召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第一章「冒険者編」

第五十六話「模擬戦開始」

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 ワイバーンは嬉しそうに俺を顔を見つめると、俺達は地面に降りた。仲間達が愕然とした表情を浮かべている。俺が毎日の様に鍛え続けた土の魔法が、この様な形で攻撃魔法に進化を遂げるとは思わなかった。魔法は想像力次第でどんな形にでもなるんだな。

「サシャ、今の魔法がメテオか。幻魔獣さえも逃げ出す程の威力だな……」
「サシャ……メテオスゴイ」
「やっぱり私のサシャは最高だわ。私の主に相応しい男よ」
「皆、ありがとう。だけど、ワイバーンが協力してくれたお陰でメテオを作る事が出来たんだ。俺だけの力では無いんだよ」

 俺はワイバーンの頭を撫でると、彼は心地良さそうに目を瞑った。それから手持ちの乾燥肉を全て差し出すと、美味しそうに食べ始めた。召喚獣は人間の道具ではないからな。働きに対して報酬を与えなければならない。

「ありがとう、ワイバーン。さて、暫くパーティーで連携の練習をしてから、模擬戦でもしてみようか」
「模擬戦? それは面白そうなの!」
「うむ。まぁ死人が出なければ良いがな」
「勿論、皆が本気を出せば大怪我をししまうだろうから、力を抑えて訓練をしようか」

 俺のパーティーは、ワイバーン、クーデルカ、アイリーンだ。俺がアースウォールで仲間を守り、土の壁の後ろからクーデルカにアイスフューリーを撃って貰う。相手が近づいて来たら、ワイバーンかアイリーンが交戦する。完璧な作戦だろう。

 向こうのパーティーはゲルストナーを中心とした陣形を組むようだ。きっとゲルストナーとクリスタルが盾になって、ルナとキングが攻めてくるに違いない。回復役のユニコーンは戦闘には参加しないだろう。

「サシャ、絶対勝つわよ!」
「あたし達が勝つの。ルナには負けられないの」
「勝負ではないんだけど……そうだね、勝てるように頑張ろうか」

 クーデルカもアイリーンもやる気に満ちた表情を浮かべている。模擬戦なのに随分本気の魔力を感じるのは気のせいだろうか。仲間に陣形を説明をすると、俺は模擬戦の開始の合図を出した。

「模擬戦開始!」

 合図と共にゲルストナーが防御の構えを取った。普段の柔和な表情ではなく、戦闘時の本気の顔になっている。歴戦の戦士が見せる隙きの無い構えに、アイリーンは戸惑いながら攻撃の機会を伺っている。

 ゲルストナーの防御力を更に上昇させるために、クリスタルがマジックシールドを張った。二重の防御を展開した様だ。ゲルストナー達は攻撃よりも防御を選択したのだろう。それならこちらから攻撃を仕掛ける。

 俺はゲルストナーに悟られないように、彼の足元に土の槍を作り上げた。ゲルストナーを貫くように槍を突き上げると、ルナの剣技が炸裂した。俺は次々とゲルストナーを狙って土の槍を作り上げたが、ルナの剣さばきの前では無意味だった。

 ルナはまるで踊りでも踊る様に、魔力を込めたレイピアで高速の突きを放ち、土の槍を破壊している。このままで埒があかない。俺はクーデルカに目配せをすると、彼女はアイスロッドをゲルストナーに向けた。

 暖かい森の中に、小さな氷を含む冷気が充満すると、円盤状の氷の刃が現れた。クーデルカが杖を突き出して攻撃を放つと、氷の刃が高速で放たれた。ゲルストナーは表情一つ変えずにロングソードでクーデルカの攻撃を防ぐと、クーデルカの魔法に耐えきれず、防御が崩れた。

 瞬間、ルナがゲルストナーの背後から飛び出し、レイピアに風を纏わせて振り下ろした。あれはウィンドカッターか? 風の刃が轟音を立てて空を裂き、土の壁に激突した。巨大な破裂音と共に、突風の様な強い風が起こった。

 ルナが次々とウィンドカッターを放つと、ルナの背後でキングが杖を俺達に向けた。まさか、ヘルファイアだろうか。流石に土の壁ではキングの魔法を防ぐ事は出来ないだろう。

「ワイバーン! フレイムブレスだ!」

 キングが巨大な炎の塊を放つと、ワイバーンは瞬時に炎を吹いた。双方の炎が空中で激突すると、辺りに炎を散らしながら、お互いの魔法を押し合った。これが幻魔獣同士の戦いか。近くに居るだけでも皮膚が焼けそうだ。

 急いで彼等から離れると、アイリーンがルナに槍を向けて駆けた。物音一つ立てず、一気に距離を詰め、槍での素早い突きを放つと、ルナは狼狽した表情を浮かべながら、アイリーンの槍を防いだ。それからアイリーンが一方的に突きの猛攻を仕掛け、攻撃を防ぎ切れなくなったルナはついに翼を開いて上空に逃げた。

 ユニコーンはゲルストナーに対して回復魔法を唱えると、復活したゲルストナーがロングソードを構えて襲い掛かってきた。俺は彼の攻撃をアースウォールで防ぐと、クーデルカが次々と氷の刃を放って加勢してくれた。

 瞬間、クリスタルの魔法が炸裂した。ゲルストナーの正面に魔法の盾を作り上げ、クーデルカの攻撃の威力を弱めたのだ。突然の出来事に狼狽したクーデルカに対し、ゲルストナーが一気に距離を詰めると、俺は両手を地面に付け、爆発的な魔力を注いだ。

 瞬間、地面からは生き物の様に無数の土の槍が伸び、ゲルストナーを包囲した。流石に全ての攻撃を防ぐ事は不可能と判断したゲルストナーは、剣を地面に突き刺して降参した。

「私達の勝ちだわ!」

 仲間と手を合わせる事によって、改めて仲間の強さが分かった。俺達は休憩をしながら、模擬戦の感想を交換し合う事にした。
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