魔力を吸収して弱らせる事が出来る……」
「好きな方を……?」
「そうよ」
クーデルカは静かに頷くと、俺は直ぐに作戦を立てる事にした。サキュバスの固有魔法、マジックドレインを使えば、対象の魔力を奪う事が出来る。クーデルカの魔法によって魔力を失えば、大きな隙きが出来るだろう。どちらでも勝たせられるのなら、俺は貧弱な奴隷に勝って欲しいと思う。
「クーデルカ、俺が指示したタイミングで長身の奴隷にマジックドレインを掛けてくれるかな?」
「任せて頂戴」
ここ芝居を打って馬鹿なギャンブラーを演じる事にしよう。明らかに負ける方の奴隷に大金をつぎ込む。
「俺は痩せている男に五万ゴールド賭けるぞ! 誰かこの賭けに乗らないか!」
「五万ゴールド? お前は頭がイカれてるのか? 長身の奴隷が勝つに決まっているだろう」
「若造がどこでそんな大金を手に入れたんだ? よし、俺様がお前の幼稚な賭けに乗ってやろう」
身なりの整った貴族の様な男が近づいてくると、賭けが成立した。これで五万ゴールドの儲けが確定した。儲けたお金で姉妹の奴隷を開放してあげよう。観客が賭けを終えると、ついに闘技会が始まった……。
1
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる